大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不機嫌と午後訓練

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何だかもやもやした物を抱えながら午後訓練。
いや、何だかもやもやした物と言うより、普通にイライラしているのだろう。
《剣姫》め、後から見つけてとっちめてやる。
『そんな事言ってる場合か。早く切り替えろ。今日の敵は何だ』
今日は……。
「ってなんじゃこりゃ」
訓練所に入った途端、思わずそう言ってしまった。
目の前わずか一メートルのところにフィールドが張ってあった。
それも張ってあるフィールドは一つだけ…つまり、超々特大のフィールドが訓練所にめいいっぱい張ってあるのだ。
いや、めいいっぱいと言うより…突き抜けているな。フィールドの天辺が天井を普通に突き抜けていて見えない。
そしてそのフィールドの中央、天井スレスレの高さまである檻。明らかにデカイ…っつーかデカすぎる。
そしてそれが時たまガタガタと揺れる。ついでに檻がその度軋む。
こんな特大の檻、一体何を入れているのか。
「よし、これで全員揃いましたね。レィアさん、早く来てください。今回のルールを説明します」
今日はいつもと違うルールなのか。
「はいはい了解了解…ってクードラル先生、クアイがいねぇぞ」
「彼女は今アイテムを取ってきてもらっていますから。彼女には既に内容を教えてあります」
ならいいか。前に誰か言ってたけど、念力って「触れたい」と思う対象のみを持ち上げる魔法の事らしいから、こういう物置から何か持ってくる時とか、よく先生にお願いされるらしい。
「今回の訓練は集団戦レイドです」
先生がそう言う。
「対象はギガース一体、それを皆さんの力を合わせて倒してもらいます。授業で習ったかと思いますが、念のためもう一度ここで復習していきますね?今回の訓練、死者が出ます」
その言葉に空気が凍った。
聖学にきて約八ヶ月、何人もクラスメイトの死に会ってきたが、訓練での死は無かった。
しかしそれを否定する一言。
それも死人が出ると断言。
想像を絶する戦いになりそうだ。
「敵のサイズは身長三十メートル、武器はなし、性別は雄。魔法も剣もほとんど弾く超耐久性を持つ反面、速度は大したことはありません。しかし攻撃が当たればフィールド内でも骨が砕け、内臓がひしゃげるでしょう。絶対にモロに受けないよう、気をつけてください。また、種族的特徴として興奮すると俊敏性と攻撃性が増します。知能は高くありませんが、学習程度ならしますので、ワンパターンな攻撃は対策を取られるでしょう。勝利条件はギガースの討伐、敗北条件はあなた達の全滅、以上です」
簡潔過ぎる説明が終わると、タイミングよくクアイちゃんが訓練所に入ってくる。
「揃いましたね。それではこれを一人ひとつ、渡しておきます」
そう言って一人ひとり渡されるのは青白い札。
「フィールド内に限って、一撃のみ受けた攻撃を軽減する物です」
これを使っても死にかねないと言うのか。恐ろしい話だ。
「危険を感じればフィールドの外へ逃げてもいいですが…ギガースは背中を向けた者を追う習性があります。それでは──」
クードラル先生が指をパチンと鳴らすと、訓練所の天井が開いていく。おいおい、まさか──。
「開始です」
檻が弾け、中から出てくるのは黄土色の肌をした巨大なヒトガタ──。
それがゆっくりと
『オオォォオォオォォオオオォオォオォオォオ!!』
この咆哮のみで訓練所が震え、窓ガラスが割れる。
「用意の出来た人から入ってください」
クードラル先生の声がやたらと冷たく聞こえた。
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