大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

鉄縄と反撃

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「クソっ!」
縄でグルグル巻きにされたまま、目を見開いて刃を見切り続ける。
縄の両端は互いに絡み合い、捻れてくっついている。
…あぁそうだ、くっついている。まるで溶接でもされたかのように。継ぎ目なんて見えない。
つまり解くのは無理。縄を破壊するしか解除する方法はないだろう。
そう逡巡している間にも、相手の投げた刃は無数に俺へと迫る。
「くっ!」
クアイちゃんも似たような戦法を使うが、こちらの方が何枚も上手だ。俺が何かするために動く度、少しづつだが確実に状況が悪い方向へと動いているという確信がある。
次の一手、その次の一手が着実に潰される嫌な感覚。
剣に、戦いに、精通しているからこそ分かる。
俺はあと何手で詰まされるのかを。
そして、耐えきれずに声を上げた。
「第三血界!」
『…許可する』
「《血刃》!」
右手から伸びた長さおよそ十センチ程度の血の刃。それは黒剣と同じ絶対切断の能力を持つ勇者の刃。
「迸れっ!」
手から生み出された血刃は、俺の身体を伝って動き、手から腕、腕から肘、そしてそのまま肩まで上る。
当然縄はあったが、絶対切断の刃はそれを難なく断ち切り、たちまち俺の身体を自由にする。
「っチィ!」
今まさに襲いかかって来た刃を一度回避、切っ先を返してもう一度襲いかかって来るが、それを真正面から指で掴み、遠くへと思い切り、全力でぶん投げた。下手に砕こうものなら、それをそのまま小さくなった刃として俺に向けていただろう。危ない危ない。
「…もう同じ手は食わん」
氷の刃も予備の金属製の刃も、全て避けつつ、金属製の刃は回収しつつ接近。どうやら体術をある程度かじっているようだが、この程度なら問題ない。
魔法の杖を先程と同じように叩き折り、宝玉を砕き、そしてさらに髪で手足を縛る。
そして、やはりというかなんというか、寄生虫はこれもまた背骨に絡みついており、即座には抜けない。
仕方がないのでニケにメッセージを飛ばし、念力を使うから気をつけろと言ってから壁の上からニケの方に放り投げる。こんだけ高さありゃニケも余裕で間に合うだろ。
と。
突如、俺の視界をすべて鋼が覆った。
「おうっ!?」
それら全ては鋭利な刃物。しかし、それが俺に触れる直前で全て折れている。
『──これは珍しい。鋼の魔力を持つ魔法使いか』
シャルは呑気にそんなことを言っているが、こちらとしてはこれ以上ないほど焦った。
こっちがまだ術者の位置を把握出来ていないのに、向こうは俺のところに驚くほど正確に魔法を当ててきた。
気づけば、いつの間にか最初に三つあった戦闘音が全て消えている。寄生された輩は倒されたのか、それとも全滅したのか。
いや、寄生された者がいないわけが無い。俺に魔法を撃ってきたのだから。つまり。
味方が全滅、ないしは相当の消耗をしている。
そして、相手は既に俺を一方的に狙える場所から攻撃を仕掛けている。
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