大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

店と鍛治

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その日は剣を少し振った後、シエルにせがまれて外の街を見て回った。
この子が積極的に外に出ようとするのは少し珍しいな…と思いつつ、とりあえずフラフラとアーネと見て回った服屋や装飾店がある通りにまで来たのだが…。
「………ここ、じゃない」
どこか別の所を探しているらしい。
小さいながらも女の子が装飾品とかに一切目もくれず、ここじゃない宣言とか、保護者として少し将来が不安になるが…。
ベルに防具の代金として有り金全部を置いて来てしまったので、あの怖い爺さんにまた宝石を一つとお金を交換してきて、シエルが多少無茶を言っても大丈夫な様にしてたんだが…。
「んじゃあどこに行きたいのかねぇ…?」
独り言を呟き、ここ数日で一人で見て歩いた街の地図を頭の中で広げる。
シエルが興味を持ちそうな所をとりあえず適当に回るか?
…シエルが好きそうな所…公園とか?いや、大人しい子だからあんまり気が乗らんかもしれん…本屋はこの街に無かったし。ふーむ?娯楽…と言えば何かあったっけな?
と、そんな事を考えていると、当のシエルがクイクイと服の裾を引っ張る。
「ん?どうした?」
「………おかあさんがいくとこ」
「…俺が行くところ?」
俺がそう聞くと、シエルはコクリと頷いた。
俺が行くところって言うと…。
『鍛冶娘ん所じゃね?』
だよな。
「あんまり楽しくないと思うけどなぁ…」
とりあえず行きますか。
シエルを肩車し、街の西側へと足を向ける。彼女ぐらいの重さなら俺でも大した負担にならない。
「………♪」
「おう、楽しそうなのは結構だが、髪は引っ張るなよ?」
「………ん♪」
ならよし。
はしゃぐシエルを肩に乗せながらしばらく歩き続け、ベルの小屋に到着する。
中からは何か金属同士がぶつかり合う音が外にまで聞こえてくる。頑張ってるな。
「暑いから気をつけろよ?……ベルー!入るぞー!」
「おう、入りィ!」
シエルの額が小屋の入口にぶつからないように気をつけて入る。
「今日はまたテンションが高いな、オイ。どのぐらい進んだんだ?」
ベルが手元の金属をぶっ叩きながら返事をする。
「そやな、左腕と胴体が出来たで。今作っとんのは腰から下やね」
早っ。前来た時は右腕だけだったじゃん。
「ふぅん、なら左腕を試着するか。…これ?」
「そこの台の上に置いてあるやろー?とりあえずそれに腕突っ込んでみー…い?」
ん?なんか変に言葉が途切れたな。さっきまで鳴り続けていた鎚の音も途切れた。
「うん?どうした?」
銀色に輝く左腕を持ち上げ、四方八方から眺めつつそう言う。
見た感じはかなり…防御力に不安がありそうな感じ。
ペラッペラなんだ。いや、比喩とかじゃなくて、物理的に。
なんて言うか…金属をひたすら叩きまくった結果、紙一枚分ぐらい…いや、それ以下の薄さになった金属を、何十枚か重ねてあるっぽいそれは、剣で斬ればそのまま腕ごとズバッと持っていかれそうで…。
「なぁ、あんたさんの肩の上に乗ってるちっちゃい子はなんなん?」
「あ?シエルの事か?俺の……なんだろ」
おっと、シエルが俺の頬をぺちぺちと叩いている。多分降ろせって事だな。
「………はじめまし、て」
ペコリと頭を下げるシエル。
カチンと固まるクランベルナ。
「か、かわいいいいいいいいいいいいい!?」
「………んきゅっ!?」
あ、ベルが壊れた。
シエルを抱きしめて頬ずりしてる。
…ほっといたら、治るかな?
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