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9 お客達 Ⅱ
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※死体の描写があります。
建物の一室に奇妙な部屋があることに気が付いていた。
意味のない窪みや突起があり妙に壁が厚い。
ダンジョンにありがちな小部屋の秘密だ。
多分当時ここには仕掛けを隠す家具などが配置されていただろう。
こういう仕組みはよく見かける。
宝探しの予感だ。ハンターの醍醐味だ。
壁に穴が開いていて、試しに剣を差し込んで探ってみる。
思ってもみない場所が動き、私は地下のダンジョンの入り口を発見した。
そして私はこの建物の秘密に気が付いた。
下には巨大な遺跡が眠っていた。
「捨てられたダンジョン?」
地下は大きな空間があり沢山の古文書、動かない装置?があった。
何かの研究所だろうか?
今はホコリが積もっているが、
拭ってみれば、ガラス容器は驚くほどに薄くて透明だ。
用途素材が分からない物が多い。
私は足をやられていたから、深くは潜らなかった。
じっくり時間を掛けなければ、このダンジョンは計り知れない。
あれ程の目に会って来たというのに、
いや、あれ程の目にあったからこそ、私は我知らず微笑んでいた。
私が期待していた金銀宝石のお宝はなかった。
だが溢れるほどの書籍の中で
見つけた当時の地図は詳細なものだった。
素晴らしい。蜃気楼なんてものよりずっと確率があがる。
ずっと東に王宮があったようだ。今は谷になっている荒野だ。
既に荒されているかもしれない。私も含めてハンターは金の匂いに敏感だ。
ココよりずっと掘り出し物は多いだろう。
けれど、世界の秘密が眠っているかもしれない。
歴史の秘密を見つけたかもしれない。
トリアの回顧録
◆ ◆ ◆
朝の騒動
どんな妖魔が居る森も、朝は爽やかに思える。
夜は、かん高い悲鳴と、低い威嚇のうなり声が、さえずりに変わっている。
鮮やかな蓮や睡蓮が次々に開き、その向こうには金糸の気根を垂らす美しい樹木が
朝日が当たるのを静かに待っている。
大きな白い花が一斉に開く様は息をのむほど劇的だ。
白い花は時間によって微妙に色を変えるらしい。
朝露が溜まって水晶の輝きだ。空気を浄化するような甘酸っぱい香りが強くなる。
夜明けの光が差すとサッと虹が出る。木の花、金色の気根、そこに七色の虹がかかり神々しいくらいだった。
これは、見事、まさに見事、甘やかな空気と風となり。
何かの叙事詩に使える。神々の住む場所や、桃源郷かアンヌヴン-----と、
ヴィンラックが手帳に思いつく言葉を書き付けていると、階下から、悲鳴が聞こえてきた。
「?」
なんだ?なんだろう…チ、無粋だな。何かの詩ができそうだったのに。
ただならぬ悲鳴にヴィンラックは様子をみるため、とりあえず上着をとった。
ざわめきがどんどん大きくなる。ため息や不快な雑音が広まっていく。
「どうしたんです?いったい、何が?」
一階に降りていくと、昨日の客が固まっていた。
集まった客の目線、その中心は激しく傷痕のある死体だった。
最初は人形のように見えた。
だが、この匂いときたら!
ヴィンラックは、予期出来なかった光景をマトモに見てしまった。
死体からはみ出した膨れた肉が、舌だと分かるのに暫くかかった。眼は真っ白で虫が這いまわっている。
頭から消えてくれるだろうか?慌てて目を瞑り、こみ上げてくる固まりを必死で押さえこんだ。
吐きそうた。当分眠れない。最低の朝だ。
既に役人のジャクールとティシュカが屍体を見聞している。
二人は小声で話し合っていて、渋面だ。特にティシュカはイライラしているようだった。
「邪魔だぞ。」
ティシュカが短く命令する。
「後で、ここに居る全員に事情を聞きに行く。それまで、ここから出ないように」
ジャクールもトリアに、誰も出すな。と念を押した。
後から来たアードリアが、真っ白な顔色で崩れおちる。
「ドリー!」
慌てて鍛冶屋が抱き留めた。
「しっかりしろ!…と、とにかく、そいつに何かを掛けてやってくれ、トリア、気付け薬は?」
「勿論、あります」
ファイサルーが妻を介抱しながら言うと、
ディマ・スが、震える手で丁度傍にあった布地を掛けようと広げた。
「ちょっと待って。それは、うちのシーツじゃないの、なんで染みだらけなの?
此処までこのシーツにくるんでたって事なの?
