1,643 / 2,021
本編
事情とルール
しおりを挟む
先日、突如魔族の襲撃を食らった聖学。王都を中心に円形に張られた結界の東西南北はそれぞれ一箇所ずつ結界の強度を弱めてある。
理由は二つ。ひとつは聖女への負担を少しでも軽減させる為。そしてもうひとつは、万が一結界を破られた時に備えて破壊される箇所をひとつに絞り、そこに対応する守護者を置くためだ。
今その役を背負っているのは聖学と西学、そして紅の森であり、今回はその役目を果たしたと言っても良いだろう。まぁ、裏を多少知っていると、単に相手の目的とも噛み合っていたという面もあるが。
余談だが、北の結界はどうなっているのかと言うと、結界の端が海に入っているのでそこを警戒する必要は無いとの事。
さて、そんな訳で聖学が襲われたという情報を西学のトップが受け取った瞬間、当然西学は魔族の進行の可能性を危惧して数日間警戒していた。結果から言えば何も無かった訳なのだが、西学の用意していた所謂《西学祭》も当然延期になっていたらしい。
そして去年のような盛大な祭りを予定していた西学だが、今年はどうもそうはいかないようだとなると、正直困ったらしい。
というのも、西学は発足してからまだ日が浅い。一年少ししか経っておらず、それ故に知名度も「聖学のオマケ」「劣化聖学」程度にしか思われていない。
「西学は西学でちゃんと実力のある学校である」という事を見せつける必要があり、両校が面と向かって公に火花を散らす場、それが年に一度の聖学祭だった訳だ。
だが今年はそうも行かない。弱った相手に対して、過剰な戦力をもって勝つというのは非常に宜しくないのだ。なぜなら、西学もまた英雄育成を目標に掲げる学校。ある種弱いものいじめにも見えるその図式は、英雄的でないというイメージを持たれかねない。そうなれば学校のイメージは下がってしまう。
さてどうするべきか、と西学のトップが悩んでいたところに、聖学の学校長が今回の話を持ち込んだらしい。
「今から一週間後、王都の特設闘技場で三名ずつ、互いの学校から代表者を出して戦うことになります。ついては、そのあなた達にその代表を務めて頂こうかと思っています」
「ん…?特設闘技場?」
「どうかしましたか?《貴刃》」
「あぁいや、すまない。そんなモノ王都にあったかなと思って…」
それなりに王都について知っているはずのユーリアがそう言う。安全を期すなら障壁の用意などもしなくてはならないし、聖学祭の代わりなら観客に見せつける必要もある。そう考えると、選手が戦うのに十分な広さと容易には破壊されない頑丈さを兼ね備えたフィールドと、その余波や流れ弾が観客を害さないような強固な障壁が必要となる。特に王都は狭い。周りへの被害や影響にも気をつけなくてはならないだろう。
「ありませんよ。ですから今頃、昨年西学の生徒や僅かに英雄と刃を混じえたあの広場に、急ピッチで闘技場が作られていると思います」
まぁそう考えると、特設闘技場なんてものが置けるような場所は限られてくる。いや、というよりもあの広場しかないと言えるだろう。
「たった一週間しかないのだが、強度とかは大丈夫なのか?」
「その辺はご安心を。グローゾフの一族が手を貸してくださいました」
「槌人種の助力を…?」
よほど意外だったらしい。ユーリアが僅かに目を見開き、学校長が再び話を続ける。
「さて、代表枠は三名。誰が出ますか?」
理由は二つ。ひとつは聖女への負担を少しでも軽減させる為。そしてもうひとつは、万が一結界を破られた時に備えて破壊される箇所をひとつに絞り、そこに対応する守護者を置くためだ。
今その役を背負っているのは聖学と西学、そして紅の森であり、今回はその役目を果たしたと言っても良いだろう。まぁ、裏を多少知っていると、単に相手の目的とも噛み合っていたという面もあるが。
余談だが、北の結界はどうなっているのかと言うと、結界の端が海に入っているのでそこを警戒する必要は無いとの事。
さて、そんな訳で聖学が襲われたという情報を西学のトップが受け取った瞬間、当然西学は魔族の進行の可能性を危惧して数日間警戒していた。結果から言えば何も無かった訳なのだが、西学の用意していた所謂《西学祭》も当然延期になっていたらしい。
そして去年のような盛大な祭りを予定していた西学だが、今年はどうもそうはいかないようだとなると、正直困ったらしい。
というのも、西学は発足してからまだ日が浅い。一年少ししか経っておらず、それ故に知名度も「聖学のオマケ」「劣化聖学」程度にしか思われていない。
「西学は西学でちゃんと実力のある学校である」という事を見せつける必要があり、両校が面と向かって公に火花を散らす場、それが年に一度の聖学祭だった訳だ。
だが今年はそうも行かない。弱った相手に対して、過剰な戦力をもって勝つというのは非常に宜しくないのだ。なぜなら、西学もまた英雄育成を目標に掲げる学校。ある種弱いものいじめにも見えるその図式は、英雄的でないというイメージを持たれかねない。そうなれば学校のイメージは下がってしまう。
さてどうするべきか、と西学のトップが悩んでいたところに、聖学の学校長が今回の話を持ち込んだらしい。
「今から一週間後、王都の特設闘技場で三名ずつ、互いの学校から代表者を出して戦うことになります。ついては、そのあなた達にその代表を務めて頂こうかと思っています」
「ん…?特設闘技場?」
「どうかしましたか?《貴刃》」
「あぁいや、すまない。そんなモノ王都にあったかなと思って…」
それなりに王都について知っているはずのユーリアがそう言う。安全を期すなら障壁の用意などもしなくてはならないし、聖学祭の代わりなら観客に見せつける必要もある。そう考えると、選手が戦うのに十分な広さと容易には破壊されない頑丈さを兼ね備えたフィールドと、その余波や流れ弾が観客を害さないような強固な障壁が必要となる。特に王都は狭い。周りへの被害や影響にも気をつけなくてはならないだろう。
「ありませんよ。ですから今頃、昨年西学の生徒や僅かに英雄と刃を混じえたあの広場に、急ピッチで闘技場が作られていると思います」
まぁそう考えると、特設闘技場なんてものが置けるような場所は限られてくる。いや、というよりもあの広場しかないと言えるだろう。
「たった一週間しかないのだが、強度とかは大丈夫なのか?」
「その辺はご安心を。グローゾフの一族が手を貸してくださいました」
「槌人種の助力を…?」
よほど意外だったらしい。ユーリアが僅かに目を見開き、学校長が再び話を続ける。
「さて、代表枠は三名。誰が出ますか?」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
233
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる