大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

文字の大きさ
上 下
472 / 2,021
本編

鎧と魔法

しおりを挟む
「だーかーらー!それ付けたら奥の手が使えないって何度も…」
「これ付けんかったら上手いこと連結せんのや!その癖、全身鎧とか注文したんはどこのド阿呆や!」
「………。」
「だから軽くて丈夫なだけでいいって言ったんだろ!?」
「それやったら認められへんのやっちゅうに!」
「………。」
今現在、ベルと鎧の設計図を一番最初から見直し中。
最初、俺がゴーサインを出した鎧は、竜の鱗のように細かい複数のパーツが組み合わさって出来るような形の鎧だった。
もっとも、竜の鱗ほど緻密にパーツ同士が噛み合ってる訳ではなく、そこに少し隙間を作り、衝撃をそこで殺すような工夫をしてあったものだ。
これなら、血界を鎧の隙間から展開出来たし、問題なかった。
一方、ベルが独断で作っていた鎧は、それこそ竜…よりも緻密に噛み合う龍の鱗のようにギッチリ噛み合わさった鎧。
伸縮自在で頑丈らしく、英雄殿も使うような逸品らしいのだが、俺との相性は最悪に近い。
こんなものを使えば、血界は一切使えなくなる。
という訳で、第三の鎧に取り掛かる今現在なのだが、ベルの話を聞く感じ、最初の防具を作るにしても多少は第二の鎧のような所が必要になるらしい。
設計図になんで書かなかったバカタレ。
さて、第三の鎧で今言い合っているのは、その密着する部分が連結部分に重要らしい。じゃなきゃ非常に動きにくいんだとか。
なんだ、連結部分ならイイじゃん、って思うだろ?
連結部分ってのが可動部分全体なんですが。
つまり、肩や膝、指先の第一関節まで、曲がるところは全部それで覆われることになる。
そんなのされたら血界の展開される場所が滅茶苦茶限定されてしまう。それを避けたい俺とどうにかして説き伏せたいベルとの舌戦となっていた訳だ。ちなみにシエルは俺とベルを交互に見ているだけ。
「…チッ、これじゃ埒があかねぇな」
「…ホンマ、疲れたわ」
どうしても譲り合わない俺達は結局力尽き、その場にへたり込む。
「なぁなぁ、どうにかなんねぇの?こう…槌人種ドワーフの特殊技能とか?ほら、よく絵本的なのであるじゃん。槌人種ドワーフの鍛治師がなんかスゲェ魔法みたいなの込めて、ゆう…ヒーローに授けるー、みたいなの」
勇者って言いかけた。こういうのを勇者って表現するのはなんか嫌。英雄も論外。
「あん?あんな御伽話?出来んことは無いけど…槌人種ドワーフっちゅーのはせいぜい人より圧倒的に鎚の扱いが上手いってこと、手先が器用ってこと、あとは固有魔法で魔法を込められることぐらいや」
「…それって普通の付与魔法エンチャントとなんか違うの?」
エンチャントの魔法なら滅茶苦茶腕がいい魔法使いにお願いすれば出来ると思うんだが。ちなみに十五号室の部屋とかにかかってるアレがまさにそれ。
「ちゃう。エンチャントの魔法は武器そのものを強化する魔法や。切れ味上げたり、頑丈にしたり。けど、ウチらの魔法は魔法そのものを込めるんや」
ヴン、と音がしたのでそちらを見ると、ベルの手のひらの上、直径十センチほどの魔法陣が、青白く光りながらゆっくりと回転していた。
「これがそう。名前は《魔を封じて御する者マジック・エンチャント》ってのや。ただのエンチャントやない」
ベルは即座にそれを握りつぶす。
ふっ、と魔法陣は掻き消え、魔力の残り香だけがあたりに残る。
「今のを使えば燃える剣や、雷を飛ばす弓を作ることが出来る。多分、アンタさんが言ってんのはそういうのやろ?」
まさにその通り。
「それ使えよ」
「アンタさんの注文、鎧やろ?燃える鎧やら物理的に痺れる鎧作って欲しいんか?」
あぁ、そういう事か…。
「んじゃあどうしろってんだよ…」
「諦めて二代目を使い?そうすりゃ万事解決やし」
「それは絶対嫌」
そのまま話し合いは日が暮れるまで続いた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

エリザベート・ディッペルは悪役令嬢になれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:3,522pt お気に入り:1,653

貴方達から離れたら思った以上に幸せです!

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:204,234pt お気に入り:12,103

継母の心得

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:66,996pt お気に入り:23,305

食いしんぼうエルフ姫と巡る、日本一周ほのぼの旅!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:184pt お気に入り:223

おっさん探訪記

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:235pt お気に入り:1

かっぱかっぱらった

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:207pt お気に入り:0

処理中です...