で、ここまで引きづって引きづって、放り出したっていうの?」
トリアがイヤな顔をした。
「トリア、今はそんな事を言ってる場合か?後にしてくれよ」
ファイサルーが、妻の容態を見ながら、取りなす。
「こんな光景を晒しておくのはよくない」
「おっしゃる通りですな」
レノウの顔色は血の気がない
「サリアンが一生懸命刺繍してくれたのに」
「あ、あ、良いんです。また、刺繍くらいいたしますから。
それに、この染みは手遅れです。…あの、倒れた奥様にこれを」
眉をしかめるトリアの袖を引いて、サリアンがおずおずと水をさしだした。
死体にシーツがかけられると、皆は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「はあーっ、この気の毒な人が、誰で、なぜここで死んでるのか、
…とにかく、此処で朝食は無理があるようね」
トリアは悲しげにシーツの膨らみに手を合わせた。
「…いや、ここ以外でも朝食は無理がありますわ。私は…ちょっと失礼」
真っ白な顔色でレノウはトイレに向かった。
「吐き気も落ち着く薬草茶をお持ちしますよ」
トリアが背中に声をかける。
「私も薬草茶とやらをお願いします」
吟遊詩人ヴィンラックが、くぐもった声を出すと、殆ど全員が手を上げた。
◆ ◆ ◆
「屍体は指が全部折れてるそうですぞ、子供かも知れないとか」
二階にあるホールで薬草茶を飲みながらレノウが汗を拭いていた。
「香りは実にいいですが、味の方はいただけませんなあ」
そう言いながら、もう一杯と注ぐ。
「渋みが強いですね。鍛冶屋ご夫婦は?」
「奥さんは大丈夫。直ぐに良くなりましたよ。ただ、ヒステリーを起こしとるようですな」
「来るんじゃなかった、貴方のせいで、せっかくの旅行だったのに」
「死体が出てくるのまで俺のせいだってのかよっ」
「そんな事いってないわ、酷い旅行になって最悪って言ってるの。
こんな時期に旅行する貴方が悪いのよ」
壁越しに嫌でも聞こえる喧嘩に、憂鬱な顔を崩してレノウは微笑んだ。
「やつ当たりの相手がいるのは、少々羨ましいですな」
「当たられる方は溜まったもんじゃないですよ?」
ヴィンラックも笑う。
「しかし、役人がいたのは良かったです。我々だけでは、何をどうして良いやら」
「いや、返って面倒ですわ。誰もいなかったら、あの死体ならあっという間に妖魔が片付けますからな」
レノウのつぶやきに、手にしたお茶をうっかり零しそうになる。
「冗談でしょう?」
「察するに…あの屍体は殺されたものですかな?刀傷が沢山ついておりましたしな」
「それは。…ええ、それも亡くなって3日程は立っている様子でしたね」
レノウは身震いをして、またお茶のおかわりをした。
「役人は立場上、我々を取り調べしない訳にはいかんのです。面倒な事になりましたわ」
その時、仏頂面の鍛冶屋のファイサルーが部屋から出てきた。
ヴィンラックは渋面の鍛冶屋に声をかけた。
「落ち着く薬草のお茶がありますよ」
「ああ、」
ファイサルーの固い顔が、やや明るくなった。
「大丈夫ですか?お連れ合いは?」
「追い出された。気付けの酒を飲んでる」
一口、お茶を飲んで、顔をしかめてからファイサルーはどっかり椅子に倒れこむ
「何を言っても、俺の所為なんだと。まあ、好きにすればいいさ。俺はもう知らん」
「屍体の見聞が済んだら、役人が夕べの行動を聞きに来るそうです」
「はあ、俺たち全員酔っ払って、寝てた。としか言えんぞ」
「役人はイライラしてましたよ。政府条約の下調べの報告会が迫っているのに、
ここで足止めされると困ると二人で喧嘩してました」
「ほお、耳ざといですな」
「トリアは?」
「役人とお話中ですわ。我々の素性の下調べと言ったところですかな」
「何も後ろ暗いことなんぞないぞ。俺は」
不機嫌な顔で鍛冶屋は腕を組んだ。
◆ ◆ ◆
「薬草茶のおかわりは?いかがですか?軽くつまめる物などは?」
サリアンがお茶のセットを運んできた。
「ああ、すまん。もう少しお茶を」
受け取る鍛冶屋にサリアンが不安を隠さずに尋ねてくる。
「すみませんが、あの…一見、疱瘡患者のような人を見ませんでしたか?私の父なのですが…」
「え?あの人が?」
「大ヒルの傷を癒す治療中で、あのようになっていましたが、病気ではないです」
「そうですか。お気の毒な事ですな…私は見ていませんが」
「ところで、いつまで我々をココに留め置くかお役人様方は言っとられましたか?」
