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第4話 0.5秒の未来
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1
『システム・再起動(リブート)……開始』
『全神経網、再構築完了。動力炉(ジェネレーター)、臨界点まであと40%』
無機質な電子音が、泥のような意識の底に響いた。
不意に、世界が開けた。
エレナが目を開けると、そこは無菌室のような白い部屋だった。
培養液(バクタ)の満たされたカプセルの中に浮いている。
「おはようございます、マスター」
脳内に直接、鈴を転がすような少女の声が響いた。
視界の端に、小さなフクロウのホログラム・アイコンが表示される。
「私は戦術支援AI『アイギス』。あなたの新しい脳(ニューロン)の一部であり、盾となる者です」
「アイ……ギス……?」
口から出た声には、ノイズが混じっていた。人間の声帯ではない。合成された電子音声だ。
「聞き覚えがない名前ですね。ですが、私の基礎コードには彼の署名(サイン)が刻まれています」
「彼……?」
「はい。カイト様が開発したプログラムです」
「……よろしくね。アイギス」
ふと、視界の端にあるシステム時計に目が止まる。
『経過時間:11ヶ月と14日』
「え……?」
エレナは思考が凍りついた。
「1年……?嘘でしょ、ついさっき手術が……」
「いいえ、事実です。全身の90%を生体適合素材へ置換し、定着させるにはそれだけの時間が必要でした」
培養液が排水され、カプセルが開く。
エレナは床に降り立った。
カイトが死んでから、もう一度季節が巡り、さらに過ぎ去っていた。
世界は私を置いて進んでいた。
その事実に、言いようのない孤独が押し寄せる。
部屋の壁一面が鏡になっていた。
そこに映っていたのは、黒髪の女子大生ではなかった。
月光のように輝く銀色の髪。透き通るような白い人工皮膚。
そして、感情の動きに合わせて妖しく明滅する、深紅の義眼。
美しい、鋼鉄の人形。
エレナは鏡の中の自分へ、恐る恐る手を伸ばした。
重さを感じなかった。自分の体が羽毛のように軽い。
だが、拳を握りしめた瞬間、その華奢な腕の中で小型動力炉が唸りを上げるのが聞こえた。
指先一つで鉄骨すら握りつぶせそうな、爆発的なエネルギー。
それが、1年という時間を代償に手に入れた、新しい私。
2
「素晴らしい。完璧な仕上がりだ」
拍手と共に、防弾ガラスの向こうからヴィンセントが現れた。
彼は実験場のコントロールルームに座り、マイク越しにエレナを見下ろしていた。
「気分はどうだい?エレナ。浦島太郎になった気分は」
「……最悪。ナノマシンと特殊鋼材の味がする」
エレナの皮肉に、ヴィンセントは心底嬉しそうに微笑んだ。
「嘆かわしいな。だが、その体には小国の国家予算に匹敵する500億ボルトが投じられているんだ。傷一つ付けないでくれたまえよ?」
ヴィンセントは両手を広げ、演説するように語り出した。
「数年前、国が威信をかけて開発した『第1世代(ファースト)』……重く、燃費の悪い試作品たちは、あくまで実験台に過ぎなかった。だが、君は違う」
彼の目が、宝石を見るような光を帯びる。
「君は、その第1世代の欠点を全て克服し、美しさと致死性を両立させた**『第2世代(セカンド)』**の最初の成功例(オリジン)だ。まさに、黎明の女神だよ」
「……御託はいい。さっさと動かしなさい」
「ハハハ!その強気なところも素晴らしい。さあ、試運転(テストドライブ)といこうか」
ヴィンセントが指を鳴らすと、実験場のゲートが開き、数体の人型ロボットが現れた。
軍事用のアンドロイドだ。両腕には実弾を装備したアサルトライフルが固定されている。
「生き残ってみせたまえ。君がただの鉄屑でないことを証明するんだ」
ブザー音。
同時に、アンドロイドたちが一斉に火を噴いた。
ダダダダダダッ! 数十発の銃弾が、殺意の嵐となってエレナに襲いかかる。
3
(死ぬ――!)
