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【番外編】ノリ兄とヤスくん最後のデート
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《番外編》
【やまちゃんこと大和皇保と兄皇教の話。】
「ヤスくーん。起きろよ~!
水族館行くんだろ?
朝飯出来てるよ?ヤスくん!」
「…ふお、え?…!えええ!
な、な、な…」
「おはよ。キッチンで待ってるよ~」
(しまった!緊張し過ぎて
眠れなくて…寝坊した!
俺のバカ!…………って急に
ヤスくん呼び!?な、なんでっ?)
俺は慌てて身なりを整えて
キッチンに行く。
「あに…」
兄貴、と言おうとした
俺の言葉をさえぎり。
「今日は昔に戻ってヤスくん
ノリ兄でいこう!
久しぶりに水族館行くしさ。
ね。はい、コーヒー。」
「う、うん………。ありがとう。
ノリに、い。」
朝食のトーストを食べながら
嬉しそうに笑う目の前の人は。
いったい何を考えているのだろう…。
水族館に向かうため
電車に乗り込むと
ノリ兄は手を繋いでくる。
(は、ぁ?)
「ちょ…なんで?」
またまたノリ兄は笑って。
「ヤスくんが小学3年の時
水族館に一緒に行ったの覚えてるか?」
「もちろん!もちろん
覚えてるに決まってる…!」
「あはは!あの時もこうして
手、繋いで行ったろ?」
「!!!あの時はっ!
まだ小さかったから…
でも今はおかしいよ…
2人ともでかい図体して………っ!」
「いいじゃん。ね。」
笑ってぎゅうぎゅうと
手を握られる。
水族館に入ると少しひんやりした
空気が夢見心地を覚醒させた。
「ノリ兄、やっぱり手は…。」
「今日はいいんだ。
だまって握られてるべし。」
「ノリ兄…。」
「あ、ほら。ジンベイザメいるぞ!」
無邪気に笑っているノリ兄に
俺は開き直った。
今日は1日思い切り楽しむって
くりっととも約束したし。
(よしっ…。)
「ノリ兄!あそこ!イワシの大群が!」
そう言って恋人繋ぎのように
手を絡ませる。
「…美味そうだな。」
「!!あはは!ノリ兄
前来た時もそう言ったよね!
思い出すなぁ~!」
「なんかさ、普段食べるような
やつが泳いでると食欲にいきがち!
あはははは!」
いろいろ話しながら進んでいく。
いろんな魚たちや
海の生き物たちがいて
ノリ兄は夢中になって見ている。
俺はその横顔をずっと見ていた。
(今日だけは俺のもの。)
「ヤスくん写真撮らなくていいの?」
「今日は目に焼きつけるからいい。」
「そっか。じゃあ。
俺もスマホ直しとく。」
「うん…。」
「あ!イルカショーの時間
もうすぐだ!行こう!」
ノリ兄が駆け出す。
「ちょ!なにも走らなくても!ふふ…。」
「前の席でバシャー!って
やってもらいたいだろ?
前の時やりたかったって
言っただろ?」
「!!あれは子供だったから!
今はやだよ!あははは!」
「いいから。前行くぞ!
ちゃんと替えのTシャツ
持ってきたから!」
用意周到!と笑って前へ行くと
水族館のお姉さんがスポッと
頭から被るレインコートを
貸してくれた。
コートに隠れて俺はまた
ノリ兄の手を探す。
ノリ兄の手が俺の手を探してきて
また恋人繋ぎになった。
イルカショーは本当にすごくて。
昔見た時より感動した。
イルカたちは一生懸命で
癒される声で鳴いて
とても可愛かった。
水も思い切り頭からかけられて。
俺たちはその辺の子供に
冷めた目で見られるほど
大はしゃぎした…。
「あー!デニムにまで水が!」
ノリ兄は大笑いで俺の顔も
タオルで拭いてくれる。
「やっぱ替えのTシャツ持ってきて
正解だった!はい、これ。
さっと着替えて。」
イルカショーの会場のすみっこで
ノリ兄に壁になってもらって
ササッと着替える。
そしてノリ兄が着替える時は
俺が壁になった。
(広い背中。この背中に
何度ふざけたふりして
抱きついだだろう。
それだけで良かったはずなのに…。)
「このTシャツ、プレゼントだよ。」
「え?そうなの?ありがとう。
……ってかちょっと可愛すぎない?」
「あはは!ミニ○ン好きだったろ?
