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9 過去の清算
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Aさんが駐車場代金を払いに行っている間に、まだ起きているだろう親に一報を入れた。帰りは遅くなる、と曖昧に濁す。運転席に戻ってきたAさんにまた抱きしめてもらって、緩む顔面を両手で隠した。
いつものドライブとは違い、今日は目的地がある。いつも通りの高速入り口から乗って、いつも通りの道を進んで、だけど途中で分岐した。壁は低く川沿いの夜景が見えた。あちこちから合流する道路に少し緊張し、前を走る赤いランプを見る。ビルの屋上には企業の看板が多くあり、背の高いマンションの廊下が照らされている。部屋の電気はまだ多く点いていて、どこもかしこもキラキラとしていた。
カーブの赤い矢印と点滅するライト。青い行き先看板が知らない地名を載せている。合流してくる車のウィンカー。受け入れその後ろを一定の速度で走る。
いつの間にか道幅は広くなり、あっちこっちに分岐する5車線の道路に出ていた。昼間よりは車通りが少ないだろうに、右に行きたい人も左に行きたい人もいて、ぶつかってしまわないかと心配になった。
一時間ほど走って降りた住宅街。もさもさ生えている葉の向こうにはガソリンスタンドが見えていた。ずっと会話をせずとも高揚感があり、以前感じた重苦しさは微塵もない。うちの近くよりも少ない夜間営業の飲食店。コンビニに寄るために降りたAさんの後姿を目で追った。
Aさんは運転中、土曜日に離婚したんだと話してくれた。
子供が出来なかったAさんと奥さんは「どちらも悪くなかった」という。奥さんのことを嫌いになったわけではなく、別居の始まりは少し距離を置こうという話だった。でもそれがもう四年経つ。離婚を切り出すと奥さんはすんなり応じた。家に残るもので必要なものがあれば、と奥さんの今の住処に運び込めば、そこはすっかり生活の整った環境だった。一時的ではないその部屋を見て、Aさんはとっくに終わっていたんだと感じたらしい。いつか戻れるかもしれない。二人ともそう思っていたのに、そのいつかは来ないだろうともわかっていた。
「自分と合わなくても、他の人だったら合うかもしれない」
奥さんにそう言えば、前向きに考えると返されたという。
「もし本当に困ったことがあって、自分にできることがあったら連絡して」
そうも伝えたというけれど、逆に言えば本当に困るとき以外は自分ではもう何もできないだろうとAさんは小さく笑った。
話を聞いて、Aさんはまだ奥さんを好きなんじゃないかって思った。もし戻れるなら戻った方が良いと、俺の好きな人に対して思ってしまった。Aさんが奥さんのもとに帰るということは俺とはもう会えないってことになるけど、でもそれでいいって思った。
「情はあるけど、もう恋はしてないからね」
Aさんの言ったことは、俺にはまだ分からない。
「こんなことならもっと片付けておけばよかったな」
静かな住宅街に立ち並ぶマンションの一室。開かれたドアに一歩踏み込む。お邪魔しますと靴を脱いで上がれば、部屋の中はところどころ物が出されたままになっていた。
「今日妻の――元妻の荷物を全部出してしまったから」
残るはもうAさんの物だけ。
「これを片付け終わったら随分すっきりするだろうね」
今は散らかっているけれど物の減った部屋を見て言うAさんは少し寂しそうだった。
促され灰色のソファに座る。コップに氷を入れてもらい、余っていたペットボトルのお茶を注ぐ。そのうち冷えるだろうそれを待つ。
隣に座ったAさんは浅く座りソファに体を沈めた。その少しのだらしなさが、ここが彼の家なのだと思わせた。
