大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

本編

寮と鍵戦争

結果、というかオチというか。
寮ってウチの学校、一個しかなかったのね。
ラウクムが言ってた寮が女子寮だと思って探し回って聞きまわってみたけど、みんながみんな同じところ言うからその度に切れそうになった。
ラウクム、そして聞いて回った人達、ゴメンナサイ。
それはさておき、寮に入ると寮の管理人らしきオバチャンが鍵を渡してきた。
無口で無愛想だけど、なんかそれが良い感じの人だったなぁ。
さて、どんな部屋かと覗いてみれば…。
結構広くていい部屋だな。家具もある程度ついてるし、ベッドもデカイ。しかも、なんか所々に魔法を固定化する、めちゃくちゃ高度な術式書いてある。
多分防音とか強化系だと思う。 
よっぽどドタバタしても大丈夫そうかな。
さて、晩飯はいつごろになるかな、と部屋に張り出してあった紙を眺めてると、ノック音。
はて、誰だろ？ラウクムくんか、アーネか、オードラル＆クードラル先生じゃないと自分、誰が誰かわからんぞ。
そう思いながら扉を開いてみれば、いたのはラウクムくん。
ちょうどいい。人の性別についてしっかり理解してもらおうかと思ったが、ラウクムくんがすごく真面目な顔をして手招きしてる。
そのまま寮を出て、なにやら馬鹿でかい建物の中に来た。
…まさか果し状とかないよな…何もしてないし…。
そう思ってたら、他にもクラスメイトがほぼ勢ぞろい。
というか、その数倍いるんだけど。
「何事？これ？」
ラウクムくんに訊いてみた。
「今から始まるのは…これから一年間をどんな部屋で過ごすかの死闘だ…」
？訳分からんな。
「ほら、寮って男女別になってないだろ？でもって、鍵って渡された後、その人にどうするか、一年間返却するまで完全に委ねられるんだよ」
ふむふむ。
「で、それを賭けての全学年ごちゃまぜの死闘をするんだよ」
「…もしかしてラウクムって旧一年？」
流石に色々と詳しすぎるだろ。
「わかった？新一年の一位は旧一年の所へ。逆に旧一年のビリは新一年の所へ流されるんだよ。これ、秘密な」
なるほどね。
てことは先生に言った受験番号とかは適当か。
なんとも手の込んだことを…。
「で、レィアさんの部屋番号は？」
「二十四番だけど？」
「…やっぱりそうか…上から三番目の所じゃないか…」
「一番いいところってどこなの？」
当然、自分も一番を取りたいしね。
「いいところは十五番。だけど、一番とかはみんな狙わないし、狙えない。下手に最初に取ると、あとから強い人にボコボコにやられるし、後から取ろうとしても返り討ちに遭うからね…だから、狙い目は大体上から三から五番目ぐらいかな。今年はまだどこも始まってないけど」
このままラウクムくんの解説を聞いていくと、ルールは以下の通り

・鍵を賭けて戦うが、挑戦は同じ人には一度のみ
・一人最大三回まで挑戦可能だが、一度負けるとその時点で挑戦権を失う
・挑戦は必ず受けなければいけない
・ルールは基本、決闘と同じとする
・必ず一回は誰かと戦う

ぐらいかな。
ちなみに、上記に反した場合は他の観客全員からタコ殴りに遭うそうな。
なかなか恐いな。
ついでに、この決闘の結果やら、戦闘の様子を先生達が記録して、今後に役立たせるらしいから黙認してるっぽい。
だいぶおおっぴらにやってるけど、そういうことだったのね。
「さぁ！今年も新入生が入り、少し前に数人の卒業生と、数十人の退学生が出た！」
誰だろ、この宣言してる人。壇上で地声で叫んでるんだが。
というか、卒業生と退学生の数が逆だと思いたいんだが。
「それでは、十五番、五十二番、二十四番、八番、九十九番の鍵を持っているものはこちらに！」
え、行かないとマズイの？
そんな視線をラウクムくんに送ってみたら、絶対行けよ？みたいな眼光が飛んできた。
はいはい、わかりましたよ…。
連れ出される時に持ってくるように言われて持ってきたけど、鍵ってこういうことに使うのね…。
壇上に登り、少し高い視線からみんなを見下ろす。
みんなの目のなかにあるのは、誰が一番倒しやすそうか、ということを選別するものだった。
「それでは！みんな！顔は覚えたな！彼、彼女がこの一年を快適に過ごすための、文字通り鍵キーだ！ここの五人の彼らは頑張って死守しきってくれ！もっとも、私はそんな人を一人も知らないがね！他にも、トップファイブには及ばないものの、上質な部屋はこの表の通りだ！持っている者は宣言すれば優先的に彼、彼女達に戦いを挑める！もちろん、この表の者と戦っても構わない！」
では、健闘を祈る！
と、司会者風の誰かが叫んで、壇上から飛び降りると同時に。
誰かに足を引っ張られ、凄まじい勢いで壇上から引きずり下ろされた。