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第四話
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「止めなさい、憎んであげるから」
本気にしたとは思えないけど、路肩に寄せて車を止めた。
あたしは彼に指を付きつけて。
それをこいこい、と曲げる。
「抱きなさいよ」
彼はまた躊躇う。
ああもう、面倒くさい。
「いちいち考えずに抱け、このカス」
彼は、あたしを抱きしめた。
きた。
きた、きた。
これよ、この感じ。
東京湾にゴジラ上陸という感じ。
世界を根こそぎ破壊しつくせるような、凶悪なコードがあたしの中で悲鳴をあげている。
ああ、これはそう。
昔、パンクバンドが力任せにジーザス&メアリーチェーンのアップサイドダウンをカバーした時に感じた感覚。
音が百の獣たちの咆哮となってシンクロして破壊して満ち溢れていくのよ。
そう。
そう、そう。
あたし、ギターになっちゃった。
見えないプラグに接続して、車をアンプに変える。
高速で回転する金属を打ち合わせたような絶叫が響き、ドイツ車のスピーカーが爆発して弾けとんだ。
あたしは、笑って、笑った。
それ以外、何ができるのさ。
パトカーがいつの間にか前後に止まって挟まれてる。
あたしは、そのパトカーにプラグインした。
ランプが、紅い血飛沫をあげるように砕ける。
もっとだ、もっと。
あたしの中のコードは荒れ狂い、生け贄を求めて慟哭する。
エンジンにプラグインした。
爆炎があがり、パトカーのボンネットが跳あがる。
見えない音が、聞こえないコードが世界にシンクロして、極彩色の破壊を撒き散らす。
ギターよ、あたしはギター。
そして世界がアンプ。
あたしのコードで世界が鳴き叫ぶ。
「じゃあ、行こうか」
あたしの言葉に彼は怪訝な顔をする。
「どこへ、行くんだ」
ああじゃまくさい。
海だ。
海。
とりあえず、海辺で叫ぶよ。
❖
あたしたちは、海辺にきた。
そこには、かつてテーマパークを作ろうとした企業が倒産したり、海外企業が乗り出したけどそこも破綻して色々あった末、リゾートマンションの廃墟だけが残ったっていう素敵な場所だ。
海辺に巨獣のような廃墟が、聳え立っている。
あたしたちは、その放置された建物の十階にある部屋へ入った。
ま、何をやっても問題にならなさそうなところなんで、昔さんざん遊んだところだ。
未だに残っていて、さらにあのころ持ち込んで使っていた家具も残っているなんて最高だね。
あたしは出口を求めてあたしの中で渦巻いている力に、ざわざわしている。
まるで、高まった性欲を無理やり我慢してる感じ。
いや、性欲もなんか高まってる気がする。
もう凄く、ぐちゃぐちゃだ。
はやく。
はやく、壊さないと。
彼は、硝子の嵌っていない枠だけの窓から外を見ている。
少し、舌打ちをした。
「やっかいな連中がきた」
ああ、あれね。
「海外の、お友だち? なんか、やらかしたの?」
彼は、苦笑する。
「やらかしたのは、君だろ。パトカー吹っ飛ばしたじゃないか」
あたしは、てへ、ぺろっと舌を出す。
「ああ、あたしね」
だって、しょうがないじゃん。
本気にしたとは思えないけど、路肩に寄せて車を止めた。
あたしは彼に指を付きつけて。
それをこいこい、と曲げる。
「抱きなさいよ」
彼はまた躊躇う。
ああもう、面倒くさい。
「いちいち考えずに抱け、このカス」
彼は、あたしを抱きしめた。
きた。
きた、きた。
これよ、この感じ。
東京湾にゴジラ上陸という感じ。
世界を根こそぎ破壊しつくせるような、凶悪なコードがあたしの中で悲鳴をあげている。
ああ、これはそう。
昔、パンクバンドが力任せにジーザス&メアリーチェーンのアップサイドダウンをカバーした時に感じた感覚。
音が百の獣たちの咆哮となってシンクロして破壊して満ち溢れていくのよ。
そう。
そう、そう。
あたし、ギターになっちゃった。
見えないプラグに接続して、車をアンプに変える。
高速で回転する金属を打ち合わせたような絶叫が響き、ドイツ車のスピーカーが爆発して弾けとんだ。
あたしは、笑って、笑った。
それ以外、何ができるのさ。
パトカーがいつの間にか前後に止まって挟まれてる。
あたしは、そのパトカーにプラグインした。
ランプが、紅い血飛沫をあげるように砕ける。
もっとだ、もっと。
あたしの中のコードは荒れ狂い、生け贄を求めて慟哭する。
エンジンにプラグインした。
爆炎があがり、パトカーのボンネットが跳あがる。
見えない音が、聞こえないコードが世界にシンクロして、極彩色の破壊を撒き散らす。
ギターよ、あたしはギター。
そして世界がアンプ。
あたしのコードで世界が鳴き叫ぶ。
「じゃあ、行こうか」
あたしの言葉に彼は怪訝な顔をする。
「どこへ、行くんだ」
ああじゃまくさい。
海だ。
海。
とりあえず、海辺で叫ぶよ。
❖
あたしたちは、海辺にきた。
そこには、かつてテーマパークを作ろうとした企業が倒産したり、海外企業が乗り出したけどそこも破綻して色々あった末、リゾートマンションの廃墟だけが残ったっていう素敵な場所だ。
海辺に巨獣のような廃墟が、聳え立っている。
あたしたちは、その放置された建物の十階にある部屋へ入った。
ま、何をやっても問題にならなさそうなところなんで、昔さんざん遊んだところだ。
未だに残っていて、さらにあのころ持ち込んで使っていた家具も残っているなんて最高だね。
あたしは出口を求めてあたしの中で渦巻いている力に、ざわざわしている。
まるで、高まった性欲を無理やり我慢してる感じ。
いや、性欲もなんか高まってる気がする。
もう凄く、ぐちゃぐちゃだ。
はやく。
はやく、壊さないと。
彼は、硝子の嵌っていない枠だけの窓から外を見ている。
少し、舌打ちをした。
「やっかいな連中がきた」
ああ、あれね。
「海外の、お友だち? なんか、やらかしたの?」
彼は、苦笑する。
「やらかしたのは、君だろ。パトカー吹っ飛ばしたじゃないか」
あたしは、てへ、ぺろっと舌を出す。
「ああ、あたしね」
だって、しょうがないじゃん。
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