「キスしたいってイチくんに対して思ってしまったから、離婚に向けて進むことができた」
そのまま眠ってしまいたいのかもしれない。Aさんの口調はゆったりとしていて、まるで寝る前のお伽話を読み聞かせているようだ。
「土曜日、奥さんと会ってたの?」
「彼女も土日休みだから、夜遅くなったとしても話す時間がもらえるだろうと思った。イチくんが泣いてしまったあの日、君のことを守りたいと思った。でも私は既婚者で、イチくんに好きだと伝えるのは……不誠実だし非常識だよね」
キスしたいと言うのがもっと前に間違っているけれど、とAさんは笑う。
「きちんと別れてからイチくんに好きだと伝えたかった。当たり前に断られると思っていたけれど、やましい気持ちを抱えたまま隣に座っていることは出来ないから、伝えた上でそれでも会えるかどうか判断してもらおうとしていた」
来週は来られないとAさんが言った時、奥さんと離婚の話をする予定を頭の中で立てていたのだろう。
「別居の初めの頃は会っていたんだけど、その内用事が無ければ会わなくなった。今回私から連絡した時点で、彼女は察していたみたいだよ」
Aさんの目は半分ほど閉じている。前を向く顔はきっとどこも見ていない。
「正直に好きな子ができたとも言ったんだ。しかもそれが、私は同性愛者ではないと思っていたのに、自分よりずいぶんと年下の男の子だってことも」
「言ったの」
「今日、昼間に彼女と会っていた。思い出話もしたよ」
Aさんの家に来る途中話してくれたことは今日の出来事だったんだろうか。
「馬鹿だねって笑われた。自分たちみたいなおじさんやおばさんを相手にしないでしょって」
「俺」
「そんなことは分かりきってる。でも仕方ないよね。泣く子に対して、一瞬でも自分がどうにかしてあげたいと思っちゃったんだから」
手首を掴まれた。死にかけの目がこっちを向く。
「同じ気持ちでいて欲しいとは言わないよ。でも、出来れば私に頼ってほしい」
消えたがりがネットで出会った男性は、寝ることに難儀していた。俺はこの人に対してうまく寝られるようになって欲しいと願っている。「ああ気持ちよく寝た」と深夜の車内で俺が思ったように。
「Aさん前、俺と会った後少し寝られるって言ってた」
「そうだよ」
「俺も――、俺も出来ることがあるならしたい」
Aさんの目が丸くなる。彼はその腕を伸ばし俺の腰を抱いた。
「ほんとに、参るな」
「Aさん今とか眠そうだし」
「眠気が無くなってしまった」
「えぇー、ダメじゃん……」
力の強まる腕に身を寄せた。俺よりほんの少しだけ背の高いAさんが今はほんの少し下にいる。こつんと額を付け、頬を寄せる。そのままぎゅうっと抱き付いた。
「Aさん」
ぐりぐりと頭を押し付ける。キスしたい。触りたい。ずっと抱き付いていたい。
「Aさん」
キスがしたいと口に出来ず名前を呼んだ。
「イチくん。イチくんがね、本当に良いと思った時には触らせて」
気付いてもらえたんだろうか。背中を撫でる温かい手のひら。でも暗に拒否された触れ合い。"本当に良い時"は今ではないんだろうか。
眠気は去ったと言っていたAさんの意識が途切れがちになっている。
「ここで寝たらだめだよ」
「そうだね」
きちんと返事は返されるけれど、俺を抱きしめたまま目を閉じる。
「布団行こう。あっちの部屋? 寝れるときに寝ようよ」
うんうんと頷くだけの彼を引き起こす。すっかり体の力が抜けている。自分と同じほどの男性を抱えられる力はなかった。
立たせれば幸い歩いてくれたから、勝手に部屋のドアを開けて中を見た。玄関近くの部屋はクローゼットを片付けたのか服が散らかっている。ベッドにもあったそれを床に下ろして、Aさんを寝かせた。
ベッドからはみ出すほど大きなタオルケット。広げふわりと体にかける。
「イチくん、来て」
一度は隠された両腕が出てきた。
「でも俺、この服だとベッド汚しちゃうよ」