人間だった頃の本能が、恐怖を叫んだ。
だがそれと同時に、魂の奥底から、理不尽な暴力に対する「強烈な憎しみ」が咆哮を上げた。
その瞬間。
エレナの脳内で、何かが「カチリ」と噛み合う音がした。
世界の色が変わった。
灰色の空間に、幾筋もの赤いラインが浮かび上がる。
それは、銃口から放たれた弾丸の「軌道予測線」だった。
『固有能力(ユニークスキル):《クオリア・ブースト》、発動』
『未来確定演算、開始』
『通常AIは論理的な「正解」しか導き出せません』
アイギスの声が脳内で響く。
『ですが、マスターの強い感情(ノイズ)を演算プロセスへ流し込むことで、論理を超えた「奇跡的な解」を強制シミュレートします』
時間が、止まった。
いや、エレナの思考速度が極限まで加速され、世界がスローモーションに見えているのだ。
空中をゆっくりと回転しながら迫る弾丸。
それを撃ったアンドロイドが、次にどの関節を動かし、どこへ照準を修正するか。
0.5秒先の未来が、まるで設計図を見るように手に取るように分かる。
(……見える。止まって見える!)
エレナは一歩、右に踏み出した。
彼女の頬をかすめるはずだった弾丸が、虚空を通り抜ける。
次は左へ。首を傾ける。回転してしゃがみ込む。
それは回避というよりも、あらかじめ決められた振り付けをなぞる「舞踏」だった。
弾丸の雨の中を、銀色の髪をなびかせて優雅に踊る。傷一つ負うことなく。
4
「アイギス。……反撃(ターン)を」
『了解(イエス)。リミッター解除』
エレナは床を蹴った。
ドォンッ!
コンクリートが爆ぜ、彼女の姿がかき消える。音速に迫る加速。
アンドロイドのセンサーが彼女を捉えるよりも速く、エレナは敵の懐に潜り込んでいた。
華奢な拳を振るう。ただの正拳突き。
だが、そこには油圧プレス機数台分の運動エネルギーが乗っていた。
ガギョンッ!!
先頭のアンドロイドの胴体が、紙細工のようにひしゃげ、真ん中から千切れ飛んだ。
オイルと火花が散る中、エレナは止まらない。
二体目の頭部を回し蹴りで粉砕し、三体目の腕を引きちぎって胸に突き刺す。
圧倒的な暴力。一方的な蹂躙。
最後の可動音が止んだ時、実験場には鉄屑の山だけが残されていた。
エレナは静かに息を吐いた。
呼吸の必要はないのに、人間だった頃の癖が抜けない。
そこにはもう鼓動はない。
あるのは小型核融合炉の静かな唸りだけ。
自分の手を見る。鋼鉄を引き裂いたその手は、震えていなかった。
血も出ていない。冷たいほどに、完全だった。
5
「ブラボー!期待以上だ!」
スピーカーからヴィンセントの歓喜の声が響く。
「0.5秒の未来予知と、それを実現する身体能力。……君こそがAIONの最高戦力だ」
エレナは実験場の中心で、冷ややかにヴィンセントを見上げた。
以前の無力な少女はもういない。
カイトを殺した理不尽な世界。それを壊すための「牙」を、私は手に入れた。
「……名前をあげよう」
ヴィンセントが告げる。
「過去を捨て、神に抗う者。コードネームは『エレナ』のままでいい。だが、その意味は変わる」
エレナは胸元のロケットペンダントを――焼け焦げた跡の残る銀色のそれを、強く握りしめた。
中のカイトの写真は、もう見ない。
振り返るのは、全てが終わった時だけだ。
「行きましょう、アイギス。……掃除の時間よ」
『御意のままに、マスター』
破壊の魔女が歩き出す。
その深紅の瞳が、次の獲物を求めて怪しく輝いた。
『システム・再起動(リブート)……開始』
『全神経網、再構築完了。動力炉(ジェネレーター)、臨界点まであと40%』
