大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

対話と義肢

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カーテンで遮られたベッドがひとつ。
「セラさん、今日は男の先生が入りますよー」
軽い口調で先生が先に入り、何かセラと話す声がする。先生が俺のことをセラに説明しているのだろう。
「うん、レィアくん、入っていいよ」
「んじゃ入るぞ」
カーテンを手でよけ、初めてヒトの形をしたセラと会う。
ベッドに寝ていた彼女にはキチンと目や鼻があり、かなりヒトらしい姿をしていた。
そう言うとかなり失礼だが、ほぼ人型の炭だったアレを、どこをどうやったらヒトになるのか知りたくなる。
髪はまだ生え揃っていないのか、非常に短い白髪が。それでもある程度整えてあった。
驚くべきは潰れていた目まで治っているようで、セラはその目でしっかりとこちらを見た。
「初めまして、だな。レィア・シィルだ。ティロから話は聞いてるか?」
セラがこくりと頷く。
「彼女、まだ声帯が完治してないんだ。一応喋れはするけど、ちゃんと喋れるようになるには一月ぐらいかかるよ」
「目は治ってんのにか?」
「日常生活にも精神的にも一番支障が出やすいからね。最優先で、全力で治したんだよ」
なるほど。
「さて、そんな訳でいくらかお前さんに聞きたいことがある。いいか?」
こくんとセラが一度頷く。
「つっても基本的にイエスかノーでしか答えらんねーよな。それじゃちょいと困るんだが。なんかいい案ない?先生」
「なんかいい案って…まぁあるけど。ちょっと待っててね」
そう言った先生が戻って来て手に持っていたのは赤い万年筆と紙を二、三枚。
「これ、視線で持てるペンっていう魔導具でね?手の不自由な人でも文字が書けるようにする魔導具なんだ」
と言って先生が手を離すと、ペンが勝手に浮き上がり、動き始める。
「これでいいのか?」
「いいよ。ここに机と紙置いとくね」
と言って、先生は寝たままのセラでも見やすいような斜めの机をセットし、カーテンの外へといってしまう。
「…話せるか?」
『大丈夫です』
少し時間がかかるのと、字が汚いのは仕方ないか。
「よし。じゃあ手始めに…直球で聞くが、お前のスキルは何だ?」
『それは…必要ですか?』
「必要だね。これを知っとかなきゃ義肢を作る時にどんな仕込みをすればいいかわからんしな。とりあえず斧ぐらいは仕込んどくつもりだが、他に要望はあるか?」
『………?』
「戦闘用の義肢だろ?不意をついたり武器を落としたりした場合に出せるサブウェポンは仕込んで損は無いぞ。重くなるが、まぁその辺は慣れだ。で、だ」
一度言葉を切る。
「そのためにお前の能力を知っときたいんだ。聖学に来れる奴は大体その能力を戦闘に生かしてる。お前の能力は?」
『あまり言いたくないのですが…』
「戦闘に関係は?」
『基本使わないので関係ないですね。あ、でも、二つか三つぐらい、とても価値のある物を積んでいただけると…』
「価値のあるもの?なんじゃそのリクエスト」
多分彼女のスキルに関連しているのだろうが…作ってもらう側なのに価値のあるものを入れてくれとかいう中々なことを言ってくれるね。
ただまぁ、今回は試験的な意味合いもあるし、特別に手持ちの宝石を三つぐらい入れといてやろう。
「他は?」
『飛び道具を少し積んだりとか出来ます?矢とか』
「出来るな。そんなに数は積めないが」
『お願いします。あとは…では、手足のリーチを少しだけ伸ばすギミックとかつけれます?』
「面白い発想すんなぁ。だが、多分関節か脆くなるぞ」
『その辺は相談ですか。二つ作って比べるのって』
「無理」
ティロが持ち帰ってくる材料の量にもよるが、破損した場合のスペアや修理用のパーツと考えるとそんな余裕はない。
「まぁ要望はだいたい分かった。ところでもう一個聞いときたいんだが」
『はい、なんでしょうか』
「お前、デーモンと遭遇した時になんかした?お前だけが生き残ってる理由がわかんないんだけど」
『………それも答えたくありません』
セラが今度ははっきりとそう言った。
「そうか。ま、とりあえず今日はこんぐらいにしとくか。疲れたろ。また明日来るわ」
『ありがとうございます』
さて、と。どんな義肢を作ろうかね。
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