僕からのあなたへの想いはどこからやってきてどこへいくのか。

勇黄

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出逢いは偶然に。

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「……つ!か、かっこいい!」

動画サイトを見ていて
僕は思わず叫んでしまってから
あわあわと口を押さえた。

だって……今、僕がいるところは
混み合うバスの中。

隣りのご婦人がギロリと僕を睨みつけ
女子高生の2人組はクスクスと
こちらを指さして笑っている。

僕は穴があったら入りたい気分で
会社の最寄り駅まで縮こまって
過ごし、やっとのことで
バス停に降り立った。

ベンチに座り込み
さっき見ていた動画をもう一度開く。


海の景色から始まるその動画は
撮影者の手によって
暫く海を散策するように映され
コテージのような室内に移動。

机にカメラを固定し
1度フレームアウトしてから
男性がギターを持って登場する。

僕は彼に一瞬にして
心を奪われたのだ。

にっこりと微笑みギターを片手に
綺麗な声で歌い出す彼を
息を詰めて見つめる。

何度も何度も再生し
ひとつの仕草も見逃さぬよう
息継ぎの瞬間さえも捉え
瞬きの美しさ、ギターを爪弾く
指の長さ、歌いながら口の端で笑い
こちらを包み込むように
見やるその瞳に魅入られて
身動きができなくなっていった。










……………………☆……………………

僕は田仲 中  たなか       あたる。22歳。

新卒で、やりたいこともなく
なんとなく受かった会社に就職した。

なんの取り柄もなく
どんくさい僕は《なかなかくん》と
揶揄されている。
名前となかなかできない、を
かけられているのだ。

なにもできないヤツと蔑まれ
理不尽なことばかりを押し付けられ。


最近はもう会社に行きたくなくて
現実逃避し毎夜眠れずに
好きな本の中に逃げこんでいた。

それでもなんとか朝身支度をして
味気ないパンを齧り
重い足に靴を履く。

10分ほど足を引きずりながら歩き
バスに乗り周囲から逃げるように
イヤホンをつけ動画サイトを開いた。

いつも見る癒しワンコの動画を
見終わってふと関連動画として
紐づいていたその動画に飛ぶ。

そこに彼はいた。

thaleeタレー~海~」と名付けられた
その動画は僕にとってまさに
癒しだった。

この海に見覚えがある。

(たぶん……あの海に違いない。)

僕の足は自然と会社とは逆の方向へと
向かっていた。
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