大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

不意打ちと侵入

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とりあえず、覗き込んだ魔族が俺達を(多分)認識する前に仕留め、気絶させた。もちろん魔族二人共。
で、あとは腕、足、手首足首を縛って芋虫にした上で猿轡を噛ませ、目も覆った。その上で魔族を二人共箱の中に入れる。
「……よし、これで暫くは時間が稼げるだろ」
少し短くなってしまった服の裾を引っ張りながら魔族を見下ろす。
手足を縛ったのは俺の髪だが、目や口を覆うのは流石に髪でやるのは無理だ。禿げる。
周りを見てみると、見たこともない硬そうな鉱石で出来た部屋。継ぎ目もないと言うことはどういう事なのだろうか。
そして、どうも似たような箱が沢山あると言うことは、ここは倉庫か何かなのだろう。この二人はその見回りかなにかなのだろうか。
「貴様、魔族を殺しはしないのか?」
周りを分析していると、不思議そうにシステナが聞いて来た。
「あ?今殺しちゃ不味いしな。俺がここに来たのは、一人でこの空中都市を墜しに来た訳じゃない」
「仲間を助けに来たのであろう?ならいっそ、この都市を墜してしまえばいいのではないか?」
なんという馬鹿な理論。それが出来りゃあ先輩勇者様がとっくの昔に戦争を終わらせてるだろうよ。
「俺一人じゃ魔族の都市を落とすのは実力的にも無理だよ。途中で捕まって死ぬのがオチだ」
死んじゃ意味がない。何事も命があってこその話だしな。
「は。《勇者》は死ぬまで戦うのが存在意義であり、役目であろう?特に機人なき今、貴様ら《勇者》の目的は魔族一点に絞られた。今も貴様の証は、そこの魔族を殺したくてたまらないのではないか?」
「別に?ほら、ゆっくりしてる時間も勿体無い。さっさといくぞ」
「なっ!?」
……?なんか変なこと言ったっけ?
と、思ってから遅れて思い出す。
「…あぁ、言ってなかったっけ?どうも《勇者》って存在にも長年使い回されててガタが来てるらしくってさ。俺の代になって、そう言った反応が薄くなってきてるらしいんだよ」
「そんな事が……?」
これには神サマもびっくりだったらしい。そう言って黙りこくってしまった。
「…ま、いいか。マキナ、もう一回逆探知だ」
『了解しました』
ここならさっきより距離は近い。消費する魔力もずっと少なくなるだろう。
親指を軽く噛み切り、血の滴る親指をぺたりと腰の鎚にくっつける。
そこからずっ、と力が抜けるような感覚。これが魔力を吸われる感覚か。嫌なものだ。
一秒か二秒でそれも終わり、マキナが『完了しました』と言う。
『ここから・直線距離八百メートル・北です』
「一キロ弱か…」
その間、魔族にバレること無く、目的地に着かなくてはならない。それも神サマお荷物を抱えて。
それでも行くしかない、か。
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