無機質な電子音が、泥のような意識の底に響いた。
不意に、世界が開けた。
エレナが目を開けると、そこは無菌室のような白い部屋だった。
培養液(バクタ)の満たされたカプセルの中に浮いている。
「おはようございます、マスター」
脳内に直接、鈴を転がすような少女の声が響いた。
視界の端に、小さなフクロウのホログラム・アイコンが表示される。
「私は戦術支援AI『アイギス』。あなたの新しい脳(ニューロン)の一部であり、盾となる者です」
「アイ……ギス……?」
口から出た声には、ノイズが混じっていた。人間の声帯ではない。合成された電子音声だ。
「聞き覚えがない名前ですね。ですが、私の基礎コードには彼の署名(サイン)が刻まれています」
「彼……?」
「はい。カイト様が開発したプログラムです」
「……よろしくね。アイギス」
ふと、視界の端にあるシステム時計に目が止まる。
『経過時間:11ヶ月と14日』
「え……?」
エレナは思考が凍りついた。
「1年……?嘘でしょ、ついさっき手術が……」
「いいえ、事実です。全身の90%を生体適合素材へ置換し、定着させるにはそれだけの時間が必要でした」
培養液が排水され、カプセルが開く。
エレナは床に降り立った。
カイトが死んでから、もう一度季節が巡り、さらに過ぎ去っていた。
世界は私を置いて進んでいた。
その事実に、言いようのない孤独が押し寄せる。
部屋の壁一面が鏡になっていた。
そこに映っていたのは、黒髪の女子大生ではなかった。
月光のように輝く銀色の髪。透き通るような白い人工皮膚。
そして、感情の動きに合わせて妖しく明滅する、深紅の義眼。
美しい、鋼鉄の人形。
エレナは鏡の中の自分へ、恐る恐る手を伸ばした。
重さを感じなかった。自分の体が羽毛のように軽い。
だが、拳を握りしめた瞬間、その華奢な腕の中で小型動力炉が唸りを上げるのが聞こえた。
指先一つで鉄骨すら握りつぶせそうな、爆発的なエネルギー。
それが、1年という時間を代償に手に入れた、新しい私。
2
「素晴らしい。完璧な仕上がりだ」
拍手と共に、防弾ガラスの向こうからヴィンセントが現れた。
彼は実験場のコントロールルームに座り、マイク越しにエレナを見下ろしていた。
「気分はどうだい?エレナ。浦島太郎になった気分は」
「……最悪。ナノマシンと特殊鋼材の味がする」
エレナの皮肉に、ヴィンセントは心底嬉しそうに微笑んだ。
「嘆かわしいな。だが、その体には小国の国家予算に匹敵する500億ボルトが投じられているんだ。傷一つ付けないでくれたまえよ?」
ヴィンセントは両手を広げ、演説するように語り出した。
「数年前、国が威信をかけて開発した『第1世代(ファースト)』……重く、燃費の悪い試作品たちは、あくまで実験台に過ぎなかった。だが、君は違う」
彼の目が、宝石を見るような光を帯びる。
「君は、その第1世代の欠点を全て克服し、美しさと致死性を両立させた**『第2世代(セカンド)』**の最初の成功例(オリジン)だ。まさに、黎明の女神だよ」
「……御託はいい。さっさと動かしなさい」
「ハハハ!その強気なところも素晴らしい。さあ、試運転(テストドライブ)といこうか」
ヴィンセントが指を鳴らすと、実験場のゲートが開き、数体の人型ロボットが現れた。
軍事用のアンドロイドだ。両腕には実弾を装備したアサルトライフルが固定されている。
「生き残ってみせたまえ。君がただの鉄屑でないことを証明するんだ」
ブザー音。
同時に、アンドロイドたちが一斉に火を噴いた。
ダダダダダダッ! 数十発の銃弾が、殺意の嵐となってエレナに襲いかかる。
3
(死ぬ――!)