前、ここに来た時もミニ○ンだった。」
「いや、好きだけど、さ!」
「ま、今日は我慢して着てくれ。」
笑顔でそう言う愛しい人。
「うん…。」
俺の顔は赤くなっていないだろうか。
隠すように俺は歩を進める。
「海月の特別展示のコーナーだ!」
手を繋ぎぷかぷかと泳ぐ海月に見入る。
7色の電気を発しているものや
ミニサイズのもの。
でかいサイズのもの
変わった形のもの。
可愛い色合いのもの。
いろんな海月がいる。
「綺麗…!可愛いねぇ…。」
思わず俺はそう口にして。
「だな…。もともとは俺が
ヤスくんに教えたんだぜ?」
「覚えてるよ。あの時。
ノリ兄とても嬉しそうに見て
お話してくれた。だから………。」
「だから?」
「なんでもない。
……あ、あれも珍しいやつだよね?
見に行こ?」
ああ、と微笑んで歩くノリ兄。
たっぷり海月のコーナーを堪能して
時計を見るともう午後2時を
過ぎていて。
「さすがに腹減ったな!
出て、なんか食おうか。」
「ノリ兄。俺、アレがいいな!」
「あれ?」
「昔来た時食べたハンバーグ。」
「あー!そういえば。
じゃあそうしようか。」
「あの時、俺カトラリーが
上手く使えなくてノリ兄が
切ってくれたんだよなー。」
「ふふふ。そうだった。
ヤスくんお腹すいてるのに
なかなか、切れなくて
泣いちゃったんだよ!覚えてる。」
「そこは忘れて!はず~!」
「あはは!今日も切ってやるよ?」
「バカ!もう自分で出来るわ!
あはは!」
洋食屋に入り昔と同じメニューを頼み
食べ始めるとノリ兄が
俺をまっすぐ見てる。
俺は恥ずかしくなった。
「…なんで見てんだよぉ?」
「ふふふ。なんかさ。
大きくなったなぁ、と思って。」
「ノリ兄だって今では俺より
身長高いじゃんか。」
「そうだ…昔、水族館来た時
ヤスくんのほうが身長が高くて…。
俺が弟に間違えられたんだった。」
「あの時、ノリ兄、顔を真っ赤にして
怒ってさ!ふふ…。」
「それこそ忘れろ…。
アホ!あはは!」
ゆっくり昼食を食べ
2人で水族館の周辺を
のんびり散歩して。
そのあいだも恋人繋ぎをして。
ゲーセンでUFOキャッチャーに
夢中になったりレースゲームを
したり太鼓を叩いたり
バスケットボールのゲームをしたり。
思い切り遊んで外に出ると
もう夕暮れ。
空がオレンジに染まっていた。
「ヤスくん。観覧車、乗ろうか。
前も乗っただろ?」
「うん。」
2人で観覧車に乗り込む。
「ノリ兄。今日は楽しかったよ。
ありがとう。」
「俺こそ。昔に戻って
とても安らいだ。」
「ノリ兄…。」
俺は我慢の限界だった。
涙がひと粒零れたら
もう我慢できなくなって
号泣してノリ兄に抱きつく。
「ヤスくん、ごめんな。」
俺の頭を撫でながらノリ兄は謝る。
「うっ…な、んで謝るんだよ…。」
「ぐずっ…ごめん。ヤスくんの
気持ちにこたえられなくてごめん。」
「え………?」
「俺、わかってた。
ヤスくんがどういう気持ちか。」
「……………………………。」
「俺だって嬉しかった。
…………………でも、な。
俺たちは兄弟だから。
俺は大和商事をつがなきゃならない。
跡取りも作らなきゃならない。
ヤスくんの気持ちに
こたえるわけにはいかないんだ。」
「ノリ兄…。少しは俺のこと……。」
「ヤスくんは俺にとって癒しだ。
いつも、安らぎをくれる。
いつもとなりにいてくれて
俺は孤独じゃなくなる。
寂しいときはいつも
いてくれたでしょ?」
「……………うん。俺はいつも
ノリ兄のそばにいたかったから。」
「ありがとな。それからごめん。」
俺はもう嗚咽がこらえきれなくて
思い切り泣いた。
「ノリ兄…ノリ兄………
わぁぁああ…。」
俺を胸に抱いてずっと頭を
撫で続けてくれるノリ兄。
観覧車はもう頂上を過ぎる。
「ノリ兄。最後のお願いしてもいい?」
「なんだ?」
「キス、してくれないかな。」
「ヤスくん…。」
俺はノリ兄を見上げる。
ものすごく優しい顔をして
俺の頬に手を置くノリ兄。
唇が近づいてチュと
軽いキスの後…………。
深く口づけられて舌が入ってくる。
俺は必死に舌を追いかけ絡めた。
「……………んぅ…ふぅ…。
……………。ありがとう。」
「……………………………。」
呆然と観覧車を降りて
ベンチに腰かける。
長い沈黙の後、口を開いたのは
ノリ兄だった。
「俺のことは忘れて…
新しい恋を探せよ。ヤスくん。」
「…………………………。」
「兄弟に戻ろう。」
「………………。それを言うために
今日は俺に付き合ってくれたの?