皆が一番気になる質問にサリアンは首を振った。
「誰かが、死体をあそこに置いたのがわかるまでは、全員外出禁止だそうです」
「まあ、事情が事情だからなあ」
ヴィンラックもため息をついた。
「でも、外部の人間の仕業って事はないのですか?」
サリアンは首を振った。
「死体を担いで見つからずに徒歩でここまでたどり着くことはほとんど無理です。
死臭が妖魔を呼び寄せます。
ここに来る前に沢山の妖魔に襲われて、私の父より悲惨なことになります。
そして死んだらおそらく腐る暇なくあっという間に骨になります。…あの傷は刀傷らしいのです」
「屍体は運び込まれた。と」
顔を顰めていた鍛冶屋は呟いた。
「子供が死ぬ…嫌な事を思い出すぜ。」
「ここ数年前に話題になっていた殺人鬼”指折り”の仕業らしいのです」
サリアンは役人たちの会話を聞いたらしい。ヴィンラックは目を見張り聞き返した。
「え?アレって解決したんじゃなかったのですか?」
「うん、聞いた話じゃ逮捕したが間違いだったらしい。それきり聞かないな」
鍛冶屋も同意する。
「”指折り”の犯行は最近治まってると思っていた。
前は町外れか、人気のない墓地、荒れ野なんかで死体が発見されていた。
ここ数年は報告がなかったが、死体遺棄の場所を変えただけだったかもしれないな」
「恐ろしい事ですな。指を折るとは趣味が悪いですな」
「全くだ、かわいそうに」
下から、ディマ・スが上がって来た。「レノウ様、お呼びでございます」
レノウは大きな体を震わせながら椅子から立ち上がった。
「ああ、神様にご慈悲をお祈りになくてはなりませんな」
「我々全員分頼む」
力無い笑いを返してレノウは階下に降りて行った。
自分の呼吸が荒いのを自覚して、レノウは深呼吸をした。
コレが落ちついて居られようか?
役人は商人レノウの天敵だ。
アヤツめらは痛くない腹を刺して刺して、痛くさせる手腕に長けてる。
失言に、気をつけろ、下手なお追従も止めておけ。理性が信号をだしている。
「さて、それで?」
レノウは、頭を擦りながらセカセカと周りを見回す。
「私は、何の話を致しましょうかな?」
「名前と産まれ、職業、ここに来た目的、だ」
ティシュカが言う。
レノウは緊張で喉が渇く。
「今回はトリアにコレクションの鑑定を頼まれましてな。
謝礼も頂けるそうで。
はぁ、そんな訳でまいりまして」
なんの興味もない顔で役人達は頷いた。
「盗品の売買には、関与した事はあるか?」
レノウは慌てて手を振った。
「滅相もない、あ、…つまり、知りうる限り盗品の扱いは致しません」
盗品関係で潔白な古物商など存在しない。
常識だ。
レノウの扱う品々は、出どころ不明な物が、七割以上だった。
ごまかす為にも、トリアの所に顔をだした。
彼女が何処から掘り出し物を手に入れて来るのかは分からなかったが、
手垢が付いてない事だけは確かだったから。
それに混ぜてあやふやな物を売るのがレノウのやり方だ。
嘘つきだと疑われたら最後、芋づる式だ。あれやこれやが、走馬灯で駆け巡る。
何日か前のみすぼらしい男が持ち込んだ腕輪は、怪しかった。
レノウは、用心深くしゃべった。
早くこの話題から離れたい。
「持ち込まれる商品全ての背景を調べる事は難しいのです。
勿論、盗品届けの御触れはいつも注意を払っております」
「ふむ。つまり、自分が知らないで、盗品を捌いたかも知れない。そう言う事だな?」
「法律を遵守したい。と考えていますが、得てして人間は、不完全なものでしてな」
レノウは流れる汗を拭いた。
役人は唇の端を上げただけだった。
「広間の死体は、子どもか、かなり小柄な男だ、服装はかなり汚れて何日も代えてない。
思うに、路上生活者だ」
「見た顔か?」
「いいえ。」レノウはいささか大げさに首を振った。
「路上生活者は常に万引きに変身しますからな。連中の顔など一々おぼえていられません。
あの手合いは、片っ端から、おい払う事にしてまして」
役人たちは無機質な物を見るような目つきでじっと見てくる。
あの視線は獲物を吟味するような目と同じだ。
「所々に藁が付いている所を見ると、馬屋に居たと思われる。
事実、運んだとみられる台車があった。
昨夜の行動は?」
レノウは、暫く考える。
「夕食を取った後、楽士の曲を楽しみ、広間の展示品を見ていましたな。
部屋から出てきたトリアと少し話して、部屋に戻りましたわ」
「何か気がついた事は?」
