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第15話 リバース・コード
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1
アイボリー・タワー最上階。
エレナが踏み込んだ部屋は、床も壁も天井も、すべてが強化ガラスでできた「空中の牢獄」だった。
眼下には、宝石箱をひっくり返したような都市の夜景。
その中心に、ヴィンセントが立っていた。
彼の背後には、回収された母艦「アーク」が接続され、太いケーブルを通じて彼自身にエネルギーを供給している。
「ようこそ、エレナ。……待ちかねたよ」
ヴィンセントは両手を広げた。
エレナは無言で銃を構える。
「ロイを傷つけ、カイトを殺し、私の人生を弄んだ。……ヴィンセント、あなたを破壊する」
「破壊?ふふ、できるかな?」
ヴィンセントが嗤う。
バヂィッ!
彼の高級スーツが内側から弾け飛んだ。
偽りの皮膚が裂け、その下から現れたのは、現代のサイボーグとは一線を画す、白銀の金属骨格だった。
露出した歯車、脈打つチューブ、そして胸中央で輝く巨大な動力炉。それは機械というより、精緻な「時計仕掛けの芸術品」だった。
2.呪われた奇跡
『……やはり、まだその体を使っていたのか』
通信機越しに、サカキの震える声が響いた。悲しみと、悔恨に満ちた声だ。
『ヴィンセント、貴様……自分自身にその機体を移植していたのか』
「久しぶりだね、サカキ先生。懐かしいだろう?君が若き日に設計した最初の子供だ」
ヴィンセントの身体――それは**『プロトタイプ・アダム』**。
数十年前に流行した致死率100%の奇病から、たった一人の友人を救うためだけに、サカキが当時の全財産と技術を注ぎ込んで作り上げた、一点物の生命維持装置。
『私はそれを、君の命を繋ぐために作った……!採算も効率も度外視し、ただ君に生きていて欲しかったからだ!決して、独裁者の鎧にするためではない!』
「使い手が価値を決めるのだよ。私はこの体で『死』を克服した。だが同時に、生の喜びも失った……。だからこそ、私は神になるしかなかったのだ」
ヴィンセントが床を踏みしめる。ただそれだけで、タワー全体が振動した。
「さあ、来たまえ。最高傑作(エレナ)。最新のデジタル技術が、私の純粋な執念(アナログ)に勝てるかな?」
3.アナログの亡霊
エレナは地を蹴った。
**《クオリア・ブースト》**全開。0.5秒先の未来、ヴィンセントの拳が迫るのが見える――はずだった。
(……見えない!?)
未来予知に必要な「電子的な予備動作(パケット信号)」が一切ない。
エレナが戸惑う一瞬の隙に、ヴィンセントの拳が目前に迫っていた。回避――間に合わない。
ドゴォッ!!
エレナの体がボールのように吹き飛ばされ、防弾ガラスに叩きつけられた。
「が、はっ……!なぜ……予測できない!?」
サカキが叫ぶ。『アダムはデジタル変換を行わない**「完全アナログ駆動」**だ!脳の電気信号を、光ファイバーと流体回路でダイレクトに増幅して動いている。遅延(ラグ)ゼロの直結駆動だ!』
「その通り」
ヴィンセントは一歩も動いていない。ただ腕を振るっただけだ。
「今のサイボーグは、脳波をデジタル信号に『翻訳』してから動く。だが私は違う。思考した瞬間に体が動く。0.5秒の予知など、私の0.00秒の反応速度(レフレックス)の前では止まって見えるよ」
ヴィンセントが冷酷に告げる。
「古い?違うな。これこそが『純度』だ。……さあ、演算など捨ててかかって来い」
4
ヴィンセントが手をかざすと、背後のアークから伸びるケーブルが蛇のように蠢き、エレナに向かって伸びてきた。
「君を破壊するのは惜しい。……だから、一つになろう」
ケーブルがエレナの手足を拘束し、吊り上げる。
ヴィンセントが近づき、エレナの頬を金属の指で撫でた。
「君のその『復讐心』という強烈な感情エネルギーを、私に寄越したまえ。そうすれば私は、感情を持つ完全なる神になれる」
「ふざける、な……!」
「カイト君のことなど忘れ、私の中で永遠に生きるんだ。……それこそが、親(私)から子への愛だよ」
歪んでいる。
この男は、自分以外の他者を認めていない。人間そのものを愛せないのだ。
エレナは必死に拘束を解こうとするが、アークの出力で締め上げられ、軋み音が響く。
5
力では勝てない。スペックも、演算能力も、相手が上だ。
万策尽きたか。
