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本編
連戦技と昔話
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真夜中の零時に訓練所で待ち合わせって言われてもなぁ…
「普通ならやること無くて暇を持て余すと思うんだが。そこんとこどうよ?」
『まぁ、普通ならな。お前にとっちゃいつもより少し長めにここにいればいいだけだし、問題ないだろ』
扉を開き、施錠は──いいか。じゃなきゃ入れないだろうし。
早速銀剣と金剣を取り出し、最近思いついた新しい事を始めてみる。
「まぁな。けど…」
『念の為、血界はやめとけ。万が一見られたら面倒事になる』
独り言ぐらいなら大丈夫か?
『大丈夫じゃねぇの?せいぜいが変人と思われる程度だろ』
「大丈夫じゃねぇだろ。それ」
よし、出だしは好調。だが、実戦で使うには少しぎこち無いな…まだ練習の余地がある。
『そんなに使える技のレパートリー増やして大丈夫なのか?使うような場面が少なそうなんだが。それに…連戦技だったか?あんな馬鹿みたいな技もあるのに、実際はほとんど使ってないじゃねぇか』
「連戦技は人に撃っちゃ基本オーバーキルだしな。外した場合の隙も大き過ぎる。それならこっちの方が使えるだろうさ」
『なら、連戦技は元々、どんな時に使う技なんだ?』
あー…
「んーと、だな」
一度手を止め、ガシガシと頭を掻いてから答える。
「昔な、ナナキに言われたんだよ」
『あ?俺?』
「まぁ、お前だな」
お前は覚えてないだろうが。
「魔族って存在が外にいて、それがどんだけおっそろしい者かって話をされてな」
『へぇ。で?』
その辺の記憶、お前は持ってないのか。
少し恥ずかしい話だから、出来たら覚えていて欲しかったんだが…まぁ仕方ない。
「あー、それでな?どうすればいいかナナキに聞いたら、『避けられないように超火力の一撃を叩き込むんだよ』って言われてな」
『あぁ、まぁそうだな』
多分ナナキが言ってたのは《血界》の《血呪》だの《血刃》だの《血腕》だの、大方その辺の話だったんだろうが。
それを知らなかった当時の俺は。
「超々火力の戦技だと思ったんだよ。で、どんな事したら戦技の火力が伸びるかって考えたら」
『なるほど、戦技に戦技を重ねるって事を考えたのか』
「そ。あらゆる行動は何千何万と繰り返せば戦技になるから、戦技をさらに戦技として認識すれば火力が上がるんじゃないか、って思ったんだ……ただ、普通に戦技だけに戦技を重ねるのはどうも不可能っぽいな」
まぁ、当たり前といえば当たり前なんだが。
『なるほど、その結果生まれたのが戦技と戦技を繋げる連戦技って訳か』
「まぁな。けど多分、これをさらに繋げて、連々戦技みたいな感じで延々と重ねてくことも出来るんだろうが…まぁ、普通は無理だ」
『ほう?そりゃまた何で?』
何でって…
「身体がもたねぇの。戦技の勢いに身体が追いつかなくて、連戦技ですら身体が悲鳴を上げる。多分、ダブルとかしたら腕とか足がイカレる」
『なるほどな。で?どこが恥ずかしいんだ?』
あー…しまった。恥ずかしい話って言わなきゃよかった。まぁ、心の声が漏れてるからあんまり意味は無いけど…いや、最近はブロック出来てるはず…
「あー、実はな、戦技が一撃かつ超火力の極み、みたいな技があるんだよ、二つだけ」
『今代の。それは「だけ」って言わねぇぞ』
名前は《終々》と《音狩》って名前なんだが…
「恥ずかしい事に、この戦技は両方連戦技と全く逆のアプローチから完成した戦技でな」
つまり何が言いたかったかと言うと──
「俺が幼心に頑張った新技開発は、全くの無駄だったってオチだ」
この事を昔ナナキに言ったら、話の前半で真顔をされて、中盤で笑われて、最後にもう一度真顔になられた。
多分、今もシャルは同じ顔してるんだろうな。
亡霊だから顔は見えないけど。
そんな事を思いながら、俺はまた剣を振り始めた。
「普通ならやること無くて暇を持て余すと思うんだが。そこんとこどうよ?」
『まぁ、普通ならな。お前にとっちゃいつもより少し長めにここにいればいいだけだし、問題ないだろ』
扉を開き、施錠は──いいか。じゃなきゃ入れないだろうし。
早速銀剣と金剣を取り出し、最近思いついた新しい事を始めてみる。
「まぁな。けど…」
『念の為、血界はやめとけ。万が一見られたら面倒事になる』
独り言ぐらいなら大丈夫か?