「顔中何かぬりたくった男が広間を覗いていましたな。葵斑病のような。
病気が移るかも知れないと不安でしたから、近寄りませなんだ。
部屋に行った後は直ぐに寝てしまいました」
「分かった。行っていい。」
レノウは、ホッとしてドアを開けた。
その、広間を覗いて居た男を呼んでくれ。
背中から追い討ちをかけられ、レノウは、硬直するのが止められなかった。
「ッ…はい、ただいま」
「あれは、怪しいな。典型的なぼったくりの商売人だな。
盗品に関して、叩けば面白いかもしれん」
ジャクールは呟き、ティシュカも無言でうなずいた。
レノウは、体を揺らしながら汗を拭き拭きトリアを探した。足の悪いトリアは二階に行きたがらない。
トリアの事務室に行こうとウロウロしていると、軽食を運んでいる料理人のディマ・スに会った。
「トリアは何処におりますかな?」
ディマ・スは探して参りましょうと、にこやかに応じた。
「あーイヤイヤ、トリアに伝えて貰えばええですわ。
役人さん達が、男を呼んで欲しいそうで。
昨日、男を見たと言ったら…部屋係のお嬢さんのお父さん?ですかな?斑の顔の男ですわ。
その男を呼んで欲しいと」
「かしこまりました」
ディマ・スは頷いた。
「それと、お茶を頂けますかな?」
「すぐお持ち致しましょう」
「やれやれ、死体の放置?とんでもない事になりましたわ。こんな事に付き合う義理はありませんわ。
今回の招きは、切り上げて、引き揚げ時ですわな」
レノウは荷造りの為、セカセカと部屋に向かった。
とんでもない!と考えているのは、誰も同じで
「もう、かえる!」と、お冠の妻をなだめているのは、鍛冶屋ファイサルーだ。
「あの人のせいで、旅行は滅茶苦茶よ」
アードリアはカン高い奇声を上げた。
「俺は止めとけって言ったぞ。
なんで付いてきたんだ?お前の嫌いな虫やら危険な化け物の生息地だ、つって説明したろうが?
まぁ、死体まで出てくるとは思わなかったが」
「トリアが殺したに決まってるわ
嫌がらせよ。私達が子供の事を言った途端、これですもの」
「バカな。嫌がらせに人を殺すわけないだろう」
「だって、トリアは昔の事を恨んでたし、絶対何かしてるに違いない」
またか、と、ファイサルーは思った。
何でも自分への攻撃に受け取る思考がわからない。だが、矛盾を突くと逆上して、手がつけられなくなる。
「帰るのはいいが、尋問をすっぽかすと、犯人だと疑われるぞ。
アードリア、落ち着け。
今俺たちは馬車がなけりゃ、帰れないんだ」
「歩くわよ!」
「妖魔の森をか?馬鹿を言うな。一歩でも出たら、命はないぞ」
彼女は、渋々黙るとベッドに座りクッションを抱えた。
「誰があんなことを。可哀想に」
アードリアは震える声でポツリともらした。
「分からん」
ファイサルーはため息をついた。
「尋問が終わり次第、馬車を出して貰おう。
アードリア、オマエは荷造りでもしとけ。
俺は馬車の事を聞いてくる」
部屋から出た途端に、こちらにやって来るレノウが見えた。
「何かわかったか?」
「さっぱりですな。役人さんとのお話も終わりましたし、私はもう、この辺で帰りますわ」
「ああ、俺達も尋問が終わり次第帰るつもりで、トリアに頼もうと考えてるんだ」
ファイサル―妻に急き立てられ、荷造りを済ませ玄関に行くと、
入り口のドアにレノウが首をかしげて佇んでいた。
「一緒に行けそうですか?トリアはなんと?」
「それが、ドアが開かないのですわ。」
?怪訝に思ってノブを回す。鍵はかかってないのにドアはびくともしない。
「どうなってるんだ?ノブが壊れているのか?」
ファイサルーはちょっと聞いてくると言って、トリアの居るであろう事務室に行った。
そこにはトリアとディマ・ス、役人のティシュカが不安そうに外を眺めていた。
建物の一室に奇妙な部屋があることに気が付いていた。
意味のない窪みや突起があり妙に壁が厚い。
ダンジョンにありがちな小部屋の秘密だ。
多分当時ここには仕掛けを隠す家具などが配置されていただろう。
こういう仕組みはよく見かける。
宝探しの予感だ。ハンターの醍醐味だ。
壁に穴が開いていて、試しに剣を差し込んで探ってみる。
思ってもみない場所が動き、私は地下のダンジョンの入り口を発見した。
そして私はこの建物の秘密に気が付いた。
下には巨大な遺跡が眠っていた。
「捨てられたダンジョン?」
地下は大きな空間があり沢山の古文書、動かない装置?があった。
何かの研究所だろうか?