違う。エレナはこの時を待っていた――武器なら、ある。
カイトが遺してくれた、ヴィンセントが最も恐れた「最強の武器」が。
エレナは、胸元のペンダントのデータを展開した。
『Project:ReverseCode』
サイボーグを人間に戻すプログラム。
神を気取るこの男にとって、それは「ただの人間」に引きずり下ろされる猛毒のはずだ。
「……サカキ先生。私の聴覚センサーを切って。……アークの制御権を奪い返す準備を」
『な、何をすつもりだ!?』
「お別れのキス」
エレナは、自らの動力炉のリミッターを解除した。
全身が赤熱する。拘束ケーブルが溶解し始める。
6
「無駄なあがきを……!」
ヴィンセントが右腕を突き出す。槍のように尖った指先が、エレナの心臓を貫こうとする。
エレナは、避けなかった。
防御すら捨てて、自らその刃に向かって飛び込んだ。
ズプッ。
金属音が鈍く響く。
ヴィンセントの腕が、エレナの腹部を深々と貫通していた。
「……愚かな。自ら死を選ぶとは」
「いいえ……捕まえたの」
エレナは血を吐きながら笑った。
貫かれた状態で、さらに前へ。ヴィンセントの体に密着する。
そして、自分の首の接続端子からケーブルを伸ばし、ヴィンセントの胸部の傷(かつてサカキが作ったメンテナンスポートの隙間)に強引にねじ込んだ。
「なに……!?」
「受け取って。……これが、あなたが捨てた『人間』」
『リバース・コード、強制執行』
「ぐ、あぁぁああ!?な、なんだこれは……熱い、私のコアが……!?」
バキリ、と嫌な音がした。
ヴィンセントの白銀の胸部装甲が、内側から突き上げられ、亀裂が入る。そこから溢れ出したのは、オイルではない。
――赤黒い、肉の塊だった。
「肉だと……!?馬鹿な、私は全て捨てたはずだ!なぜ私の体の中で、生命が……!」
彼が「認証キー」として残していたわずかな脳幹細胞。
それがリバース・コードによって暴走し、爆発的な細胞分裂を開始する。
彼の完璧な機械の身体を苗床にして、見るも無惨な「人間」へと増殖していく。
精密な歯車に神経が絡みつき、回路を捨てたはずの『肉体』が勝手に再生し押し潰す。
「痛い……痛い、痛いッ!?」
新生した神経が、ヴィンセントの電子脳に、久しく忘れていた信号を叩き込む。 焼けるような痛み。息ができない苦しさ。
それは、彼が神になるために切り離したはずの「生の苦しみ」そのものだった。
「感覚」の再生だ。
風の冷たさ。花の香り。死への恐怖。老いることの不安。
彼が数十年前に切り捨てた「人間としての弱さ」が、洪水となって蘇る。
「やめろ、止まれ……!私は神だ、こんな汚らわしい肉塊に……人間に戻りたくない!!」
「戻るの。……不便で、弱くて、すぐに死んでしまう人間に」
エレナは、肉に侵食され機能不全を起こして痙攣するヴィンセントを抱きしめた。 ヴィンセントの悲鳴が、恐怖に染まる。システムエラーではない。これは、死への原初的な絶叫だ。
ヴィンセントの銀色の瞳から、オイルではない、透明な液体が流れた。
システムが完全に沈黙する。神の鎧は、ただの鉄屑へと成り下がった。
8
「……さようなら」
エレナはヴィンセントを突き放した。
同時に、サカキがハッキングを完了する。背後の母艦アークの砲門が、ゆっくりとこちらを向く。
ターゲットは、ヴィンセント。そして、その至近距離にいるエレナ自身。
『エレナ!離れろ!』
「いいの。……全部、終わらせなきゃ」
エレナは動かないヴィンセントを見下ろした。彼は恐怖に顔を歪め、幼児のように震えていた。
「アイギス。……主砲発射」
『Yes,Master.』
閃光。
タワーの最上階が、純白の光に飲み込まれた。
ガラスの牢獄が砕け散り、キラキラとダイヤモンドダストのように夜空へ舞い上がる。
0.5秒の後、轟音が全てを消し去った。
アイボリー・タワー最上階。
エレナが踏み込んだ部屋は、床も壁も天井も、すべてが強化ガラスでできた「空中の牢獄」だった。
眼下には、宝石箱をひっくり返したような都市の夜景。
その中心に、ヴィンセントが立っていた。
彼の背後には、回収された母艦「アーク」が接続され、太いケーブルを通じて彼自身にエネルギーを供給している。
「ようこそ、エレナ。……待ちかねたよ」
ヴィンセントは両手を広げた。
エレナは無言で銃を構える。
「ロイを傷つけ、カイトを殺し、私の人生を弄んだ。……ヴィンセント、あなたを破壊する」
「破壊?ふふ、できるかな?」
ヴィンセントが嗤う。
バヂィッ!
