ミュータント少女 vs ニンジャ【R18】

ヒルナギ

文字の大きさ
2 / 10

第二話

しおりを挟む
 廃墟のようなメンフィスの街は、しんとしていた。

 三度目の世界大戦が終わってもう5年はたつが、あいかわらず荒廃した街である。

 国境が近く、最後まで激戦があったせいなのかもしれない。

 その荒れ果てた大通りに。

 軍用ジープが二台停まっていた。

 そして、黒い十字を襟につけた軍服を纏うおとこたちが五人。

 MP40短機関銃を、構えて立っている。

 ひとりだけ軍用拳銃を構えたおとこがおり、そのおとこの拳銃の先になにかがいた。

 ひとのような。

 ぼろ屑のような。

 獣のような。

 魔のような。

 それは、ずた袋みたいな毛布を纏って地を這うように歩く。

 軍用拳銃が、もう一度火を吹く。

 トルグアクションという独特の機構を持った拳銃が、カートリッジを吐き出す。

 銃弾は、その地を這うように歩くものから大きくそれた。

 まるで目を瞑って撃っているかのような、はずれっぷりだ。

 いつのまにか黒衣の東洋人は、地を這うものと黒十字の軍人との間に立っていた。

 その姿は。

 真昼に現れた、漆黒の幽霊のようである。

「そこを退け」

 黒十字の軍人は、叫ぶ。

 おとこは、それにこたえるように刀の柄に手をかけた。

 彼女はその瞬間、刀がたまらない声ですすり泣くのを聞いたような気がして、ぞっとする。

 いかにその黒衣の東洋人が手錬であろうとも、四丁の機関銃を前に一本の刀では為す術もないはずなのであるが。

 おとこは当然斬れると思っているかのように、刀に手をかけている。

 黒十字の軍人は、不吉なものを感じているのか少し表情を曇らせて言った。

「それが何か知っているのか?」

 軍人の問いに、東洋人は首を振る。

 軍人は、吐き捨てるように言った。

「そいつは、シャンブロウだ」

 黒い。

 立ち上がった死のような、その東洋人は静かに言った。

「これは、おれのだ」

 その瞬間、軍人たちから緊張の色が消えた。

 変わりに、少し侮蔑の笑みを浮かべると、無言のままジープで引き上げて行く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

なほ
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模るな子。新入社員として入った会社でるなを待ち受ける運命とは....。

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

処理中です...