今はホコリが積もっているが、
拭ってみれば、ガラス容器は驚くほどに薄くて透明だ。
用途素材が分からない物が多い。
私は足をやられていたから、深くは潜らなかった。
じっくり時間を掛けなければ、このダンジョンは計り知れない。
あれ程の目に会って来たというのに、
いや、あれ程の目にあったからこそ、私は我知らず微笑んでいた。
私が期待していた金銀宝石のお宝はなかった。
だが溢れるほどの書籍の中で
見つけた当時の地図は詳細なものだった。
素晴らしい。蜃気楼なんてものよりずっと確率があがる。
ずっと東に王宮があったようだ。今は谷になっている荒野だ。
既に荒されているかもしれない。私も含めてハンターは金の匂いに敏感だ。
ココよりずっと掘り出し物は多いだろう。
けれど、世界の秘密が眠っているかもしれない。
歴史の秘密を見つけたかもしれない。
トリアの回顧録
◆ ◆ ◆
朝の騒動
どんな妖魔が居る森も、朝は爽やかに思える。
夜は、かん高い悲鳴と、低い威嚇のうなり声が、さえずりに変わっている。
鮮やかな蓮や睡蓮が次々に開き、その向こうには金糸の気根を垂らす美しい樹木が
朝日が当たるのを静かに待っている。
大きな白い花が一斉に開く様は息をのむほど劇的だ。
白い花は時間によって微妙に色を変えるらしい。
朝露が溜まって水晶の輝きだ。空気を浄化するような甘酸っぱい香りが強くなる。
夜明けの光が差すとサッと虹が出る。木の花、金色の気根、そこに七色の虹がかかり神々しいくらいだった。
これは、見事、まさに見事、甘やかな空気と風となり。
何かの叙事詩に使える。神々の住む場所や、桃源郷かアンヌヴン-----と、
ヴィンラックが手帳に思いつく言葉を書き付けていると、階下から、悲鳴が聞こえてきた。
「?」
なんだ?なんだろう…チ、無粋だな。何かの詩ができそうだったのに。
ただならぬ悲鳴にヴィンラックは様子をみるため、とりあえず上着をとった。
ざわめきがどんどん大きくなる。ため息や不快な雑音が広まっていく。
「どうしたんです?いったい、何が?」
一階に降りていくと、昨日の客が固まっていた。
集まった客の目線、その中心は激しく傷痕のある死体だった。
最初は人形のように見えた。
だが、この匂いときたら!
ヴィンラックは、予期出来なかった光景をマトモに見てしまった。
死体からはみ出した膨れた肉が、舌だと分かるのに暫くかかった。眼は真っ白で虫が這いまわっている。
頭から消えてくれるだろうか?慌てて目を瞑り、こみ上げてくる固まりを必死で押さえこんだ。
吐きそうた。当分眠れない。最低の朝だ。
既に役人のジャクールとティシュカが屍体を見聞している。
二人は小声で話し合っていて、渋面だ。特にティシュカはイライラしているようだった。
「邪魔だぞ。」
ティシュカが短く命令する。
「後で、ここに居る全員に事情を聞きに行く。それまで、ここから出ないように」
ジャクールもトリアに、誰も出すな。と念を押した。
後から来たアードリアが、真っ白な顔色で崩れおちる。
「ドリー!」
慌てて鍛冶屋が抱き留めた。
「しっかりしろ!…と、とにかく、そいつに何かを掛けてやってくれ、トリア、気付け薬は?」
「勿論、あります」
ファイサルーが妻を介抱しながら言うと、
ディマ・スが、震える手で丁度傍にあった布地を掛けようと広げた。
「ちょっと待って。それは、うちのシーツじゃないの、なんで染みだらけなの?
此処までこのシーツにくるんでたって事なの?
