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本編
二つ名激突と二人の勇者2
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速くて堅実。
ウィルと戦ってみた印象がそれだ。
いくら攻めても盾で弾かれ、僅かな隙を突いて剣が身体を抉りにかかる。
戦い始めてかれこれ二十分ほど経つが、一度も有効打を入れられないどころか掠りさえしない。
そして笑えないことに、向こうの息は全く上がっていない。これぐらいでは疲労も感じないということだろうか。
「うーん、攻めれないな。隙がこれまで見た誰よりも少ないや。流石《超器用》のスキルを持ってるだけの事はあるね」
『そりゃどうも!』
叫んで踏み込む。
真っ向から縦に一撃、脳天から股下までぶった斬る勢いで振られた銀剣を、ウィルが難なく盾で防ぐ。
「痛った!とんでもない威力だ。これ僕じゃなかったら大怪我だ」
『折れてくれてもいいんだぜ?身体も勝負も』
「それはごめん被るよ。最後ぐらいカッコよく決めたいじゃないか」
銀剣を斜め下へ滑らせるように流し、前へ若干重心が落ちた瞬間に踏み込むウィル。
「、っ!」
ウィルと戦い始めて最初の有効打はウィルから俺へ、胸の装甲を引き裂く一撃。胸を浅く斬るが、それ以外は問題ない。ダメージも皆無だ。
それより。
「やられた」
その声には僅かに苦悶の声が混じっていた。
肘に装備したままの金剣が半分だけ跳ね上がり、ウィルの足を深く切りつけていたのだ。
たまらず膝をつき、手を床につけるウィル。
この傷の深さでは恐らく戦闘続行は無理だろう。
流れる大量の血、量からして、もしかしたら大きな血管を傷つけてしまったかもしれない。今すぐ救護班を呼ばないと。
なんとも呆気ない幕切れだが、少しホッとして声をかける。
『これで終わりだな。足が負傷してちゃもう無理だろ?』
救護班に終わった事を伝えようと、手を挙げて呼ぼうかとしたら、兜の右頬の位置が吹き飛んだ。
『っ!?』
遅れてつぅ、と垂れる血。当然致命傷ではないが、もしこれが直撃していたらと思うとゾッとする。
「まだ終わってないよ」
『馬鹿、これ以上やったら失血でぶっ倒れ──』
言葉が続かなかった。
『なっ…血が止まって…』
シャルも唖然とする。
「まだ、終わってないよ」
ウィルが何事も無かったかのように立ち上がり、同じ言葉を繰り返した。
ついさっきまで太腿から溢れるように出ていた血はピタリと止まり、痛みすら消えたのか苦しんでいた顔は消え失せ、いつもの凛とした表情で剣と盾を構えたウィル。
「不意打ちか、僕、そういうのはあんまり考えないから反応出来なかったよ。騎士ってついてるのに結構えげつないことするね」
『……………スキルか?』
小さく呟いたつもりの一言は、風通しの良くなった、兜からするりと抜け出し、ウィルの耳に届いたらしい。
「それは教えられないね。でも──僕はまだまだ元気だよ」
そう言った直後、ウィルが動いた。
肩の鎧が吹き飛び、遅れて痛みが喚く。
「さ、構えて」
ウィルと戦ってみた印象がそれだ。
いくら攻めても盾で弾かれ、僅かな隙を突いて剣が身体を抉りにかかる。
戦い始めてかれこれ二十分ほど経つが、一度も有効打を入れられないどころか掠りさえしない。
そして笑えないことに、向こうの息は全く上がっていない。これぐらいでは疲労も感じないということだろうか。
「うーん、攻めれないな。隙がこれまで見た誰よりも少ないや。流石《超器用》のスキルを持ってるだけの事はあるね」
『そりゃどうも!』
叫んで踏み込む。
真っ向から縦に一撃、脳天から股下までぶった斬る勢いで振られた銀剣を、ウィルが難なく盾で防ぐ。
「痛った!とんでもない威力だ。これ僕じゃなかったら大怪我だ」
『折れてくれてもいいんだぜ?身体も勝負も』
「それはごめん被るよ。最後ぐらいカッコよく決めたいじゃないか」
銀剣を斜め下へ滑らせるように流し、前へ若干重心が落ちた瞬間に踏み込むウィル。
「、っ!」
ウィルと戦い始めて最初の有効打はウィルから俺へ、胸の装甲を引き裂く一撃。胸を浅く斬るが、それ以外は問題ない。ダメージも皆無だ。
それより。
「やられた」
その声には僅かに苦悶の声が混じっていた。
肘に装備したままの金剣が半分だけ跳ね上がり、ウィルの足を深く切りつけていたのだ。
たまらず膝をつき、手を床につけるウィル。
この傷の深さでは恐らく戦闘続行は無理だろう。
流れる大量の血、量からして、もしかしたら大きな血管を傷つけてしまったかもしれない。今すぐ救護班を呼ばないと。
なんとも呆気ない幕切れだが、少しホッとして声をかける。
『これで終わりだな。足が負傷してちゃもう無理だろ?』
救護班に終わった事を伝えようと、手を挙げて呼ぼうかとしたら、兜の右頬の位置が吹き飛んだ。
『っ!?』
遅れてつぅ、と垂れる血。当然致命傷ではないが、もしこれが直撃していたらと思うとゾッとする。
「まだ終わってないよ」
『馬鹿、これ以上やったら失血でぶっ倒れ──』
言葉が続かなかった。
『なっ…血が止まって…』
シャルも唖然とする。
「まだ、終わってないよ」
ウィルが何事も無かったかのように立ち上がり、同じ言葉を繰り返した。
ついさっきまで太腿から溢れるように出ていた血はピタリと止まり、痛みすら消えたのか苦しんでいた顔は消え失せ、いつもの凛とした表情で剣と盾を構えたウィル。
「不意打ちか、僕、そういうのはあんまり考えないから反応出来なかったよ。騎士ってついてるのに結構えげつないことするね」
『……………スキルか?』
小さく呟いたつもりの一言は、風通しの良くなった、兜からするりと抜け出し、ウィルの耳に届いたらしい。
「それは教えられないね。でも──僕はまだまだ元気だよ」
そう言った直後、ウィルが動いた。
肩の鎧が吹き飛び、遅れて痛みが喚く。
「さ、構えて」
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