俺に諦めさせるために?」
「……………。そうとも言えるし
そうじゃないとも言える。」
「なんだよそれ。」
「………俺のためでもある。
ヤスくんとの思い出がほしかった。
自分を納得させるためでもあった。」
「つ………。ノリ兄…………。」
「だから、ごめん。本当にごめん。」
「…………………。ノリ兄。
その言葉が俺にとって
どれだけ残酷なことかわかる?」
「………わかってる。ごめん。」
「………………………………。
わかってるなら、いい。」
「ヤスくん…………。」
「もう一度だけ抱きしめてくれる?
そしたら俺忘れるから。」
「………………おいで。」
すっかり暗闇に包まれたベンチで
すっぽりとノリ兄の腕の中に
優しく包まれる。
「ノリ兄…。本当は離れたくない。」
「…………………。」
「ノリ兄…。」
そっと体を離され
両頬に手が伸びてきた。
そしてまた深いキス。
長い間舌を絡ませあって
唾液を飲みあう。
ようやく離されたお互いの唇は
わずかに腫れていた。
また長い沈黙の後、俺は立ち上がって
無理矢理に言葉を発する。
「兄貴!!駅まで競争だ!
弟の意地をみせてやる!
いくよ?用意はいい?」
「………………ああ。
兄として弟に負けるわけには
いかないな!よし。
よーい、ドン!!!」
「わぁぁぁぁぁあああ!」
「うわぁぁぁぁ……………!」
2人で泣きわめきながら懸命に走る。
駅には俺が先に着いた。
【やまちゃんこと大和皇保と兄皇教の話。】
「ヤスくーん。起きろよ~!
水族館行くんだろ?
朝飯出来てるよ?ヤスくん!」
「…ふお、え?…!えええ!
な、な、な…」
「おはよ。キッチンで待ってるよ~」
(しまった!緊張し過ぎて
眠れなくて…寝坊した!
俺のバカ!…………って急に
ヤスくん呼び!?な、なんでっ?)
俺は慌てて身なりを整えて
キッチンに行く。
「あに…」
兄貴、と言おうとした
俺の言葉をさえぎり。
「今日は昔に戻ってヤスくん
ノリ兄でいこう!
久しぶりに水族館行くしさ。
ね。はい、コーヒー。」
「う、うん………。ありがとう。
ノリに、い。」
朝食のトーストを食べながら
嬉しそうに笑う目の前の人は。
いったい何を考えているのだろう…。
水族館に向かうため
電車に乗り込むと
ノリ兄は手を繋いでくる。
(は、ぁ?)
「ちょ…なんで?」
またまたノリ兄は笑って。
「ヤスくんが小学3年の時
水族館に一緒に行ったの覚えてるか?」
「もちろん!もちろん
覚えてるに決まってる…!」
「あはは!あの時もこうして
手、繋いで行ったろ?」
「!!!あの時はっ!
まだ小さかったから…
でも今はおかしいよ…
2人ともでかい図体して………っ!」
「いいじゃん。ね。」
笑ってぎゅうぎゅうと
手を握られる。
水族館に入ると少しひんやりした
空気が夢見心地を覚醒させた。
「ノリ兄、やっぱり手は…。」
「今日はいいんだ。
だまって握られてるべし。」
「ノリ兄…。」
「あ、ほら。ジンベイザメいるぞ!」
無邪気に笑っているノリ兄に
俺は開き直った。
今日は1日思い切り楽しむって
くりっととも約束したし。
(よしっ…。)
「ノリ兄!あそこ!イワシの大群が!」
そう言って恋人繋ぎのように
手を絡ませる。
「…美味そうだな。」
「!!あはは!ノリ兄
前来た時もそう言ったよね!