外を出歩いていたままの服で人様のベッドに上がることは出来ない。
「良いよそんなの」
投げやりな声にそろそろとタオルケットを上げて横に入った。ベッドはきっと、奥さんがいたときに二人で使っていたんだろう。俺が入っても何ら問題ないサイズでAさんの腕に引き寄せられる。
「少しだけこうさせて」
抱き枕の代わりとして機能することに文句はない。額をAさんの鎖骨に付け、熱を感じる。
タオルケットの中は二人の体温ですぐに温まっていた。カーテンは開いたままで、凹凸のある窓ガラスから外の光が入ってくる。視線を上にやればAさんの喉仏があり、背伸びするようにしてそこに顔を寄せた。くすぐったいのか身じろぐAさんは、俺の髪に手を通し撫でるとすぐに眠ってしまったようだった。
呼吸が変わるのを傍で感じ欠伸が出た。くっついていれば暑いほど。寝てる間にAさんは汗をかいてしまうかもしれない。それで寝苦しさを感じるかもしれない。そうは思うけれど離れる気はなく、力ない腕を俺の体の上に渡した。勝手に抱きしめられているつもりになって、勝手に嬉しくなる。
車内とは違う部屋の電気の下、Aさんはやっぱり疲れた顔をしていた。影に紛れていた目のクマが明るいところでは見て取れて、少しでも寝て欲しいと思うのに今は自分を優先させてしまう。
一定のリズムで動く胸と寝息に俺も眠気を誘われた。ポケットに入れていたスマホを取り出し頭の上に避ける。ヘッドボードでごつんと止まり手を離した。
暑さで目を覚ます。首に汗をかいていた。目の前にあるシャツのボタンに頭の中ではてなが浮かぶ。もぞもぞと動き思い出した。
「目が覚めた?」
「うん。Aさんもう起きてた」
「眠かったら寝ててもいいよ」
「んー」
暑さでかけられていたブランケットを剥けば、寝る前はついていなかった寝室の冷気に襲われた。Aさんの体の下に無理矢理手を突っ込んで抱き付く。ぴったりとくっつけた鼻で匂いを嗅いだ。お返しのように頭を撫でてくれる手。
「Aさん」
「なーに」
「Aさん」
「ここにいるよ」
声が優しくて、顔を埋めたまま笑った。
いつものドライブとは違い、今日は目的地がある。いつも通りの高速入り口から乗って、いつも通りの道を進んで、だけど途中で分岐した。壁は低く川沿いの夜景が見えた。あちこちから合流する道路に少し緊張し、前を走る赤いランプを見る。ビルの屋上には企業の看板が多くあり、背の高いマンションの廊下が照らされている。部屋の電気はまだ多く点いていて、どこもかしこもキラキラとしていた。
カーブの赤い矢印と点滅するライト。青い行き先看板が知らない地名を載せている。合流してくる車のウィンカー。受け入れその後ろを一定の速度で走る。
いつの間にか道幅は広くなり、あっちこっちに分岐する5車線の道路に出ていた。昼間よりは車通りが少ないだろうに、右に行きたい人も左に行きたい人もいて、ぶつかってしまわないかと心配になった。
一時間ほど走って降りた住宅街。もさもさ生えている葉の向こうにはガソリンスタンドが見えていた。ずっと会話をせずとも高揚感があり、以前感じた重苦しさは微塵もない。うちの近くよりも少ない夜間営業の飲食店。コンビニに寄るために降りたAさんの後姿を目で追った。
Aさんは運転中、土曜日に離婚したんだと話してくれた。
子供が出来なかったAさんと奥さんは「どちらも悪くなかった」という。奥さんのことを嫌いになったわけではなく、別居の始まりは少し距離を置こうという話だった。でもそれがもう四年経つ。離婚を切り出すと奥さんはすんなり応じた。家に残るもので必要なものがあれば、と奥さんの今の住処に運び込めば、そこはすっかり生活の整った環境だった。一時的ではないその部屋を見て、Aさんはとっくに終わっていたんだと感じたらしい。いつか戻れるかもしれない。二人ともそう思っていたのに、そのいつかは来ないだろうともわかっていた。