で、ここまで引きづって引きづって、放り出したっていうの?」
トリアがイヤな顔をした。
「トリア、今はそんな事を言ってる場合か?後にしてくれよ」
ファイサルーが、妻の容態を見ながら、取りなす。
「こんな光景を晒しておくのはよくない」
「おっしゃる通りですな」
レノウの顔色は血の気がない
「サリアンが一生懸命刺繍してくれたのに」
「あ、あ、良いんです。また、刺繍くらいいたしますから。
それに、この染みは手遅れです。…あの、倒れた奥様にこれを」
眉をしかめるトリアの袖を引いて、サリアンがおずおずと水をさしだした。
死体にシーツがかけられると、皆は少しずつ落ち着きを取り戻した。
「はあーっ、この気の毒な人が、誰で、なぜここで死んでるのか、
…とにかく、此処で朝食は無理があるようね」
トリアは悲しげにシーツの膨らみに手を合わせた。
「…いや、ここ以外でも朝食は無理がありますわ。私は…ちょっと失礼」
真っ白な顔色でレノウはトイレに向かった。
「吐き気も落ち着く薬草茶をお持ちしますよ」
トリアが背中に声をかける。
「私も薬草茶とやらをお願いします」
吟遊詩人ヴィンラックが、くぐもった声を出すと、殆ど全員が手を上げた。
◆ ◆ ◆
「屍体は指が全部折れてるそうですぞ、子供かも知れないとか」
二階にあるホールで薬草茶を飲みながらレノウが汗を拭いていた。
「香りは実にいいですが、味の方はいただけませんなあ」
そう言いながら、もう一杯と注ぐ。
「渋みが強いですね。鍛冶屋ご夫婦は?」
「奥さんは大丈夫。直ぐに良くなりましたよ。ただ、ヒステリーを起こしとるようですな」
「来るんじゃなかった、貴方のせいで、せっかくの旅行だったのに」
「死体が出てくるのまで俺のせいだってのかよっ」
「そんな事いってないわ、酷い旅行になって最悪って言ってるの。
こんな時期に旅行する貴方が悪いのよ」
壁越しに嫌でも聞こえる喧嘩に、憂鬱な顔を崩してレノウは微笑んだ。
「やつ当たりの相手がいるのは、少々羨ましいですな」
「当たられる方は溜まったもんじゃないですよ?」
ヴィンラックも笑う。
「しかし、役人がいたのは良かったです。我々だけでは、何をどうして良いやら」
「いや、返って面倒ですわ。誰もいなかったら、あの死体ならあっという間に妖魔が片付けますからな」
レノウのつぶやきに、手にしたお茶をうっかり零しそうになる。
「冗談でしょう?」
「察するに…あの屍体は殺されたものですかな?刀傷が沢山ついておりましたしな」
「それは。…ええ、それも亡くなって3日程は立っている様子でしたね」
レノウは身震いをして、またお茶のおかわりをした。
「役人は立場上、我々を取り調べしない訳にはいかんのです。面倒な事になりましたわ」
その時、仏頂面の鍛冶屋のファイサルーが部屋から出てきた。
ヴィンラックは渋面の鍛冶屋に声をかけた。
「落ち着く薬草のお茶がありますよ」
「ああ、」
ファイサルーの固い顔が、やや明るくなった。
「大丈夫ですか?お連れ合いは?」
「追い出された。気付けの酒を飲んでる」
一口、お茶を飲んで、顔をしかめてからファイサルーはどっかり椅子に倒れこむ
「何を言っても、俺の所為なんだと。まあ、好きにすればいいさ。俺はもう知らん」
「屍体の見聞が済んだら、役人が夕べの行動を聞きに来るそうです」
「はあ、俺たち全員酔っ払って、寝てた。としか言えんぞ」
「役人はイライラしてましたよ。政府条約の下調べの報告会が迫っているのに、
ここで足止めされると困ると二人で喧嘩してました」
「ほお、耳ざといですな」
「トリアは?」
「役人とお話中ですわ。我々の素性の下調べと言ったところですかな」
「何も後ろ暗いことなんぞないぞ。俺は」
不機嫌な顔で鍛冶屋は腕を組んだ。
◆ ◆ ◆
「薬草茶のおかわりは?いかがですか?軽くつまめる物などは?」
サリアンがお茶のセットを運んできた。
「ああ、すまん。もう少しお茶を」
受け取る鍛冶屋にサリアンが不安を隠さずに尋ねてくる。
「すみませんが、あの…一見、疱瘡患者のような人を見ませんでしたか?私の父なのですが…」
「え?あの人が?」
「大ヒルの傷を癒す治療中で、あのようになっていましたが、病気ではないです」
