大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

遭遇と安堵

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五分後、凄まじい勢いでこちらへ来たのは久しぶりに見た顔。
「シィルさん…シィルさんですね?どうぞこちらへ」
「あれ?クードラル先生?久しぶり」
巨大な百足の魔獣に乗って来てくれたのは去年副担任をしてくれたクードラル先生。同じ学校にいると言うのに、直接会うのはいつぶりか。
「何故こんな所にいるのか、授業はどうしたのか、目的はなんだったのか、その他聞きたいことは沢山ありますが、まずは聖学に戻りましょう。怪我は大丈夫ですか?」
「助かったよ先生。正直結構限界なんだ。怪我は…無いけど、ちょっと水が欲しいかな。持ってる?」
よっこらせ、と百足の背に乗ると、先生が懐から大きめの水筒を出して渡してくれた。
「空腹は?」
「今下手に飯食ったら吐くからやめとく。身体を休ませてからにするよ」
「わかりました。このまま聖学に戻りますよ?」
「あぁ頼む」
知り合いなら少し安心した。武装を解除し、座って水を口に
「あ、曲がる時は揺れるので注意してください」
と言ってぐるぅりと百八十度百足の頭を回す先生。
いやちょ、もう少し早く言って欲しかった。
「大丈夫ですか?」
「あともう五秒早く言ってくれたら大丈夫だったかな」
思いっきり落ちそうになった。あと水が景気よく零れた。本当に大丈夫なのか?この百足
とか思っていたが、直進を始めると百足の乗り心地は案外よかった。揺れは少ないしかなり早い。音も静かだし、時折少しだけ方向を調整しているのは魔獣を避けているからだろう。あとは座席でもあれば良かったんだが、まぁ無いものは仕方ない。
「にしても先生、どうやって俺の居場所が分かったんだ?」
ふと思い出して、先生にそう聞いてみる。
先生は少し黙って考えるようして顎に手をやると、まぁいいでしょうと呟いて話してくれた。
「学校長の魔法の一つに、遠距離の対象物を視認する魔法があります。それであなたを探し、少し用事で近くにいた私のところへ連絡が来たのですよ」
「へぇ。なるほどねぇ」
連絡ってアレか、矢文。前に紅の森に来た時も、俺の家に直接届くぐらいだったから…ん?
えっ、ちょっと待て、って事は単純に考えて学校長の弓矢って射程的に二百八十キロは届く範囲内って事か?化物じゃねぇか。
…まぁいいか。今回はそれで助かってる訳だし。
「聖学にはどのぐらいで着く?」
「そうですね…この調子だと明日の朝ですね。休憩も挟むので」
乗ってるのはいくら魔獣と言え、生物である以上休息は必要。クードラル先生の手持ちである以上、使い潰すのもダメだし、まぁ仕方ない。
「あぁシィルさん、学校長からの伝言です」
「ん?これか?」
と言って受け取ったのは先程予想した通りの矢文。一度折ったような跡があるのは学校長のメッセージを見たからか。
が、俺の手元にあるのは普通に紙を細くして括りつけてある手紙。場所は鏃の付け根ではなく、矢の羽あたりにあった括り付ける輪に結んであったものだが。
「それです。到着までに読んでおいてくださいね」
ふーん?はて、何かしただろうか。
そう思いながら、俺は矢についている紙を丁寧に取り外した。
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