彼の高級スーツが内側から弾け飛んだ。
偽りの皮膚が裂け、その下から現れたのは、現代のサイボーグとは一線を画す、白銀の金属骨格だった。
露出した歯車、脈打つチューブ、そして胸中央で輝く巨大な動力炉。それは機械というより、精緻な「時計仕掛けの芸術品」だった。
2.呪われた奇跡
『……やはり、まだその体を使っていたのか』
通信機越しに、サカキの震える声が響いた。悲しみと、悔恨に満ちた声だ。
『ヴィンセント、貴様……自分自身にその機体を移植していたのか』
「久しぶりだね、サカキ先生。懐かしいだろう?君が若き日に設計した最初の子供だ」
ヴィンセントの身体――それは**『プロトタイプ・アダム』**。
数十年前に流行した致死率100%の奇病から、たった一人の友人を救うためだけに、サカキが当時の全財産と技術を注ぎ込んで作り上げた、一点物の生命維持装置。
『私はそれを、君の命を繋ぐために作った……!採算も効率も度外視し、ただ君に生きていて欲しかったからだ!決して、独裁者の鎧にするためではない!』
「使い手が価値を決めるのだよ。私はこの体で『死』を克服した。だが同時に、生の喜びも失った……。だからこそ、私は神になるしかなかったのだ」
ヴィンセントが床を踏みしめる。ただそれだけで、タワー全体が振動した。
「さあ、来たまえ。最高傑作(エレナ)。最新のデジタル技術が、私の純粋な執念(アナログ)に勝てるかな?」
3.アナログの亡霊
エレナは地を蹴った。
**《クオリア・ブースト》**全開。0.5秒先の未来、ヴィンセントの拳が迫るのが見える――はずだった。
(……見えない!?)
未来予知に必要な「電子的な予備動作(パケット信号)」が一切ない。
エレナが戸惑う一瞬の隙に、ヴィンセントの拳が目前に迫っていた。回避――間に合わない。
ドゴォッ!!
エレナの体がボールのように吹き飛ばされ、防弾ガラスに叩きつけられた。
「が、はっ……!なぜ……予測できない!?」
サカキが叫ぶ。『アダムはデジタル変換を行わない**「完全アナログ駆動」**だ!脳の電気信号を、光ファイバーと流体回路でダイレクトに増幅して動いている。遅延(ラグ)ゼロの直結駆動だ!』
「その通り」
ヴィンセントは一歩も動いていない。ただ腕を振るっただけだ。
「今のサイボーグは、脳波をデジタル信号に『翻訳』してから動く。だが私は違う。思考した瞬間に体が動く。0.5秒の予知など、私の0.00秒の反応速度(レフレックス)の前では止まって見えるよ」
ヴィンセントが冷酷に告げる。
「古い?違うな。これこそが『純度』だ。……さあ、演算など捨ててかかって来い」
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ヴィンセントが手をかざすと、背後のアークから伸びるケーブルが蛇のように蠢き、エレナに向かって伸びてきた。
「君を破壊するのは惜しい。……だから、一つになろう」
ケーブルがエレナの手足を拘束し、吊り上げる。
ヴィンセントが近づき、エレナの頬を金属の指で撫でた。
「君のその『復讐心』という強烈な感情エネルギーを、私に寄越したまえ。そうすれば私は、感情を持つ完全なる神になれる」
「ふざける、な……!」
「カイト君のことなど忘れ、私の中で永遠に生きるんだ。……それこそが、親(私)から子への愛だよ」
歪んでいる。
この男は、自分以外の他者を認めていない。人間そのものを愛せないのだ。
エレナは必死に拘束を解こうとするが、アークの出力で締め上げられ、軋み音が響く。
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力では勝てない。スペックも、演算能力も、相手が上だ。
万策尽きたか。
違う。エレナはこの時を待っていた――武器なら、ある。
