大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

高壁と群れ

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そんな訳で俺は今、非常に見晴らしの良い高壁の上に来ていた。
というのも、壁の方に行くと、警備員の一人が俺に気づいて声を掛けてきたのだ。
なんでも、俺が前にプクナイムに来た時のことを覚えていたらしく、快く壁の上へと通してくれたのだ。
「天気が良くて、高めの気温も程よい風がいい感じに気持ちいい感じにしてくれてる。オマケに見晴らしも良くって最高だな」
『眼下に魔獣がわんさといなければ、だがな』
「本当にな…」
なんだよアレ。本当にごちゃ混ぜで突っ込んできてる。
どの辺に豚の魔獣が固まっているとか、そういうのすらない。まるで魔獣であること以外は大した違いではないと言わんばかりに。
そして話にあったように、こいつら同士で攻撃し合うことも無い。もちろん多少は攻撃が当たることはあるようだが、その程度は全く意に介せず、魔獣達は一心不乱にヒトを襲っていた。
「流石に妙、だな」
『だなぁ』
俺とシャルの意見が一致する。
魔獣の数は総数でざっと見ても二百以上。それを強固な壁と僅かな人員で何とか防衛している形だ。
別に魔獣の群れが襲ってくること自体はそこまで珍しいことではないらしいが、連日この規模となるとおかしい。そもそもどこから湧いてくるんだって話になるし。
群れの九割九分以上は成る方の魔獣だ。その手の魔獣は成る前はただの動物だし、その成る前の状態の動物が必要となる。
毎回二百を殲滅している訳では無いだろうが、連日となると流石にどうやって調達しているのかが気になる。
しかもあいつら、なんか知らんが減った気しねぇんだけど。俺しばらく見てるけど、これだけの激闘に対して群れの縮小が遅すぎる。
「シャル、司令塔をサーチできるか?」
『残念ながらこの前の一件以来、索敵能力がちょいと下がっちまってな。感覚がシャルからナナキ寄りになった弊害だな。流石にこの距離だと無理だ』
「どんぐらいなら探し出せる?」
『そうさなぁ…まぁ、お前が中に突っ込めばほぼ間違いないな』
なるほどな、やっぱりそうなるか。
「マキナ、準備だ」
『了解・しました』
「おーい、警備兵さーん」
「はーい?なんでうぉう!?」
丁度マキナが俺を包み込む瞬間に来た警備兵はは素っ頓狂な声を上げてやや仰け反る。なんか面白いリアクションしてんなお前。まぁいい。
「あの、その鎧…鎧?鎧ですよね?ともかくそれを着てどうするつもりですか?」
「そりゃお前、鎧着たら戦うに決まってんだろ」
「まさか、私とですか?」
「…なんでお前と戦わにゃならんのだ。状況的に考えて下だろ」
「…あの中に入るおつもりで?」
「その通り。今からちょっと行ってくるから、悪いけど今戦ってる人とかに俺の事伝えといてくれる?どうせそういう方法なんかあるでしょ?」
「えぇまぁ、あるにはありますが…」
「んじゃ、任せるぞ」
そう言って、俺は壁から宙へ身を投げた。
「あっ!」という警備兵の言葉が上から聞こえるが、この程度の高さなら全く問題は無い。
着地の寸前に、落下ダメージを全身で流すようにして転がる。
さて。
「やるか」
久々の魔獣狩り。
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