Art Crime Team

煮卵

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A.C.T1

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事の発端は、FBI美術捜査チームからある一人の特別捜査官が更迭された事である。
ワシントンにある連邦捜査局の美術犯罪科に朝ジュリアンが出勤すると、
遠くでこちらへ来るように促す人影がある。グレイ・ケストナー特別捜査官だ。ガラス張りの彼のオフィスに通される
「どうしました?」
本来特別捜査官同士、グレイとジュリアンに上下関係はない。だが、局に入りたての頃グレイに捜査のイロハを習ったこともありジュリアンはグレイにはつい改まった口調になってしまっていた。グレイの方も最初は「もっとフラットで良い」と声を掛けていたが、いつしかジュリアンが慣れるまでと待つ姿勢に変えたようだった。
「ボブが審査会に招集された」
ボブーーロバート・ウォレス捜査官はこのチームを引っ張る凄腕の潜入捜査官だ。連邦捜査局にはその公平性を保つため、局内に審査会がある。ボブの名誉のために言っておくと、決して彼が違法な行為をしたわけではない。かけられている証拠偽造の容疑は明らかにでっち上げられたもので、おそらく審査会が彼を罪に問うことはないだろう。告発者の名前は公表されないが、恐らくは彼が現在潜入操作を行なっている「海鼠」を狙う組織犯罪局の差し金だろう。
麻薬取引でも有名で、親しくなった内部関係者サニーには北イタリアからの密輸ルートを握っている容疑もある。誰も傷つけない美術犯罪よりも、被害者のいる犯罪へというのが局全体に蔓延している偽らざる思考で、ボブをはじめとする美術犯罪班は自らの目的と組織全体の利益を後者をかなり多めに見積もって行動していたがそれでもなお、彼らはお気に召さなかったらしい。
「いつからですか?」
「来週からだ。ボブはそれ以降、この捜査に関われなくなる」
もう、後数日。絶望的な気持ちで書類に目を落とす。
ターゲットはラウル・デュフィの小さな作品、初動が早かったために奇跡的に国内にあるうちに居所をつかむことができた。このままサニーを向こうに渡してしまえばおそらくこの作品は香港で売りさばかれ二度と日の目を見ることがないかもしれない。
「人事局は二人、ボブの代役を補充してくれるそうだ」
ホワイトカラー犯罪(賄賂やサイバー犯罪)の捜査官、そしてもう一人は、
「再来週の着任になるが、ニューヨークのジョン・ジェイ・カレッジから美術犯罪が専門の教授を呼んでいる」
「大学教授!?」
ジュリアンは思わず不安げな声をあげた。  
彼の従兄弟に大学教授がいる。穏やかで知的でもの静かと言う言葉が服を着て歩いているような人物だった。ボブが日常的にギャングやマフィア達とかわしている会話を聞かせたら、大げさではなく失神してしまうかもしれない。
「着任は1ヶ月くらい後になると思うよ。現在受け持っている仕事が終わったら正式に契約を取り交わすことになっている」
「そりゃあ…頼りになりそうですね…」
皮肉たっぷりのジュリアンの言葉にグレイが何か言いかけた時に、部屋の内線がなった。受話器を取り2、3言話すとジャケットを羽織りながらたちあがる
「ボブから、新しい報告があるそうだ。ブリーフィングルームへ」
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