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遥か遠い国で

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美味しいコーヒーをいただきながら、アデルが言った。


『そういえば、グレースホテル東京に、日本の作家の工藤佑先生が宿泊されてますよね』


その名前に、なぜかドキッとした。


『え?どうしてそれを?』


私は尋ねた。


『日本の友人が、工藤先生の知り合いなんです。以前、日本に行った時にたまたまお会いして…それから、先生の作品の大ファンになりました』


そうだったんだ…


すごい偶然だと思った。


『工藤様の作品はとても素晴らしいですよね。私もミステリー好きなんで、いつも新作を楽しみにしてるんです』


『知らなかったな。一花がミステリー好きだったなんて』


絢斗が言った。


『昔からミステリー小説は良く読んでましたから。工藤様の作品は、アイデアに溢れてて、読んでいてどんどん引き込まれていくんです。だから、いつも一気読みしちゃいます』


『私も同じです。また工藤先生にお会いしたいです。作品も素晴らしいですが、あんなに素敵な作家さん、フランスにはいません。優しくて、カッコよくて、セクシーで。先生には彼女がいるのかしら?前にお聞きしたら、いないって言ってましたから。あんなに素敵なのに、どうしてかなと思ってたんです。もし私が結婚してなかったら、立候補したいくらいです』


アデルが微笑んだ。


『確かに工藤様は素敵な男性です。同性の私からしてもそう思います。あの色気は…男性からしても魅力的ですね』


絢斗…


工藤様のこと、そんな風に思ってたの?


『しばらくの間、工藤様はグレースホテル東京に滞在されます。ですから、またいつでもお越し下さい。歓迎します。では、今夜はこのへんで…いろいろありがとうございます。急にお誘いして申し訳ありませんでした』


丁寧に言って、おじぎをする絢斗。


『とんでもありません。グレースホテル東京の総支配人と可愛いコンシェルジュさんとお話し出来て本当に嬉しかったです。また、ぜひ日本でお会いしましょう』
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