思い出すなぁ~!」
「なんかさ、普段食べるような
やつが泳いでると食欲にいきがち!
あはははは!」
いろいろ話しながら進んでいく。
いろんな魚たちや
海の生き物たちがいて
ノリ兄は夢中になって見ている。
俺はその横顔をずっと見ていた。
(今日だけは俺のもの。)
「ヤスくん写真撮らなくていいの?」
「今日は目に焼きつけるからいい。」
「そっか。じゃあ。
俺もスマホ直しとく。」
「うん…。」
「あ!イルカショーの時間
もうすぐだ!行こう!」
ノリ兄が駆け出す。
「ちょ!なにも走らなくても!ふふ…。」
「前の席でバシャー!って
やってもらいたいだろ?
前の時やりたかったって
言っただろ?」
「!!あれは子供だったから!
今はやだよ!あははは!」
「いいから。前行くぞ!
ちゃんと替えのTシャツ
持ってきたから!」
用意周到!と笑って前へ行くと
水族館のお姉さんがスポッと
頭から被るレインコートを
貸してくれた。
コートに隠れて俺はまた
ノリ兄の手を探す。
ノリ兄の手が俺の手を探してきて
また恋人繋ぎになった。
イルカショーは本当にすごくて。
昔見た時より感動した。
イルカたちは一生懸命で
癒される声で鳴いて
とても可愛かった。
水も思い切り頭からかけられて。
俺たちはその辺の子供に
冷めた目で見られるほど
大はしゃぎした…。
「あー!デニムにまで水が!」
ノリ兄は大笑いで俺の顔も
タオルで拭いてくれる。
「やっぱ替えのTシャツ持ってきて
正解だった!はい、これ。
さっと着替えて。」
イルカショーの会場のすみっこで
ノリ兄に壁になってもらって
ササッと着替える。
そしてノリ兄が着替える時は
俺が壁になった。
(広い背中。この背中に
何度ふざけたふりして
抱きついだだろう。
それだけで良かったはずなのに…。)
「このTシャツ、プレゼントだよ。」
「え?そうなの?ありがとう。
……ってかちょっと可愛すぎない?」
「あはは!ミニ○ン好きだったろ?
前、ここに来た時もミニ○ンだった。」
「いや、好きだけど、さ!」
「ま、今日は我慢して着てくれ。」
笑顔でそう言う愛しい人。
「うん…。」
俺の顔は赤くなっていないだろうか。
隠すように俺は歩を進める。
「海月の特別展示のコーナーだ!」
手を繋ぎぷかぷかと泳ぐ海月に見入る。
7色の電気を発しているものや
ミニサイズのもの。
でかいサイズのもの
変わった形のもの。
可愛い色合いのもの。
いろんな海月がいる。
「綺麗…!可愛いねぇ…。」
思わず俺はそう口にして。
「だな…。もともとは俺が
ヤスくんに教えたんだぜ?」
「覚えてるよ。あの時。
ノリ兄とても嬉しそうに見て
お話してくれた。だから………。」
「だから?」
「なんでもない。
……あ、あれも珍しいやつだよね?
見に行こ?」
ああ、と微笑んで歩くノリ兄。
たっぷり海月のコーナーを堪能して
時計を見るともう午後2時を
過ぎていて。
「さすがに腹減ったな!
出て、なんか食おうか。」
「ノリ兄。俺、アレがいいな!」
「あれ?」
「昔来た時食べたハンバーグ。」
「あー!そういえば。
じゃあそうしようか。」
「あの時、俺カトラリーが
上手く使えなくてノリ兄が
切ってくれたんだよなー。」
「ふふふ。そうだった。
ヤスくんお腹すいてるのに
なかなか、切れなくて
泣いちゃったんだよ!覚えてる。」
「そこは忘れて!はず~!」
「あはは!今日も切ってやるよ?」
「バカ!もう自分で出来るわ!
