大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

差とリスク

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ベルのスキルを詳しく聞いてみると、彼女のスキルはナナキのスキルと限りなく似ていて真逆である事がわかった。
ナナキのスキルは、《物に命を吹き込む》スキルで、ベルのは《物に意思を吹き込む》スキル。
この違いは、ナナキのスキルで作った物は本人ナナキと意識がリンクし、全て命令などはナナキに任されていた。長く生きた人形などは意識があったようだが、それまでかなり使い込んでいた。
一方、ベルのスキルでは物が動く事は無い。
ただ喋るだけ。
ついでに言うと、本人ベルとのリンクは無いらしい。完全に自立、独立した一つの個となるらしい。
つまり例えるなら、ナナキのスキルを使うと操り人形が出来上がり、ベルのスキルを使うとひとりでに喋る人形が出来る。
さて、ここからが本題。
このベルのスキル、使い込むと──使い極めると、どうなるのか。
「答えは簡単や。他の対象の意思を物に植え付ける事が出来る。なんせ、どんな風に意思を持たせるかも決められるさかい、アンタさんの意思を持たせるのも出来る」
ベルが一階の鍜治屋の隅にある休憩スペースで立て膝をしながらそう答えた。
どういう仕組みなのか分からないが、休憩スペースに入ると、急に空気が涼しくなった。
「このスキルでアンタの意思を鎧の素に入れて、アンタのスキルで自由に扱えるようにするんや」
「…へぇ、そうなるとどうなんの?」
「アンタさんのスキルがどこまで『自由に』身体を動かせるかどうか知らんけど…上手く行けば、鎧を自由自在に組み替える事が出来るかもしれん」
「……自由自在に?」
「そや」
一時的に散っていた金属片は既に白卵に戻っており、それをベルがもう一度取り出す。
「さっきこれが、いくつものちっさい破片なったの見たやろ?」
「おう。爆発するなら先に言って欲しかったけどな」
それにベルは軽く「堪忍」といって笑って誤魔化した。
「イメージやけど、あんな感じで鎧…というか鎧のパーツだけを作る。それ一つ一つをウチのスキルで『レィアの意思』とリンクさせる。そうなると──」
「鎧は俺の一部になる、って訳?」
「そや」
少し腕を組んで考える。
確かにそれなら、たとえば右手だけ鎧を解除させて血界を使うのも不可能じゃない、か。
銀腕アガートラムを使う時のサポートにもなるかも知れないし。
「…いつまでに出来る?」
「最低二週間」
ギリギリだな。
「意思を植え付けたとして、俺に何か副作用的なものは?」
「無い。……多分」
「多分?多分ってなんだ?」
「…一つ一つに全て意思を吹き込むとなると、恐らく膨大な情報が本体のアンタに流れ込む。鎧一片いっぺんが意思を持ってるんや。それがどれだけの負荷をアンタにかけるか…ここまでの数を全部リンクさせた事は無いから、わからんのや」
ふぅむ。
「………よし、わかった。やってくれ」
「…自分で言っといて悪いけど、大丈夫か?」
「さぁ?鎧に関しちゃ残念ながら俺はさっぱり知らん。スキルも腕も、お前が一番知ってるはずだろ?じゃあお前は出来ると思うか?」
ベルは一瞬ひるんだように俺を見た。
「……最善を尽くすわ」
「足りねぇ。最高をこなせ」
それを聞くと、ベルは再び鎚を握り直して金床に向かって行った。
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