カイトが遺してくれた、ヴィンセントが最も恐れた「最強の武器」が。
エレナは、胸元のペンダントのデータを展開した。
『Project:ReverseCode』
サイボーグを人間に戻すプログラム。
神を気取るこの男にとって、それは「ただの人間」に引きずり下ろされる猛毒のはずだ。
「……サカキ先生。私の聴覚センサーを切って。……アークの制御権を奪い返す準備を」
『な、何をすつもりだ!?』
「お別れのキス」
エレナは、自らの動力炉のリミッターを解除した。
全身が赤熱する。拘束ケーブルが溶解し始める。
6
「無駄なあがきを……!」
ヴィンセントが右腕を突き出す。槍のように尖った指先が、エレナの心臓を貫こうとする。
エレナは、避けなかった。
防御すら捨てて、自らその刃に向かって飛び込んだ。
ズプッ。
金属音が鈍く響く。
ヴィンセントの腕が、エレナの腹部を深々と貫通していた。
「……愚かな。自ら死を選ぶとは」
「いいえ……捕まえたの」
エレナは血を吐きながら笑った。
貫かれた状態で、さらに前へ。ヴィンセントの体に密着する。
そして、自分の首の接続端子からケーブルを伸ばし、ヴィンセントの胸部の傷(かつてサカキが作ったメンテナンスポートの隙間)に強引にねじ込んだ。
「なに……!?」
「受け取って。……これが、あなたが捨てた『人間』」
『リバース・コード、強制執行』
「ぐ、あぁぁああ!?な、なんだこれは……熱い、私のコアが……!?」
バキリ、と嫌な音がした。
ヴィンセントの白銀の胸部装甲が、内側から突き上げられ、亀裂が入る。そこから溢れ出したのは、オイルではない。
――赤黒い、肉の塊だった。
「肉だと……!?馬鹿な、私は全て捨てたはずだ!なぜ私の体の中で、生命が……!」
彼が「認証キー」として残していたわずかな脳幹細胞。
それがリバース・コードによって暴走し、爆発的な細胞分裂を開始する。
彼の完璧な機械の身体を苗床にして、見るも無惨な「人間」へと増殖していく。
精密な歯車に神経が絡みつき、回路を捨てたはずの『肉体』が勝手に再生し押し潰す。
「痛い……痛い、痛いッ!?」
新生した神経が、ヴィンセントの電子脳に、久しく忘れていた信号を叩き込む。 焼けるような痛み。息ができない苦しさ。
それは、彼が神になるために切り離したはずの「生の苦しみ」そのものだった。
「感覚」の再生だ。
風の冷たさ。花の香り。死への恐怖。老いることの不安。
彼が数十年前に切り捨てた「人間としての弱さ」が、洪水となって蘇る。
「やめろ、止まれ……!私は神だ、こんな汚らわしい肉塊に……人間に戻りたくない!!」
「戻るの。……不便で、弱くて、すぐに死んでしまう人間に」
エレナは、肉に侵食され機能不全を起こして痙攣するヴィンセントを抱きしめた。 ヴィンセントの悲鳴が、恐怖に染まる。システムエラーではない。これは、死への原初的な絶叫だ。
ヴィンセントの銀色の瞳から、オイルではない、透明な液体が流れた。
システムが完全に沈黙する。神の鎧は、ただの鉄屑へと成り下がった。
8
「……さようなら」
エレナはヴィンセントを突き放した。
同時に、サカキがハッキングを完了する。背後の母艦アークの砲門が、ゆっくりとこちらを向く。
ターゲットは、ヴィンセント。そして、その至近距離にいるエレナ自身。
『エレナ!離れろ!』
「いいの。……全部、終わらせなきゃ」
エレナは動かないヴィンセントを見下ろした。彼は恐怖に顔を歪め、幼児のように震えていた。
「アイギス。……主砲発射」
『Yes,Master.』
閃光。
タワーの最上階が、純白の光に飲み込まれた。
ガラスの牢獄が砕け散り、キラキラとダイヤモンドダストのように夜空へ舞い上がる。
0.5秒の後、轟音が全てを消し去った。
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