大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

移動と奇声

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正直に言うと、暇か暇でないかなら暇なので、相当真面目な顔をしたピィに言われるがまま、彼女について行く事にする。
「どこに行くんだ?」
「研究所。こっちダ」
と言って周りを警戒しつつピィが一番近い空き教室へと入っていく。
「ほラ、早ク」
「わかったわかった…これン中に入れって?大丈夫なのか?」
ピィが俺に入るよう指さしたのはヒトが一人、詰めれば二人ぐらいなんとか入れそうな小さな隙間。いつもはこんな隙間無いんだが、恐らくどこかにボタンでもあって、それを押したら出てくるんだろう。
「前におしゃべりディレスから聞いたロ?エレベーターって移動装置ダ」
ディレス…誰だっけ?でも、何となくそのエレベーターって移動手段は聞いた覚えがある。学校全体に張り巡らされている研究者達の移動手段とか言う話だったはず。なら多分大丈夫か。
とりあえずその空間に入るが、俺一人が入るだけで結構狭い。長身のピィが入る隙間は無いように思える。
「で、どうすりゃいいんだ?」
「少し待テ」
と、ピィがパズルのピースになって隙間に潜り込み、手だけ形成し直して壁のボタンを幾つか押し始める。見えないだろうによくそんな操作が出来るな、と思っていたら、手のひらに目玉が生えていた。
「……便利だな、その能力」
「外付けだシ、制限多いシ、メンテナンスもバカにならなイ。そもそも移植の時点で失敗すると死ぬ未完成品な上ニ、制御も難しいがナ。割に合うかどうかは微妙だと思うゾ」
シシシ、と笑うピィ。口周辺だけを作って喋っているのだが、肺とかは見当たらない。どうやって喋っているのかは正直謎だ。
そう言えば、白衣とか赤いヒールもピースになっている。対象が本人だけではないのはスキルでも珍しい。一体どういう仕組みなのだろうか。本当に謎だ。
そんな事を思っていると、急に扉が閉まる。
「ア、そうダ」
「あ?」
「ちゃんと手すリ、掴んどけヨ?」
とピィが言った瞬間、身体が謎の浮遊感に襲われる。
「ふぉぉぉ!?」
慌てて手すりを掴むが、思わず出てしまった声にピィが大声を上げて笑う。
「情けない声だナ。《緋眼騎士》」
「この女ァ…わざとだろテメェ…」
「いやいヤ、うっかりダ。悪かったナ。ククク、なんだその髪。警戒心全開の猫みたいだナ」
まだ笑ってやがる。クソ。
急に地面がなくなって穴が空いたかと思って滅茶苦茶焦った。もちろんそんなことは無く、音などから察するに、この部屋自体が動いているらしい。多分方向は下。研究所の方へ真っ直ぐと向かっているらしい。
ガゴン!と部屋が一度止まり、次いで縦ではなく横への移動に切り替わる。
「じきに着くゾ」
「そういや、なんで呼ばれたんだ?」
「ン…言ってなかったナ。この前の戦いデ、お前が負傷して意識が無くなっただろウ?どうにか意識を戻そうとしテ、ひとまず私達が軽くお前の身体を検査したんだガ」
初耳なんだが。だから起きたあの場に研究所の奴らもいたのだろうか。
「お前の身体を調べているついでニ、妙なものが見つかってナ」
「妙なもの?それって魔法的な?それとも肉体的な?」
「あぁいヤ、お前の身体に異常はなかったゾ?だから詰んでたんだガ」
「じゃあ何が見つかったってんだ?」
「魔力がやたらと濃縮された変な石、お前持ってたロ?あれについてダ」
とピィが言うと、エレベーターの扉が開いた。
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