「そうですか。お気の毒な事ですな…私は見ていませんが」
「ところで、いつまで我々をココに留め置くかお役人様方は言っとられましたか?」
皆が一番気になる質問にサリアンは首を振った。
「誰かが、死体をあそこに置いたのがわかるまでは、全員外出禁止だそうです」
「まあ、事情が事情だからなあ」
ヴィンラックもため息をついた。
「でも、外部の人間の仕業って事はないのですか?」
サリアンは首を振った。
「死体を担いで見つからずに徒歩でここまでたどり着くことはほとんど無理です。
死臭が妖魔を呼び寄せます。
ここに来る前に沢山の妖魔に襲われて、私の父より悲惨なことになります。
そして死んだらおそらく腐る暇なくあっという間に骨になります。…あの傷は刀傷らしいのです」
「屍体は運び込まれた。と」
顔を顰めていた鍛冶屋は呟いた。
「子供が死ぬ…嫌な事を思い出すぜ。」
「ここ数年前に話題になっていた殺人鬼”指折り”の仕業らしいのです」
サリアンは役人たちの会話を聞いたらしい。ヴィンラックは目を見張り聞き返した。
「え?アレって解決したんじゃなかったのですか?」
「うん、聞いた話じゃ逮捕したが間違いだったらしい。それきり聞かないな」
鍛冶屋も同意する。
「”指折り”の犯行は最近治まってると思っていた。
前は町外れか、人気のない墓地、荒れ野なんかで死体が発見されていた。
ここ数年は報告がなかったが、死体遺棄の場所を変えただけだったかもしれないな」
「恐ろしい事ですな。指を折るとは趣味が悪いですな」
「全くだ、かわいそうに」
下から、ディマ・スが上がって来た。「レノウ様、お呼びでございます」
レノウは大きな体を震わせながら椅子から立ち上がった。
「ああ、神様にご慈悲をお祈りになくてはなりませんな」
「我々全員分頼む」
力無い笑いを返してレノウは階下に降りて行った。
自分の呼吸が荒いのを自覚して、レノウは深呼吸をした。
コレが落ちついて居られようか?
役人は商人レノウの天敵だ。
アヤツめらは痛くない腹を刺して刺して、痛くさせる手腕に長けてる。
失言に、気をつけろ、下手なお追従も止めておけ。理性が信号をだしている。
「さて、それで?」
レノウは、頭を擦りながらセカセカと周りを見回す。
「私は、何の話を致しましょうかな?」
「名前と産まれ、職業、ここに来た目的、だ」
ティシュカが言う。
レノウは緊張で喉が渇く。
「今回はトリアにコレクションの鑑定を頼まれましてな。
謝礼も頂けるそうで。
はぁ、そんな訳でまいりまして」
なんの興味もない顔で役人達は頷いた。
「盗品の売買には、関与した事はあるか?」
レノウは慌てて手を振った。
「滅相もない、あ、…つまり、知りうる限り盗品の扱いは致しません」
盗品関係で潔白な古物商など存在しない。
常識だ。
レノウの扱う品々は、出どころ不明な物が、七割以上だった。
ごまかす為にも、トリアの所に顔をだした。
彼女が何処から掘り出し物を手に入れて来るのかは分からなかったが、
手垢が付いてない事だけは確かだったから。
それに混ぜてあやふやな物を売るのがレノウのやり方だ。
嘘つきだと疑われたら最後、芋づる式だ。あれやこれやが、走馬灯で駆け巡る。
何日か前のみすぼらしい男が持ち込んだ腕輪は、怪しかった。
レノウは、用心深くしゃべった。
早くこの話題から離れたい。
「持ち込まれる商品全ての背景を調べる事は難しいのです。
勿論、盗品届けの御触れはいつも注意を払っております」
「ふむ。つまり、自分が知らないで、盗品を捌いたかも知れない。そう言う事だな?」
「法律を遵守したい。と考えていますが、得てして人間は、不完全なものでしてな」
レノウは流れる汗を拭いた。
役人は唇の端を上げただけだった。
「広間の死体は、子どもか、かなり小柄な男だ、服装はかなり汚れて何日も代えてない。
思うに、路上生活者だ」
「見た顔か?」
「いいえ。」レノウはいささか大げさに首を振った。
「路上生活者は常に万引きに変身しますからな。連中の顔など一々おぼえていられません。
あの手合いは、片っ端から、おい払う事にしてまして」
役人たちは無機質な物を見るような目つきでじっと見てくる。
あの視線は獲物を吟味するような目と同じだ。