『大丈夫じゃねぇの?せいぜいが変人と思われる程度だろ』
「大丈夫じゃねぇだろ。それ」
よし、出だしは好調。だが、実戦で使うには少しぎこち無いな…まだ練習の余地がある。
『そんなに使える技のレパートリー増やして大丈夫なのか?使うような場面が少なそうなんだが。それに…連戦技だったか?あんな馬鹿みたいな技もあるのに、実際はほとんど使ってないじゃねぇか』
「連戦技は人に撃っちゃ基本オーバーキルだしな。外した場合の隙も大き過ぎる。それならこっちの方が使えるだろうさ」
『なら、連戦技は元々、どんな時に使う技なんだ?』
あー…
「んーと、だな」
一度手を止め、ガシガシと頭を掻いてから答える。
「昔な、ナナキに言われたんだよ」
『あ?俺?』
「まぁ、お前だな」
お前は覚えてないだろうが。
「魔族って存在が外にいて、それがどんだけおっそろしい者かって話をされてな」
『へぇ。で?』
その辺の記憶、お前は持ってないのか。
少し恥ずかしい話だから、出来たら覚えていて欲しかったんだが…まぁ仕方ない。
「あー、それでな?どうすればいいかナナキに聞いたら、『避けられないように超火力の一撃を叩き込むんだよ』って言われてな」
『あぁ、まぁそうだな』
多分ナナキが言ってたのは《血界》の《血呪》だの《血刃》だの《血腕》だの、大方その辺の話だったんだろうが。
それを知らなかった当時の俺は。
「超々火力の戦技だと思ったんだよ。で、どんな事したら戦技の火力が伸びるかって考えたら」
『なるほど、戦技に戦技を重ねるって事を考えたのか』
「そ。あらゆる行動は何千何万と繰り返せば戦技になるから、戦技をさらに戦技として認識すれば火力が上がるんじゃないか、って思ったんだ……ただ、普通に戦技だけに戦技を重ねるのはどうも不可能っぽいな」
まぁ、当たり前といえば当たり前なんだが。
『なるほど、その結果生まれたのが戦技と戦技を繋げる連戦技って訳か』
「まぁな。けど多分、これをさらに繋げて、連々戦技みたいな感じで延々と重ねてくことも出来るんだろうが…まぁ、普通は無理だ」
『ほう?そりゃまた何で?』
何でって…
「身体がもたねぇの。戦技の勢いに身体が追いつかなくて、連戦技ですら身体が悲鳴を上げる。多分、ダブルとかしたら腕とか足がイカレる」
『なるほどな。で?どこが恥ずかしいんだ?』
あー…しまった。恥ずかしい話って言わなきゃよかった。まぁ、心の声が漏れてるからあんまり意味は無いけど…いや、最近はブロック出来てるはず…
「あー、実はな、戦技が一撃かつ超火力の極み、みたいな技があるんだよ、二つだけ」
『今代の。それは「だけ」って言わねぇぞ』
名前は《終々》と《音狩》って名前なんだが…
「恥ずかしい事に、この戦技は両方連戦技と全く逆のアプローチから完成した戦技でな」
つまり何が言いたかったかと言うと──
「俺が幼心に頑張った新技開発は、全くの無駄だったってオチだ」
この事を昔ナナキに言ったら、話の前半で真顔をされて、中盤で笑われて、最後にもう一度真顔になられた。
多分、今もシャルは同じ顔してるんだろうな。
亡霊だから顔は見えないけど。
そんな事を思いながら、俺はまた剣を振り始めた。
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