大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば

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本編

中身と機嫌

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取り敢えず開いたバックの中を見た瞬間、恐らくヒトの限界を超えた速度で俺はバックを閉め直した。
「………。」
『………。』
思わず黙り合う俺達。
シャルさんよ、今のって。
『………そりゃ。見間違いじゃなけりゃ』
恐らく今、鏡を持ってきたら俺の顔は過去最高に嫌な顔をしているだろう。
『ほっとくのか?』
後が怖いから今片付ける。
クソデカいため息を一つ吐く。じゃなきゃやってられん。
覚悟を決めてもう一度バッグを開くと、金の髪に白いワンピースを着た少女が、両膝を抱くようにして丸まり、中で寝ていた。
今は閉じているが、目を開けば真っ青な蒼の瞳がこちらを見返してくるのだろう。
「………システナ。何でこんなところにいやがる」
呼びかけるが向こうは無視。
『寝てんじゃねぇの?』
いや、バッグごと投げられたりしているのに寝ているのは流石に無いだろう…と思っていたら、よくよく見るとシステナの身体の周りを薄い白い膜が繭のように覆っている。
『……結界か?』
じゃないか?どんな効力があるか知らんが。ありそうなのは騒音を消したり衝撃を消したりって所か。
繭を触ってみると柔らかく沈む。迎撃したりはしない、か…。
さらに押し込むと、パチリと静電気のようなものが走ると同時に、指先が少し貫通した。
「おっ」
この程度なら問題は無い。そのままズブズブと押し込み、左手首の少し上あたりまで入れた所でシステナの顔に手が届いた。
「おいシステナ、ちょっと起きやがれ」
そう言ってペチペチと顔を叩く。うわクソ、よだれが…こいつのワンピースで拭いときゃいいか。
しかし中々起きないな。この程度では起きないというのなら…ふむ。
ベタに落書きでもしてやろうかと思ったが、そんな事が後でバレたら酷い目に遭わされるのは確実。こっちの方がいいだろう。
そう思ってデコピンの構え。ただし髪で補強した上での、必殺デコピンだが。
それを無防備な額に狙いを定め、渾身の一撃を叩き込む。
手応えはあった。音がないので微妙だが、まぁ確実にイイのが入った。
その証拠に、システナが非常に痛そうなリアクションと共に起きる。何やら口元が動いているという事は、文句でも言っているのだろうか。膜のせいか全く聞こえないが。
身体を起こし、目を釣り上げて何やら凄い剣幕で何かを言っているが、やはり全く聞こえない。
システナもそれに気づいたのだろう、手を振ると、起きたシステナに合わせて伸びていた膜が跡形もなく消える。
「貴様ッ!!余の安眠を邪魔するとは何事かッ!!」
「黙れ害悪神。テメェ俺とシエルの荷物をどこにやった」
「あぁ、これの中にあった物か?安心せい。寮のオバチャン?とやらにすべて預けてきた」
ふざけんなと言いたい。お前のせいで俺とシエルの服が一切なくなった。あぁ、シエルはアーネの家にあるんだったな。
ともかく。
「なんで付いてきやがった」
するとシステナの表情が一気に渋くなる。と言うか怒ってるな。
「貴様、契約を忘れておるな?」
契約?
『……ほら、結界の外で初めてコイツと会った時……』
んー……んー?あー。なんか…あったような無かったような無かったことにしたかったような。
「貴様の傷を癒す代わりに、余を聖女の元へ連れていくという契約を交わしたではないか」
…そんな内容だっけ?覚えてねぇなぁ。
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