異世界で俺はチーター

田中 歩

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{第八十九話} 空飛ぶ車

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ディーラーのネラを相手に、カジノゲームを一通り姫様と楽しんでいる。
ふと、腕時計に目をやると、長針が「9」を指していた。
「マズい、深夜徘徊になる!」
未成年でカジノに入っている時点で「マズい」を通り越して「アウト」だが。
おじさんも時計を確認し、ネラはゲームを終わらせる方向へと切り替えた。
ゲームが終わった現在の手持ちコインは、オレが「120万ギル」で姫様は「1207万ギル」に換金した。
オレは小さな金額で勝ったり負けたりしていたが、姫様は唐突に大金を高倍率な所へ賭けると何故かすべて当たる。
一見適当に見えるが、何か考えがあるのあろう。
いや、もしかしたら本当に適当なのかもしれない。
コインをオレも暇様も換金はしたが、今回の目的はカジノはどういった所なのか知るといった趣旨の社会勉強が目的であって、お金儲けが目的ではない。
もとでも自分のサイフからではなく、おじさんからでこれを貰うわけにもいかない。
ただでさえ、オレのサイフの中身はすべておじさんから貰ったお金なのに、さらに貰おうとは思わない。
その結果、オレと姫様は換金はしたものの、お金をおじさんに返した。
時間も遅く、外も暗くなってきている。
バラスクとしてはこれからなのだろが、オレ達からすれば帰る時間だ。
帰ろうと支度をしていると、おじさんが話しかけてきた。
「悪いが、GOSを一時的に返してくれないか。少し調整しないといけない所があってな」
「別にいいけど」
右手首の辺りを軽く触ると、それまで肌と一体化していたリング状のGOSが出てきた。
そのリングを軽く引っ張ると、GOSはゴムの様に伸び手首から外せるサイズになった。
おじさんにGOSを渡し、いつの間にかスーツ姿に着替えたネラと一緒に姫様を宮殿まで送り届け、オレも自室に帰った。
おじさんはなにやらやる事があるらしく、今日は帰ってこないらしい。
自室に帰ったオレはスーツを脱ぎ、風呂で今日の汗を流して疲れを癒し、ベットに飛び込んで眠った。

 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 

翌朝目が覚めると、何時も冷静沈着なネラが慌てていた。
久しぶりに予定の無い朝で、ゆっくり起きてすがすがしい朝を満喫しようと思っていたが、そうはいかないようだ。
さすが異世界と言った感じか。
異世界転生する主人公を羨ましいと思っていた時期もあったが、今は違う。
朝から忙しく騒がしい日常に、嫌気が差す日もそう遠くないだろう。
取り合えず、ベットから起き上がり、メダネをかけ腕時計を付け、スーツに着替えた。
こうも毎日繰り返していると、スーツを着るのもなれた物で、ネクタイをつけるのもお手の物だ。
中学や高校の制服の様な存在にスーツがなりつつある。
身の回りの支度を一通り終え、少し慌てながらどこかへ連絡しているネラに話しかけた。
「どうかしたのか、ネラ。朝からそんなに慌てて、ネラらしくも無い」
「あ、マスターおはようございます」
どうやらネラは、起きて支度までしたオレに話しかけられるまで気づかなかったらしい。
ネラをそれほどまでにさせるその理由がオレはとても気になった。
「実は、京一様の所在が分からないのです。本来であれば、京一様から発っせられる生体反応で大体の位置が把握出来るのですが、今は一切反応がありません。地下深くに潜ると反応が薄れるといったことはあるのですが、さすがに反応が無くなると言うのは考えられません。一つあるとすれば...」
ネラは言葉を詰まらせてしまった。
言わなくてもそこから先の事は想像がつく。
生体反応が消えた理由はそれぐらいしかなが、おじさんに限ってそんな事はありえるのだろうか。
「幸いにも、京一様から魔力供給を受けているネイにはいつも通り魔力が供給されているので、最悪な場合は今の所ありえません」
「そうか。だが、そうなるとおじさんは何処に居るんだ?他に調べる方法は無いのか?」
「あるにはあるのですが」
渋るネラにオレは更に問い詰めた。
「京一様にこの事は秘密にしろと言われています。私の一存ではなんとも」
「オレが許可する、非常事態だ」
「分かりました、付いてきてください」
ネラについて行くと、一階の何も無い壁の前で止まった。
その壁にネラが手を当てると、壁に線が入り開き、そのさきに階段が現れた。
階段を降り進んだその先には、両サイドに大きなファンが置かれた部屋に一台の車が止まっていた。
最近の車は丸みを帯びていっているが、この場に泊まっている車は角ばった形のボディーだ。
見た目も一昔前のスポーツカーと言ったところで、特にこれといった特徴はなく、いたって普通の車だ。
しかし、見たことの無い車だ。
おじさんがオリジナルで作った物なのかもしれない。
「この車は操縦方法が少し特殊なので、私が運転します」
オレが運転席側に歩いていくと、ネラに止められてしまった。
少し運転してみたい気持ちもあったが、なれない車を運転して事故を起こす位ならネラに運転を任せた方が良いだろう。
「少しGが掛かるので、覚悟しておいてください」
座席がバケットシートになっている時点で、そういう車なのかとは思っていたが、後ろからチャージ音のような音が聞こえる。
目の前に蛍光灯で照らされた通路が現れた。
その通路はどこまでも続いており、目視で終わりは見えない。
この通路は何処に続いているのだろうかと思った次の瞬間、爆音とともに車がとてつもない加速で走り出した。
その加速により、前からかかるGでオレはバッケトシートに押さえつけられた。
どれほどの速度が出ているのかと、車のメーターを見るが、完全に針が振り切っていて正確な数字が分からない。
そこから分かることがあるとすれば、240km以上の速度で走っていると言う事だ。
緩やかな坂を上がり、地上に出た。
しかし、ここでおかしな状況が一つあり、緩やかな坂の角度のまま上昇している。
窓から顔を出しタイヤの辺りを見ると、かの有名なタイムマシーンに改造された車の様に、タイヤが内側を向いていた。
「あ、コレって。そういう...」
「はい。京一様が作った、空飛ぶ車です」
おじさんが作った空飛ぶ車に乗り、何処かへ向かっている。
何処へ連れて行かれるやら、今更何処へ連れて行かれようと驚く事はもう無いだろう。
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