大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

気分と服装

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という訳で。
「はぁ………」
『深いな。溜め息が』
やかましい。
嫌々ながらも、渋々ながらも、聖女サマのお願いを受け入れた訳だ。
まぁ、受け入れたと言っても、気分があまりよろしくないのは当然といえば当然。
スイッチを切り替えるようにして簡単に変えられるものでもないし。
『比較的簡単にスイッチが入りはするけどな』
…何?お前今日やけに茶化すね。
まぁいい、で、やってやるって言ったのがあの後。俺のために朝食を待ってた皆さんには悪いことしたなぁ、なんて思いながら聖女サマにサクッと伝えた。
結果、聖女サマは「本当ですか!?」と喜んでくれた。
用意があるからという理由で午後から屋敷の裏に動きやすい服装で来い、と言ってから必死こいて用意をして、昼を程々に食って、屋敷の裏で俺が待つことしばし。
聖女サマがいつもの白くて上品なワンピースで来やがった。
いや、違うだろ。馬鹿か。
「……お前さ、その恰好で激しい運動してみ?どうなるか考えてみ?」
そう言ってやると、聖女サマの答えはこうだった。
「いえ!大丈夫です!この服、結構運動しやすいですから!」
そう言う意味じゃねぇんだよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!
汚れるだろ!破れるだろ!捲れるだろ!!
半分ぐらいキレながら、仕方なく聖女サマの服を選ぼうとした。
が。
「なんで全部フリルやらレースをふんだんに使ってんだよ…!なんで全部スカートかんだよ…!」
『そりゃお前、普通戦うことなんて想定されてねぇからだろ』
「知ってんよ!!」
「ひゃいっ!」
「…あぁ、気にすんな」
「は、はい…」
そういう訳で、俺の服を貸してやり、着替える場所である部屋も貸し、部屋の外で聖女サマを待ってると言うのが現状だ。
かちゃり、とドアノブが回転する音とともにドアが開き、聖女サマがそっとこちらを覗くようにこちらを見ていた。
「…あの、おかしく…ないですか?」
「知らん。顔しか見えん」
ぶっきらぼうにそう言うと、聖女サマが恥ずかしそうに部屋から出てくる。
俺がゼランバに来てから幾つか買った(買わされた)服のうち、好きなものを選んで着とけ!と言ったが、まぁほとんど見た目は同じようなもんなので、服装は俺と大差ない。
特に変なところは…ないな。
「よし、大丈夫だ。行くぞ」
「ほ、本当にですか?」
強いて言うなら、聖女サマは俺より若干俺より大きいので、服の丈が微妙に足りないか?まぁ、それぐらい。
あと、年相応に膨らんだ胸が丈の足りなさを助長してるのかもしれんが。
何にせよ、無駄に時間がかかってしまった。
「ほら、時間がねぇんだから急ぐぞ」
「あ、あの…時間がないとは…?」
聖女サマの質問を無視し、俺はその手を掴んで走り出した。
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