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20 準備
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-20- 藍染
可哀想なことになる前に、アドバイスの通り俺はムラサキから離れることにした。
篠原さんには申し訳なかったけどバイトを辞めることにしたし、合わせなければ他では偶然にも会うことなんか滅多に無い。
トークアプリで些細なことを話すのもやめた。
そうして一週間経ち、二週間経ち。
離れると心に決めたからといっても今までも会わない時間なんか当然同じ程あり何も変わらない。
俺も何も変わらなかった。
そうして変わらないままムラサキに会い、状況は変わってしまった。
薄れかけていたあの声が再び脳みそに刻み込まれる。
結局俺は篠原さんのバイトに戻ることになって、理由として使った実際にあった面倒くさい学校の用事を済ませ、クリスマスセールの時には行くように約束した。
よかった、ほんとうによかったと篠原さんは電話で喜んでくれたが、あの人はもしかしたら今既にあんまり寝れていないのかも知れない。
告白されてから毎日、あの乗換駅で会える時はムラサキに会い、俺が遅くなる時でも彼はうちまで少しだけ俺の顔を見に来た。恋人じゃなかったらストーカーとして捕まってますね、と本人がいうほどに。
でも抱きしめて、軽くキスをしてそれで終わり。
あの時みたいに求められることはなく、それが何とももどかしかった。
俺は男だし、アイツも男だ。触り合えばすぐに高ぶってしまうことだってもう二度知っているのに。
カチリ、ブラウザのシークレットウィンドウを立ち上げる。
文字を打つのにもドキドキしながら、検索をかける。
『男同士のセックス』
表示される一番上のサイトから順に目を通す。
茶化すわけでもなく真面目に普通のことにように説明される文字達。
知らなければ怖いと思うことが、ただ文字を追うだけで『知らない』『怖い』の枠から外れていく。
俺が普通ではないと内心思っていたことが薄れていく。
綺麗にするために必要なものは? どうやって? ってサイトの中の文字列をそのままドラッグして更に検索をかける。
新しいタブが開いてまたそれを見ていく。
知ったふりでも簡単に知識は得られて、そんなもんなんだってひとりごちた。
必要な準備を頭の中で進め、所々立ち止まる。
不安と心配はあれど、自分がされる側になることに対して嫌悪はなかった。
実際どうなるかはわからないけど、それはどちらかというとムラサキの問題だと思った。したいと思っていたとしても、その時になったら女の子とは違うんだから無理だってなるかもしれない。そうなったらそれは流石に、責められない。
ただ心配が少しでも無くなるように準備することにした。
『準備』を実行に移す時にまた戸惑いが生じる。これはもう単純に恥ずかしいから。
いやでもネットで買うと履歴が残るんだよなぁ、それの方が恥ずかしいよなぁってあまり行かない少し離れたドラッグストアに買い物に行く。
今まで買ったことがないものだから探すのに少し時間がかかる。どうにか見つけ、今は必要としていない風邪薬と共にレジを通した。
買い物してる間中、ずっと自分にこれは医薬品だって言い聞かせてた。でないと顔に出てしまいそうだった。
店員さんは客が何を買っていようと気にしないし興味がないって思うけど、初めて手にしたそれが自分にとって恥ずかしかった。これはまだ俺にとっては普通じゃない。
逃げるように家に帰り、書かれた説明書を読む。
トイレに行きズボンを脱いで、先にウォシュレットで洗う。一つ封を開けると、深く息を吐いて、後ろから探るように自分のお尻にそれを挿した。
実際効果が出るまでどれほど掛かるのか、目安は目安でしか無く自分の体で試すしか無かった。
その時になって失敗するなんて嫌だし、不安は早くなくしてしまいたい。
ゴミを捨てもう一度説明書に目を通して、隠すように棚の中の薬箱の底にしまった。
少しの間を置いてまたトイレに向かう。
俺こんなことしてるけど本当にやるのかなって頭の何処かで突然冷静になった。まぁこの機会じゃなくても役に立つことがあるかも知れないしとよくわからないものを頼りに済ませる。
自分の調子がわからないものだから、相変わらずドキドキしながら時間を過ごす。
『準備』はさっきの段階で済んでいて、その後どうなるかだけ心配だった。時間を潰すようにゲームをして、一戦終わるごとに用もないのにトイレに行って確認した。
時間が経っても汚れが垂れることはなく、全部出してしまえば後は大丈夫かと少しだけ安心する。
自分でそこをいじることはさすがにできなくて、更にこれを準備したところでキス以上のことをしていないのに必要あるのかとか思ったりもして。
自分から誘う? 準備しましたって? そんな難易度高いことある?