「自分と合わなくても、他の人だったら合うかもしれない」
奥さんにそう言えば、前向きに考えると返されたという。
「もし本当に困ったことがあって、自分にできることがあったら連絡して」
そうも伝えたというけれど、逆に言えば本当に困るとき以外は自分ではもう何もできないだろうとAさんは小さく笑った。
話を聞いて、Aさんはまだ奥さんを好きなんじゃないかって思った。もし戻れるなら戻った方が良いと、俺の好きな人に対して思ってしまった。Aさんが奥さんのもとに帰るということは俺とはもう会えないってことになるけど、でもそれでいいって思った。
「情はあるけど、もう恋はしてないからね」
Aさんの言ったことは、俺にはまだ分からない。
「こんなことならもっと片付けておけばよかったな」
静かな住宅街に立ち並ぶマンションの一室。開かれたドアに一歩踏み込む。お邪魔しますと靴を脱いで上がれば、部屋の中はところどころ物が出されたままになっていた。
「今日妻の――元妻の荷物を全部出してしまったから」
残るはもうAさんの物だけ。
「これを片付け終わったら随分すっきりするだろうね」
今は散らかっているけれど物の減った部屋を見て言うAさんは少し寂しそうだった。
促され灰色のソファに座る。コップに氷を入れてもらい、余っていたペットボトルのお茶を注ぐ。そのうち冷えるだろうそれを待つ。
隣に座ったAさんは浅く座りソファに体を沈めた。その少しのだらしなさが、ここが彼の家なのだと思わせた。
「キスしたいってイチくんに対して思ってしまったから、離婚に向けて進むことができた」
そのまま眠ってしまいたいのかもしれない。Aさんの口調はゆったりとしていて、まるで寝る前のお伽話を読み聞かせているようだ。
「土曜日、奥さんと会ってたの?」
「彼女も土日休みだから、夜遅くなったとしても話す時間がもらえるだろうと思った。イチくんが泣いてしまったあの日、君のことを守りたいと思った。でも私は既婚者で、イチくんに好きだと伝えるのは……不誠実だし非常識だよね」
キスしたいと言うのがもっと前に間違っているけれど、とAさんは笑う。
「きちんと別れてからイチくんに好きだと伝えたかった。当たり前に断られると思っていたけれど、やましい気持ちを抱えたまま隣に座っていることは出来ないから、伝えた上でそれでも会えるかどうか判断してもらおうとしていた」
来週は来られないとAさんが言った時、奥さんと離婚の話をする予定を頭の中で立てていたのだろう。
「別居の初めの頃は会っていたんだけど、その内用事が無ければ会わなくなった。今回私から連絡した時点で、彼女は察していたみたいだよ」
Aさんの目は半分ほど閉じている。前を向く顔はきっとどこも見ていない。
「正直に好きな子ができたとも言ったんだ。しかもそれが、私は同性愛者ではないと思っていたのに、自分よりずいぶんと年下の男の子だってことも」
「言ったの」
「今日、昼間に彼女と会っていた。思い出話もしたよ」
Aさんの家に来る途中話してくれたことは今日の出来事だったんだろうか。
「馬鹿だねって笑われた。自分たちみたいなおじさんやおばさんを相手にしないでしょって」
「俺」
「そんなことは分かりきってる。でも仕方ないよね。泣く子に対して、一瞬でも自分がどうにかしてあげたいと思っちゃったんだから」
手首を掴まれた。死にかけの目がこっちを向く。
「同じ気持ちでいて欲しいとは言わないよ。でも、出来れば私に頼ってほしい」
消えたがりがネットで出会った男性は、寝ることに難儀していた。俺はこの人に対してうまく寝られるようになって欲しいと願っている。「ああ気持ちよく寝た」と深夜の車内で俺が思ったように。
「Aさん前、俺と会った後少し寝られるって言ってた」
「そうだよ」
