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本編
聖女と記憶
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全く、何かあったのならさっき言ってくれても良さそうなもんだが。
『いや、聖女も何か言いかけてただろ』
あれ?そうだっけ?
廊下を歩きながらシャルと話す。
『おう。丁度何か言いかけた所でシエル乱入だ』
あー、そうだったかもな。
でも何でまたあのデカい部屋を使わにゃならんのだ。
『さぁ?俺は聖女じゃないし?俺もお前も勇者だし?』
なんだよ、勇者は聖女の考えることは分からんって話か?
『いんや、単に人の心の中を知ってるのは常に本人だけで、本人はそれに気付いてないことが多い、って話』
お前がいるから俺は例外だな。丸聞こえだし。
『そりゃ違いないな』
さて着いた。再び扉を押し開ける。
今度は中にいたのは聖女サマだけ。
ついでに言うなら、あの大きなテーブルも片付けられ、跡形もなくなっている。
代わりに置いてあるのは小さな丸いテーブルが一つと椅子が二つ。
既に一つは聖女サマが埋めている。
「お待ちしていました。どうぞお掛け下さい」
「ん?おう」
とりあえず勧められるまま椅子に座る。
正面には蒼く澄んだ一対の瞳が俺をじっと見つめていた。
「…なんだよ」
「いえ、なんでもありません」
…そう言われてもそんなにじっと見られると…なんと言うか…。
『んん?おお?んっふふー』
なんだシャル、何か言いたいのか。
『いんやぁ?べっつにぃ?珍しく照れてんなぁ、と思っただけー』
「なっ、」
一瞬、顔が赤くなりかけるが、スキルでいつも通りの顔色になるようコントロールふる。…このスキルで助かった。本当の本当に助かった。
「?…どうかなさいましたか?」
不思議そうに小首を傾げる聖女サマ。
「…あ、ああいや。な、何でもない」
慌ててそう答えると、聖女サマは「そうですか」と言い、再び俺を見つめる。
………………………だから何なんだ!!
「あ、あー、その、なんだ。要件が何かある…んだよな?」
沈黙と視線に耐えきれず、こちらが沈黙を破り、声を出す。
「…いえ、失礼ながら、私のスキルであなたの記憶をしばし探っていました」
一瞬の間にも満たない、一瞬の半分の半分、そのまた半分ほどの、まさに刹那。
俺の身体から、殺気が溢れ出した。
「ッ!!」
「──あぁ、悪い。うっかりしちゃった」
そう言う間に、既に殺気は収まっている。
しかし聖女サマはガッチガチに固まったまま。
そりゃそうか。あの濃さの殺気は多分、誰にも出した事の無いような殺気だったし。
『──勇者の記憶は見られたか?血界関連は特に不味いぞ』
わからん。他の勇者の記憶に関してはシャルがロックしてくれてるから心配は無いが…俺が使った血界とかは不味いな。
まぁ、俺がキレた理由はそっちじゃないんだが。
『ほう?何か不味い記憶があったか?』
ナナキの記憶を覗かれるのは我慢ならんからな。
「で、そんな事をした理由はなんだ?納得出来なきゃ少しばかりお説教だ」
聖女サマだろうがなんだろうが関係ない。
人のデリケートなところを覗き見した罪は重いぞ。
「これであなたは信用出来そうですね」
「ん?あぁ、集団かどうか調べてたのか」
「えぇ、表面をサッと調べただけですが、特に不審な点もありませんでしたから大丈夫そうですね。あとは──」
あとは何?と聞こうとしたら。
壁が爆発した。
『いや、聖女も何か言いかけてただろ』
あれ?そうだっけ?
廊下を歩きながらシャルと話す。
『おう。丁度何か言いかけた所でシエル乱入だ』
あー、そうだったかもな。
でも何でまたあのデカい部屋を使わにゃならんのだ。
『さぁ?俺は聖女じゃないし?俺もお前も勇者だし?』
なんだよ、勇者は聖女の考えることは分からんって話か?
『いんや、単に人の心の中を知ってるのは常に本人だけで、本人はそれに気付いてないことが多い、って話』
お前がいるから俺は例外だな。丸聞こえだし。
『そりゃ違いないな』
さて着いた。再び扉を押し開ける。
今度は中にいたのは聖女サマだけ。
ついでに言うなら、あの大きなテーブルも片付けられ、跡形もなくなっている。
代わりに置いてあるのは小さな丸いテーブルが一つと椅子が二つ。
既に一つは聖女サマが埋めている。
「お待ちしていました。どうぞお掛け下さい」
「ん?おう」
とりあえず勧められるまま椅子に座る。
正面には蒼く澄んだ一対の瞳が俺をじっと見つめていた。
「…なんだよ」
「いえ、なんでもありません」
…そう言われてもそんなにじっと見られると…なんと言うか…。
『んん?おお?んっふふー』
なんだシャル、何か言いたいのか。
『いんやぁ?べっつにぃ?珍しく照れてんなぁ、と思っただけー』
「なっ、」
一瞬、顔が赤くなりかけるが、スキルでいつも通りの顔色になるようコントロールふる。…このスキルで助かった。本当の本当に助かった。
「?…どうかなさいましたか?」
不思議そうに小首を傾げる聖女サマ。
「…あ、ああいや。な、何でもない」
慌ててそう答えると、聖女サマは「そうですか」と言い、再び俺を見つめる。
………………………だから何なんだ!!
「あ、あー、その、なんだ。要件が何かある…んだよな?」
沈黙と視線に耐えきれず、こちらが沈黙を破り、声を出す。
「…いえ、失礼ながら、私のスキルであなたの記憶をしばし探っていました」
一瞬の間にも満たない、一瞬の半分の半分、そのまた半分ほどの、まさに刹那。
俺の身体から、殺気が溢れ出した。
「ッ!!」
「──あぁ、悪い。うっかりしちゃった」
そう言う間に、既に殺気は収まっている。
しかし聖女サマはガッチガチに固まったまま。
そりゃそうか。あの濃さの殺気は多分、誰にも出した事の無いような殺気だったし。
『──勇者の記憶は見られたか?血界関連は特に不味いぞ』
わからん。他の勇者の記憶に関してはシャルがロックしてくれてるから心配は無いが…俺が使った血界とかは不味いな。
まぁ、俺がキレた理由はそっちじゃないんだが。
『ほう?何か不味い記憶があったか?』
ナナキの記憶を覗かれるのは我慢ならんからな。
「で、そんな事をした理由はなんだ?納得出来なきゃ少しばかりお説教だ」
聖女サマだろうがなんだろうが関係ない。
人のデリケートなところを覗き見した罪は重いぞ。
「これであなたは信用出来そうですね」
「ん?あぁ、集団かどうか調べてたのか」
「えぇ、表面をサッと調べただけですが、特に不審な点もありませんでしたから大丈夫そうですね。あとは──」
あとは何?と聞こうとしたら。
壁が爆発した。
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