大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

元勇者と紹介

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その後も魔獣達の猛攻があったが、強力な魔法使いと素早いアタッカーが加わった事で非常に楽になった。
何とか第六夜を乗り越え、俺とヤツキはどっかりと木の根元に座り込む。
「ちょっと貴方、床に座り込むなんて汚いですわよ?」
アーネの文句を無視し、代わりに礼を言う。
『助かった、ありがとうな、アーネ』
『…あぁ、感謝する。名前はアーネ…で、いいのか?そっちの小さい子は…ん?』
流石元勇者、一目見てシエルが何者か分かったらしい。
『────』
無言で黒の長剣を構え、身体からは薄青のオーラが立ち始める。戦技アーツだ──って待て待て待て待て。
『ストップストップ!ヤツキストップ!!』
『何をする。魔族を殺すのは私達の役目だろう。あれは──』
シエルを指さす。
『あれは半分魔族だろう?なら殺すべき──』
と、ヤツキのセリフが止まる。
『お前、あの半魔族を殺そうと思わないのか?』
『え?あ?俺?俺は……まぁ、思わないな』
シャル曰く、《勇者》という存在システムも二百年近く経った俺の代に来て綻びが来ているらしい。魔族=殺すべしみたいな感情は比較的軽い。無い訳では無いが、半分人が混じっているシエルには反応していない。
『そうか、ならいい』
俺がそう言うと、ヤツキはあっさりと引き下がる
『い、いいのか?いや、俺としては助かるんだが…』
『別に《勇者お前》が言うならいいさ。私はもう…違うからな』
その言葉にどこか安堵があるように感じたのは俺の気のせいだろうか。
『ヤツキ…?』
「どうしたんですの?何かあったんですの?」
アーネの声が聞こえたのでそちらを見ると、大量の冷や汗を流しつつガクガクと震えるシエルがいた。
『ど、どうしたシエル!?』
「………こ、ころされる、と、おもっ、た」
心当たりがあるとすれば一人だけ。
『ヤツキ…お前か』
『相手を真正面から殺す時は殺気で威圧、萎縮させてから殺すのは当たり前だろ?悪かったよ』
肩をすくめてそう言ったあと、シエルの頭を撫でようと手を伸ばすが、当然逃げられる。素早くアーネの後ろに隠れ、顔を半分だけこちらに出して見つめてくる。
『…おい、なんだこの可愛い生き物』
『あー…訳あって俺が引き取ったハーフの子だ。名前は…あー…シエル・フィーネだ』
『フィーネだ?お前そんな名前付けたのか?それもシエル?昔っからあるお伽噺のお姫様の名前じゃないか』
全部言いやがったよこの女。
『で、こっちがアーネだ。アーネ・ケイナズ』
「あ、その、よろしくですの…えっと…ヤツキ…さん?」
『あぁ、ヤツキだ。姓は無い。にしても…ケイナズか、そうか…』
『…?』
なんだこのリアクション。
「ところで二人共…少し言いにくいんですけれど…」
『あ?なんだ?トイレか?』
「違いますわ!そうじゃなくて……」
「………おかあさん、くさい」
シエルがずばっと言ってくれた。
まぁ、一週間もこんな所にいれば当然といえば当然となのだが……心がやられた。
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