人間だった頃の本能が、恐怖を叫んだ。
だがそれと同時に、魂の奥底から、理不尽な暴力に対する「強烈な憎しみ」が咆哮を上げた。
その瞬間。
エレナの脳内で、何かが「カチリ」と噛み合う音がした。
世界の色が変わった。
灰色の空間に、幾筋もの赤いラインが浮かび上がる。
それは、銃口から放たれた弾丸の「軌道予測線」だった。
『固有能力(ユニークスキル):《クオリア・ブースト》、発動』
『未来確定演算、開始』
『通常AIは論理的な「正解」しか導き出せません』
アイギスの声が脳内で響く。
『ですが、マスターの強い感情(ノイズ)を演算プロセスへ流し込むことで、論理を超えた「奇跡的な解」を強制シミュレートします』
時間が、止まった。
いや、エレナの思考速度が極限まで加速され、世界がスローモーションに見えているのだ。
空中をゆっくりと回転しながら迫る弾丸。
それを撃ったアンドロイドが、次にどの関節を動かし、どこへ照準を修正するか。
0.5秒先の未来が、まるで設計図を見るように手に取るように分かる。
(……見える。止まって見える!)
エレナは一歩、右に踏み出した。
彼女の頬をかすめるはずだった弾丸が、虚空を通り抜ける。
次は左へ。首を傾ける。回転してしゃがみ込む。
それは回避というよりも、あらかじめ決められた振り付けをなぞる「舞踏」だった。
弾丸の雨の中を、銀色の髪をなびかせて優雅に踊る。傷一つ負うことなく。
4
「アイギス。……反撃(ターン)を」
『了解(イエス)。リミッター解除』
エレナは床を蹴った。
ドォンッ!
コンクリートが爆ぜ、彼女の姿がかき消える。音速に迫る加速。
アンドロイドのセンサーが彼女を捉えるよりも速く、エレナは敵の懐に潜り込んでいた。
華奢な拳を振るう。ただの正拳突き。
だが、そこには油圧プレス機数台分の運動エネルギーが乗っていた。
ガギョンッ!!
先頭のアンドロイドの胴体が、紙細工のようにひしゃげ、真ん中から千切れ飛んだ。
オイルと火花が散る中、エレナは止まらない。
二体目の頭部を回し蹴りで粉砕し、三体目の腕を引きちぎって胸に突き刺す。
圧倒的な暴力。一方的な蹂躙。
最後の可動音が止んだ時、実験場には鉄屑の山だけが残されていた。
エレナは静かに息を吐いた。
呼吸の必要はないのに、人間だった頃の癖が抜けない。
そこにはもう鼓動はない。
あるのは小型核融合炉の静かな唸りだけ。
自分の手を見る。鋼鉄を引き裂いたその手は、震えていなかった。
血も出ていない。冷たいほどに、完全だった。
5
「ブラボー!期待以上だ!」
スピーカーからヴィンセントの歓喜の声が響く。
「0.5秒の未来予知と、それを実現する身体能力。……君こそがAIONの最高戦力だ」
エレナは実験場の中心で、冷ややかにヴィンセントを見上げた。
以前の無力な少女はもういない。
カイトを殺した理不尽な世界。それを壊すための「牙」を、私は手に入れた。
「……名前をあげよう」
ヴィンセントが告げる。
「過去を捨て、神に抗う者。コードネームは『エレナ』のままでいい。だが、その意味は変わる」
エレナは胸元のロケットペンダントを――焼け焦げた跡の残る銀色のそれを、強く握りしめた。
中のカイトの写真は、もう見ない。
振り返るのは、全てが終わった時だけだ。
「行きましょう、アイギス。……掃除の時間よ」
『御意のままに、マスター』
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