「俺も――、俺も出来ることがあるならしたい」
Aさんの目が丸くなる。彼はその腕を伸ばし俺の腰を抱いた。
「ほんとに、参るな」
「Aさん今とか眠そうだし」
「眠気が無くなってしまった」
「えぇー、ダメじゃん……」
力の強まる腕に身を寄せた。俺よりほんの少しだけ背の高いAさんが今はほんの少し下にいる。こつんと額を付け、頬を寄せる。そのままぎゅうっと抱き付いた。
「Aさん」
ぐりぐりと頭を押し付ける。キスしたい。触りたい。ずっと抱き付いていたい。
「Aさん」
キスがしたいと口に出来ず名前を呼んだ。
「イチくん。イチくんがね、本当に良いと思った時には触らせて」
気付いてもらえたんだろうか。背中を撫でる温かい手のひら。でも暗に拒否された触れ合い。"本当に良い時"は今ではないんだろうか。
眠気は去ったと言っていたAさんの意識が途切れがちになっている。
「ここで寝たらだめだよ」
「そうだね」
きちんと返事は返されるけれど、俺を抱きしめたまま目を閉じる。
「布団行こう。あっちの部屋? 寝れるときに寝ようよ」
うんうんと頷くだけの彼を引き起こす。すっかり体の力が抜けている。自分と同じほどの男性を抱えられる力はなかった。
立たせれば幸い歩いてくれたから、勝手に部屋のドアを開けて中を見た。玄関近くの部屋はクローゼットを片付けたのか服が散らかっている。ベッドにもあったそれを床に下ろして、Aさんを寝かせた。
ベッドからはみ出すほど大きなタオルケット。広げふわりと体にかける。
「イチくん、来て」
一度は隠された両腕が出てきた。
「でも俺、この服だとベッド汚しちゃうよ」
外を出歩いていたままの服で人様のベッドに上がることは出来ない。
「良いよそんなの」
投げやりな声にそろそろとタオルケットを上げて横に入った。ベッドはきっと、奥さんがいたときに二人で使っていたんだろう。俺が入っても何ら問題ないサイズでAさんの腕に引き寄せられる。
「少しだけこうさせて」
抱き枕の代わりとして機能することに文句はない。額をAさんの鎖骨に付け、熱を感じる。
タオルケットの中は二人の体温ですぐに温まっていた。カーテンは開いたままで、凹凸のある窓ガラスから外の光が入ってくる。視線を上にやればAさんの喉仏があり、背伸びするようにしてそこに顔を寄せた。くすぐったいのか身じろぐAさんは、俺の髪に手を通し撫でるとすぐに眠ってしまったようだった。
呼吸が変わるのを傍で感じ欠伸が出た。くっついていれば暑いほど。寝てる間にAさんは汗をかいてしまうかもしれない。それで寝苦しさを感じるかもしれない。そうは思うけれど離れる気はなく、力ない腕を俺の体の上に渡した。勝手に抱きしめられているつもりになって、勝手に嬉しくなる。
車内とは違う部屋の電気の下、Aさんはやっぱり疲れた顔をしていた。影に紛れていた目のクマが明るいところでは見て取れて、少しでも寝て欲しいと思うのに今は自分を優先させてしまう。
一定のリズムで動く胸と寝息に俺も眠気を誘われた。ポケットに入れていたスマホを取り出し頭の上に避ける。ヘッドボードでごつんと止まり手を離した。
暑さで目を覚ます。首に汗をかいていた。目の前にあるシャツのボタンに頭の中ではてなが浮かぶ。もぞもぞと動き思い出した。
「目が覚めた?」
「うん。Aさんもう起きてた」
「眠かったら寝ててもいいよ」
「んー」
暑さでかけられていたブランケットを剥けば、寝る前はついていなかった寝室の冷気に襲われた。Aさんの体の下に無理矢理手を突っ込んで抱き付く。ぴったりとくっつけた鼻で匂いを嗅いだ。お返しのように頭を撫でてくれる手。
「Aさん」
「なーに」
「Aさん」
「ここにいるよ」
声が優しくて、顔を埋めたまま笑った。
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