初夜での暗殺に失敗した私ですが、今宵も冷徹皇帝から甘く抱き尽くされております

葛和蛙蘭

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エリシアの催し③

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「それとここには栄養価の高い野草がたくさん自生しています。同じように煮込めば食べやすくなりますので、食料が不足している今はこういったもので補填してもいいかもしれません」

 院長は深くうなずき、野草をまじまじと見つめた。
 クロヴィスやリーモス夫妻も感心したように耳を傾けている。

「あと大発見してしまったのですが、万能薬として重宝されている薬草もたくさんありました。私の国では貴重だったのですが、ここは他国と気候が異なるためでしょうか。これを製造販売すれば定期的なお金になりませんか?」
「それはいい考えだ。大陸中が薬不足の今、そういったものを商品化して販売ルートを作れば、領民にも新たな仕事を与えられる」

 リーモスの弾んだ言葉を聞いて、侍女や近衛兵たちの表情も明るくなっていく。

 子どもたちの笑顔が咲く邸内は、清々しく温かい雰囲気に包まれていた。


 ※

 ジャムを冷ますあいだに、瓶を煮沸して詰め込む準備が始まっていた。
 いつの間にか侍女たちも近衛兵たちも子どもたちと混じり、わいわいと作業に加わっている。
 エリシアは庭園と邸宅内の調理室を行き来しながら、てきぱきと指示を出していた。
 エルヴァランの別邸にいた頃の経験が生きている。忙しかったが、不思議と胸は充実していた。

「何か手伝うことはあるか?」

 調理室にクロヴィスが姿を現した。

「ありがとうございます。でも、サーシャたちがしっかり準備してくれたので大丈夫です」

 エリシアは丁寧に断り、明るく微笑んだ。

「大盛況だな。子どもたちだけでなく、侍女や近衛兵までも楽しそうにしているのは久しぶりに見た」
「……よかった。この催しを認めてくださって、本当に感謝しています」

 クロヴィスはしばし彼女を見つめ、口元を緩めた。

「きみの機転や手際の良さに、皆も驚いている。これもエルヴァランで培ったものか?」
「はい。領民や子どもたちを招いて、こうした催しをよくしていたんです」
「なるほどな。屋敷に籠ってばかりではなかった、というわけだ」

 頼もしげな眼差しに、エリシアは少し照れたように笑った。

「最初は落ち込んでばかりでしたが、元気になると……根っからのお転婆気質が出てしまって」
「きみはすぐに民の輪に溶け込める。それは俺にはできないことだ」
「そんな……陛下の方こそ、子どもたちに慕われていました」
「あの子たちが物怖じしなかっただけだ。俺には野花の知識も、人を笑わせる術もない。……だからこそ、きみがいてくれて良かった」

 真っ直ぐな言葉に頬が温かくなった。
 クロヴィスの隣に立つ者としてできることをしたいと、懸命に準備して迎えた今日だった。
 その頑張りを認めてもらえたような気がした。

「何より、きみが楽しんでいる。それが一番嬉しい」

 穏やかな声音に、胸が震えた。
 甘く優しい香りに包まれた平和なこの時間。
 命を失う覚悟でこの国に来たのに、こんなにも幸せに笑い合える未来を誰が予測できただろう。

「……救われたのは、私の方です。ありがとうございます、陛下」

 かすれるように告げると、クロヴィスはそっと彼女の唇に口づけた。
 互いの体温を感じるだけの穏やかな時を経て、名残惜しげに彼の唇がはなれた。

「……しかし、いい香りだな。ここにも漂っている」
「あ、実はここでも作っていたんです。以前、陛下に味見していただいた、あの希少な実のジャムを覚えていらっしゃいますか?」
「ああ」
「なんと、この地にそれが自生していたんです。せっかくですから、ぜひ出来たてをお召し上がりください」

 ジャムをすくった匙を手にすると、エリシアはにっこりと笑った。

「……はい、陛下。あーん、です」

 クロヴィスは一瞬たじろいだが、口を開けた。

「もっと大きくお口をあけてくださいませ」
「うむ……あーん」
「いかがですか?」
「……うまいな」

 クロヴィスは口端をわずかに上げた。
 その唇にジャムがついたのを親指でぬぐい、ちろりと舌で舐める。
 色気あるその仕草にどきっとしていると、今度はクロヴィスが別の匙でジャムをすくった。

「では、今度はきみの番だ」
「はい。あー……あっ」

 胸元にポトリとジャムが落ちてしまった。心なしか、わざとらしい動きに見えた。

「すまない」
「いえ……えっ……? ええ……っ!?」

 謝ったそばから、ぽとぽととジャムが立て続けに胸の谷間に落とされる。間違いなくわざとだった。

「陛下……っ」
「すまない、もったいないことをしたな。ちゃんと食べるから、ゆるしてくれ……」
「え……? あっ……んっ……」

 腰を引き寄せ、胸元に舌を這われた。
 やわらかく盛り上がった乳房がジャムと一緒に舐められ、じゅっと吸われる。

「や、ん、くすぐったい……っ」

 胸の谷間にも舌を差し入れられて、搔痒感に身をよじらせるが、腰を強く抱かれて逃れられない。
 掻きだすようにちろちろと舌を動かし、ちゅうと吸われる。
 小さな生き物が蠢くような感覚に気を取られていると、彼の指が胸元の服をひっかけ、すこしずつ下へずりおろした。
 今日は動き回るからと、窮屈なコルセットを付けなかったのを、彼は知っていたらしい。

「あっ……」

 乳首がこぼれでて、すくいとるように舐め上げられる。
 ジャムを味わうような動きで舌がゆっくりと動き、果実を潰すように唇で優しく食まれる。
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