あはは!」
洋食屋に入り昔と同じメニューを頼み
食べ始めるとノリ兄が
俺をまっすぐ見てる。
俺は恥ずかしくなった。
「…なんで見てんだよぉ?」
「ふふふ。なんかさ。
大きくなったなぁ、と思って。」
「ノリ兄だって今では俺より
身長高いじゃんか。」
「そうだ…昔、水族館来た時
ヤスくんのほうが身長が高くて…。
俺が弟に間違えられたんだった。」
「あの時、ノリ兄、顔を真っ赤にして
怒ってさ!ふふ…。」
「それこそ忘れろ…。
アホ!あはは!」
ゆっくり昼食を食べ
2人で水族館の周辺を
のんびり散歩して。
そのあいだも恋人繋ぎをして。
ゲーセンでUFOキャッチャーに
夢中になったりレースゲームを
したり太鼓を叩いたり
バスケットボールのゲームをしたり。
思い切り遊んで外に出ると
もう夕暮れ。
空がオレンジに染まっていた。
「ヤスくん。観覧車、乗ろうか。
前も乗っただろ?」
「うん。」
2人で観覧車に乗り込む。
「ノリ兄。今日は楽しかったよ。
ありがとう。」
「俺こそ。昔に戻って
とても安らいだ。」
「ノリ兄…。」
俺は我慢の限界だった。
涙がひと粒零れたら
もう我慢できなくなって
号泣してノリ兄に抱きつく。
「ヤスくん、ごめんな。」
俺の頭を撫でながらノリ兄は謝る。
「うっ…な、んで謝るんだよ…。」
「ぐずっ…ごめん。ヤスくんの
気持ちにこたえられなくてごめん。」
「え………?」
「俺、わかってた。
ヤスくんがどういう気持ちか。」
「……………………………。」
「俺だって嬉しかった。
…………………でも、な。
俺たちは兄弟だから。
俺は大和商事をつがなきゃならない。
跡取りも作らなきゃならない。
ヤスくんの気持ちに
こたえるわけにはいかないんだ。」
「ノリ兄…。少しは俺のこと……。」
「ヤスくんは俺にとって癒しだ。
いつも、安らぎをくれる。
いつもとなりにいてくれて
俺は孤独じゃなくなる。
寂しいときはいつも
いてくれたでしょ?」
「……………うん。俺はいつも
ノリ兄のそばにいたかったから。」
「ありがとな。それからごめん。」
俺はもう嗚咽がこらえきれなくて
思い切り泣いた。
「ノリ兄…ノリ兄………
わぁぁああ…。」
俺を胸に抱いてずっと頭を
撫で続けてくれるノリ兄。
観覧車はもう頂上を過ぎる。
「ノリ兄。最後のお願いしてもいい?」
「なんだ?」
「キス、してくれないかな。」
「ヤスくん…。」
俺はノリ兄を見上げる。
ものすごく優しい顔をして
俺の頬に手を置くノリ兄。
唇が近づいてチュと
軽いキスの後…………。
深く口づけられて舌が入ってくる。
俺は必死に舌を追いかけ絡めた。
「……………んぅ…ふぅ…。
……………。ありがとう。」
「……………………………。」
呆然と観覧車を降りて
ベンチに腰かける。
長い沈黙の後、口を開いたのは
ノリ兄だった。
「俺のことは忘れて…
新しい恋を探せよ。ヤスくん。」
「…………………………。」
「兄弟に戻ろう。」
「………………。それを言うために
今日は俺に付き合ってくれたの?
俺に諦めさせるために?」
「……………。そうとも言えるし
そうじゃないとも言える。」
「なんだよそれ。」
「………俺のためでもある。
ヤスくんとの思い出がほしかった。
自分を納得させるためでもあった。」
「つ………。ノリ兄…………。」
「だから、ごめん。本当にごめん。」
「…………………。ノリ兄。
その言葉が俺にとって
どれだけ残酷なことかわかる?」
「………わかってる。ごめん。」
「………………………………。
わかってるなら、いい。」
「ヤスくん…………。」
「もう一度だけ抱きしめてくれる?
そしたら俺忘れるから。」
「………………おいで。」
すっかり暗闇に包まれたベンチで
すっぽりとノリ兄の腕の中に
優しく包まれる。
「ノリ兄…。本当は離れたくない。」
「…………………。」
「ノリ兄…。」
そっと体を離され
両頬に手が伸びてきた。
そしてまた深いキス。
長い間舌を絡ませあって
唾液を飲みあう。
ようやく離されたお互いの唇は
わずかに腫れていた。
また長い沈黙の後、俺は立ち上がって
無理矢理に言葉を発する。
「兄貴!!駅まで競争だ!
弟の意地をみせてやる!
いくよ?用意はいい?」
「………………ああ。
兄として弟に負けるわけには
いかないな!よし。
よーい、ドン!!!」
「わぁぁぁぁぁあああ!」
「うわぁぁぁぁ……………!」
2人で泣きわめきながら懸命に走る。
駅には俺が先に着いた。
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