大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

竜と銀剣

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ザッ。
一歩踏み出す。
血鎖は消し、持つのは右手の金剣のみ。
『敵、手首返して切り上げ』『右に身体を傾けろ』
言われたとおり、少しだけ傾けると、暴力的な音が俺の真横を通り過ぎる。
『絶対に剣を合わせちゃダメよぉ?』『今の坊主にそんな余裕はないからな』
わかってるさ。
膝はガクガク、腹は痛みを訴え、頭はふらつく。
それでも。
『残り六メートル』
また一歩。
『真上からの振り下ろし』『坊主、身体を半歩だけ右へずらせ!』
再び轟音。
『今よぉ』
相手との距離は大体五メートル以下四メートル以上って所か。
ここから。
『走れ!!』
「わかってるさ」
亡霊の誰かが声を上げ、俺は駆け出した。
金剣のリーチは約一メートル半。
化物剣のリーチは約十メートル。
と言うことは、相手の武器はリーチが長すぎるためここまで入れば。
『『『お前の領域だ』』』
「よぉ、ルト先輩。預けてたモンを返してもらいに来たぜ?」
「ッ」
化物剣の間合いより内側で。
完全に俺の剣の間合い。
それも、理想の距離。
「──ッ!」
鋭く息を吐き、歯を食い縛る。
戦技アーツを使いたかったが、一瞬腹部に激痛が走り、上手く行かなかった。
それでも、俺の渾身の力で振り下ろした金剣。
かなりの勢いで振り下ろされた金剣は、ルトの右肩を鋭く抉る──が。
「「なっ!?」」
驚きの声は俺とルトから。
俺は切断する勢いで振り下ろした金剣が腕を切断出来なかったことに。
ルトは──。
『なんだありゃ?』『これは…鱗?』
天然の防具を突きぬけて肉を裂いたことにだろうか。
「貴様…!」
赤い血を右肩から流し、それを左手で抑えながら吼える。
「貴様、よくも私に傷を…!」
「怪我するのが嫌だったら銀剣返せ。それが嫌なら傷まみれのトカゲになって転がってろ────まぁ、どうせ俺が銀剣を持っていくことに変わりはないんだがな」
そう言いながら、俺は金剣を肩に担ぐ。
「《剛、砕》ッ!!」
歯を食いしばり、今度こそ出た戦技アーツ
狙うはルトの脇腹。そこから横に一気に振り抜く!
『馬鹿!相手死ぬぞ!』
シャルの焦った声が聞こえるが。
同時に聞こえた声が俺をさらに焦らせた。
「《竜転》」
その一言ワンフレーズが、俺の警報を最大限に鳴らした。
しかし、既に撃った戦技アーツは止めることが出来ない。
金剣が光の尾を引きながらルトの脇腹に吸い込まれ──。
──ギィン、と。
弾かれた。
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