「所々に藁が付いている所を見ると、馬屋に居たと思われる。
事実、運んだとみられる台車があった。
昨夜の行動は?」
レノウは、暫く考える。
「夕食を取った後、楽士の曲を楽しみ、広間の展示品を見ていましたな。
部屋から出てきたトリアと少し話して、部屋に戻りましたわ」
「何か気がついた事は?」
「顔中何かぬりたくった男が広間を覗いていましたな。葵斑病のような。
病気が移るかも知れないと不安でしたから、近寄りませなんだ。
部屋に行った後は直ぐに寝てしまいました」
「分かった。行っていい。」
レノウは、ホッとしてドアを開けた。
その、広間を覗いて居た男を呼んでくれ。
背中から追い討ちをかけられ、レノウは、硬直するのが止められなかった。
「ッ…はい、ただいま」
「あれは、怪しいな。典型的なぼったくりの商売人だな。
盗品に関して、叩けば面白いかもしれん」
ジャクールは呟き、ティシュカも無言でうなずいた。
レノウは、体を揺らしながら汗を拭き拭きトリアを探した。足の悪いトリアは二階に行きたがらない。
トリアの事務室に行こうとウロウロしていると、軽食を運んでいる料理人のディマ・スに会った。
「トリアは何処におりますかな?」
ディマ・スは探して参りましょうと、にこやかに応じた。
「あーイヤイヤ、トリアに伝えて貰えばええですわ。
役人さん達が、男を呼んで欲しいそうで。
昨日、男を見たと言ったら…部屋係のお嬢さんのお父さん?ですかな?斑の顔の男ですわ。
その男を呼んで欲しいと」
「かしこまりました」
ディマ・スは頷いた。
「それと、お茶を頂けますかな?」
「すぐお持ち致しましょう」
「やれやれ、死体の放置?とんでもない事になりましたわ。こんな事に付き合う義理はありませんわ。
今回の招きは、切り上げて、引き揚げ時ですわな」
レノウは荷造りの為、セカセカと部屋に向かった。
とんでもない!と考えているのは、誰も同じで
「もう、かえる!」と、お冠の妻をなだめているのは、鍛冶屋ファイサルーだ。
「あの人のせいで、旅行は滅茶苦茶よ」
アードリアはカン高い奇声を上げた。
「俺は止めとけって言ったぞ。
なんで付いてきたんだ?お前の嫌いな虫やら危険な化け物の生息地だ、つって説明したろうが?
まぁ、死体まで出てくるとは思わなかったが」
「トリアが殺したに決まってるわ
嫌がらせよ。私達が子供の事を言った途端、これですもの」
「バカな。嫌がらせに人を殺すわけないだろう」
「だって、トリアは昔の事を恨んでたし、絶対何かしてるに違いない」
またか、と、ファイサルーは思った。
何でも自分への攻撃に受け取る思考がわからない。だが、矛盾を突くと逆上して、手がつけられなくなる。
「帰るのはいいが、尋問をすっぽかすと、犯人だと疑われるぞ。
アードリア、落ち着け。
今俺たちは馬車がなけりゃ、帰れないんだ」
「歩くわよ!」
「妖魔の森をか?馬鹿を言うな。一歩でも出たら、命はないぞ」
彼女は、渋々黙るとベッドに座りクッションを抱えた。
「誰があんなことを。可哀想に」
アードリアは震える声でポツリともらした。
「分からん」
ファイサルーはため息をついた。
「尋問が終わり次第、馬車を出して貰おう。
アードリア、オマエは荷造りでもしとけ。
俺は馬車の事を聞いてくる」
部屋から出た途端に、こちらにやって来るレノウが見えた。
「何かわかったか?」
「さっぱりですな。役人さんとのお話も終わりましたし、私はもう、この辺で帰りますわ」
「ああ、俺達も尋問が終わり次第帰るつもりで、トリアに頼もうと考えてるんだ」
ファイサル―妻に急き立てられ、荷造りを済ませ玄関に行くと、
入り口のドアにレノウが首をかしげて佇んでいた。
「一緒に行けそうですか?トリアはなんと?」
「それが、ドアが開かないのですわ。」
?怪訝に思ってノブを回す。鍵はかかってないのにドアはびくともしない。
「どうなってるんだ?ノブが壊れているのか?」
ファイサルーはちょっと聞いてくると言って、トリアの居るであろう事務室に行った。
そこにはトリアとディマ・ス、役人のティシュカが不安そうに外を眺めていた。
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