大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

条件と状況

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豹曰く、すぐにでは無い。しかしそう後の話でも無いとの事。
そしてどうやってか、シエルの居場所についても目星はついているらしい。
「魔族の拠点は三つ。天空都市、陽光楽園、地底栄城…と言っても、もう地底栄城は滅んだのだけど。もう少し探りを入れてから出るから、その頃には彼女の場所も確定していると思うわぁ」
『なん…?』
シャルが小さく驚きの声を上げた。
『合ってる。三拠点全部。それぞれが三大魔侯が治める魔族の都市。空に浮かぶ侵入困難な天空都市、地上にあり、太陽の恵みを一心に受ける陽光楽園、一度入れば脱出が非常に困難な、難攻不落の地底栄城…どれも俺がいた時代の隊長、副隊長クラスにだけ伝えられてた魔族の根城だ。だが地底栄城が滅んだ?そんな話は知らないぞ…いつ滅んだ?』
「地底栄城が滅んだ?それは確かな情報なのか?」
「えぇ。詳しくは言えないけれどねぇ」
『バカな…どうやって…?』
五十年前の機密?何故そんなものを豹は知ってる?そして滅ぼしたとどうして断言出来る…?
「…で、互いに何人出させるんだ?」
「それはこっちとそちらの学校長が話して決める話よぉ。あなたが首をつっこむ話ではないわぁ」
「それはまぁそうなんだろうが…」
「どうするの?この依頼、受けるのかしらぁ?」
この場で決めろ。豹の目はそう言っていた。
『言ってる情報そのものは正しい。地底栄城の件については甚だ疑問だが…仮に残っていたとして、歴戦の勇者でも手出しが難しい所だからどの道行けないしな』
「………。」
個人的には行きたい。
だが準備がまだ出来ていない。
心も身体も両方。そして何より、何故シエルが出ていったのかも分からない。
連れ戻してやりたい。勇者的にも、魔王の可能性がある彼女が魔族の元にいるのは非常に宜しくないのも分かる。
だが危険すぎる。
俺がでもない。
周りがでもない。
周りが居る事で、俺が勇者としての力を発揮出来ないのが不味い。
ましてや三大魔侯が治める都市。確実に彼らとの衝突は避けられないだろう。
その時、血界を使わずに俺は奴らと戦えるか。
断言するが不可能だ。並の魔族なら出来なくはないだろうが、奴らは格が違う。
「条件が一つだけある。俺だけ単独で個別行動を取らせろ」
そう言うと、豹はじっと俺を見つめながら理由を聞いた。
「理由を聞かせてもらってもいいかしらぁ?」
「やりにくい。周りに誰かいるとな」
「昨日の戦いぶりを見るにそうとは思えないけれどぉ?」
「本気でやりゃ周りの被害が酷すぎるからな」
「魔法も使えないのに?」
「あぁ。安心しろ。本気の俺ならそこらの魔族が束になっても余裕だ」
時間制限付きだがな、と心の中で言う。
「万が一、勝手な行動をされると困るのだけれどぉ」
「しねぇよ。それでも気になるなら、死んでもいい奴でも監視につけりゃいい。報告出来るかどうかは知らんがな」
「随分と強引ねぇ…」
「俺からの条件はそれだけだ。そう難しい条件じゃないし、後は決まったら学校長を通じて答えを出してくれ」
「そう、ね…」
とだけ言って豹が背を向け、静かに去る。相変わらずよく分からん奴だ。
『もし受けることになったらどうする』
「……どうもしない。この千載一遇のチャンスを利用するだけだ」
聖女のタイムリミット、いつ復活するか分からない魔王。そして皮肉な事に、守られている結界のせいで滅多に外へ出られない俺達勇者。
シエルの奪還だけでは済まさない。都市を一つ陥落させるぐらいは必須か。
「ま、そうなると少しでも確率を上げておくべきだな…」
『すげぇ嫌そうな顔してるぞ』
「当たり前だ。すげぇ嫌なんだから」
そう言ってマキナにメッセージを飛ばすよう指示を出…しかけ、今の時刻を思い出して止める。
もう少し後で、誰にも見られないようこっそりメッセージを飛ばすことにした。
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