女の子とは違う体。体内洗浄してなければとてもじゃないけど触れはしない。
綺麗にしたとしてもどうしたって完璧はない。それが現実としてあって、そこが引っかかって行為に至れなかったとしても仕方ないよなって思う。
仕方ないとよくよく理解し思いながら、できればしたい、してほしいって期待をしてる。でなければこんなことはしていない。
可哀想なことになる前に、アドバイスの通り俺はムラサキから離れることにした。
篠原さんには申し訳なかったけどバイトを辞めることにしたし、合わせなければ他では偶然にも会うことなんか滅多に無い。
トークアプリで些細なことを話すのもやめた。
そうして一週間経ち、二週間経ち。
離れると心に決めたからといっても今までも会わない時間なんか当然同じ程あり何も変わらない。
俺も何も変わらなかった。
そうして変わらないままムラサキに会い、状況は変わってしまった。
薄れかけていたあの声が再び脳みそに刻み込まれる。
結局俺は篠原さんのバイトに戻ることになって、理由として使った実際にあった面倒くさい学校の用事を済ませ、クリスマスセールの時には行くように約束した。
よかった、ほんとうによかったと篠原さんは電話で喜んでくれたが、あの人はもしかしたら今既にあんまり寝れていないのかも知れない。
告白されてから毎日、あの乗換駅で会える時はムラサキに会い、俺が遅くなる時でも彼はうちまで少しだけ俺の顔を見に来た。恋人じゃなかったらストーカーとして捕まってますね、と本人がいうほどに。
でも抱きしめて、軽くキスをしてそれで終わり。
あの時みたいに求められることはなく、それが何とももどかしかった。
俺は男だし、アイツも男だ。触り合えばすぐに高ぶってしまうことだってもう二度知っているのに。
カチリ、ブラウザのシークレットウィンドウを立ち上げる。
文字を打つのにもドキドキしながら、検索をかける。
『男同士のセックス』
表示される一番上のサイトから順に目を通す。
茶化すわけでもなく真面目に普通のことにように説明される文字達。
知らなければ怖いと思うことが、ただ文字を追うだけで『知らない』『怖い』の枠から外れていく。
俺が普通ではないと内心思っていたことが薄れていく。
綺麗にするために必要なものは? どうやって? ってサイトの中の文字列をそのままドラッグして更に検索をかける。
新しいタブが開いてまたそれを見ていく。
知ったふりでも簡単に知識は得られて、そんなもんなんだってひとりごちた。
必要な準備を頭の中で進め、所々立ち止まる。
不安と心配はあれど、自分がされる側になることに対して嫌悪はなかった。
実際どうなるかはわからないけど、それはどちらかというとムラサキの問題だと思った。したいと思っていたとしても、その時になったら女の子とは違うんだから無理だってなるかもしれない。そうなったらそれは流石に、責められない。
ただ心配が少しでも無くなるように準備することにした。
『準備』を実行に移す時にまた戸惑いが生じる。これはもう単純に恥ずかしいから。
いやでもネットで買うと履歴が残るんだよなぁ、それの方が恥ずかしいよなぁってあまり行かない少し離れたドラッグストアに買い物に行く。
今まで買ったことがないものだから探すのに少し時間がかかる。どうにか見つけ、今は必要としていない風邪薬と共にレジを通した。
買い物してる間中、ずっと自分にこれは医薬品だって言い聞かせてた。でないと顔に出てしまいそうだった。
店員さんは客が何を買っていようと気にしないし興味がないって思うけど、初めて手にしたそれが自分にとって恥ずかしかった。これはまだ俺にとっては普通じゃない。
逃げるように家に帰り、書かれた説明書を読む。
トイレに行きズボンを脱いで、先にウォシュレットで洗う。一つ封を開けると、深く息を吐いて、後ろから探るように自分のお尻にそれを挿した。
実際効果が出るまでどれほど掛かるのか、目安は目安でしか無く自分の体で試すしか無かった。
その時になって失敗するなんて嫌だし、不安は早くなくしてしまいたい。
ゴミを捨てもう一度説明書に目を通して、隠すように棚の中の薬箱の底にしまった。
少しの間を置いてまたトイレに向かう。
俺こんなことしてるけど本当にやるのかなって頭の何処かで突然冷静になった。まぁこの機会じゃなくても役に立つことがあるかも知れないしとよくわからないものを頼りに済ませる。
自分の調子がわからないものだから、相変わらずドキドキしながら時間を過ごす。
『準備』はさっきの段階で済んでいて、その後どうなるかだけ心配だった。時間を潰すようにゲームをして、一戦終わるごとに用もないのにトイレに行って確認した。
時間が経っても汚れが垂れることはなく、全部出してしまえば後は大丈夫かと少しだけ安心する。
自分でそこをいじることはさすがにできなくて、更にこれを準備したところでキス以上のことをしていないのに必要あるのかとか思ったりもして。
自分から誘う? 準備しましたって? そんな難易度高いことある?
女の子とは違う体。体内洗浄してなければとてもじゃないけど触れはしない。
綺麗にしたとしてもどうしたって完璧はない。それが現実としてあって、そこが引っかかって行為に至れなかったとしても仕方ないよなって思う。
仕方ないとよくよく理解し思いながら、できればしたい、してほしいって期待をしてる。でなければこんなことはしていない。
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