用法用量を守って正しくお使いください

煮卵

文字の大きさ
13 / 19

13

しおりを挟む
名古屋に帰り、プロジェクトは本格的に進んでいった。当初予定していたよりも予算が増えたことで、人員や資材の確保などが急ピッチで行われることになったのだ。それに伴い、東京出張の機会も増えることになったが、幸いなことに曽宮と顔を合わせる機会はなかった。曽宮自身が別プロジェクトの方で忙しくなり、こちらには本格的に参加しなくなったからだ。チャットソフトで時折全体に向けてメンションすると、いち早く反応して丁寧に返信してくれるが、それ以外の接点はほとんどなかった。
そんなある日、今日の目標分を午前中で終わらせると、午後からは資料の作成を始めた。作業に没頭しているとあっという間に時間が過ぎていった。気がつくと時計の針は19時を指している。そろそろ帰ろうかと思った時だった。不意にドアがノックされたので返事をすると、そこに立っていた人物に驚くことになる。
「・・・曽宮さん?」
彼はペコリと頭を下げた。
「すみません、お仕事中でしたか?」
申し訳なさそうに言う姿を見て首を振ると言った。
「いえ、ちょうど終わったところですから大丈夫ですよ」
勤めて笑顔で答えた。内心ドキドキしていたが平静を装っていた。何しろ久しぶりに会うのだから緊張してしまうのも無理はないだろう。すると、曽宮は少し恥ずかしそうにしながら言った。
「浜松で商談があったから、こっちに宿を取ったんですが、予約がちゃんと取れてなかったんですよ」
「え、それは大変ですね。」
「明日東京支社で会議があるので名古屋で泊まれるとよかったんですけど。まあ、まだ新幹線もあるし帰って朝イチかなあって途方に暮れていて」
「・・・もしよければ、僕の部屋に来ますか?」
曽宮が顔を上げる。その表情は驚いていたものの嬉しそうでもあった。
「もちろん無理にとは言いませんけど」
すると彼は首を横に振った。
「いえ、助かります。いいんですか?」
それを聞いてホッと胸を撫で下ろす。断られたらどうしようと思っていたからだ。
田中の家は郊外にある一軒家で元々は両親が住んでいたが両親が引退して父の実家の長野に移り住んでからは一人で使っていた。余っている部屋ならたくさんある。もし気まずくなっても別の部屋で寝ればいい。
「商品の在庫もあってあまり綺麗ではないですがそれでもよければどうぞ」
自分の住んでいる家に曽宮を案内する。その間は他愛もない会話をしながら歩いていたのだが、それが楽しいと思った。リビングに曽宮を通すと、考えてみれば二人きりなのだということを改めて意識してしまった。途端に緊張感が高まるのを感じる。心臓の音がうるさいくらいに鳴っていて、今にも破裂してしまいそうだった。

ーーーー
↓↓エール、お気に入り、投票お願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

黒の執愛~黒い弁護士に気を付けろ~

ひなた翠
BL
小野寺真弥31歳。 転職して三か月。恋人と同じ職場で中途採用の新人枠で働くことに……。 朝から晩まで必死に働く自分と、真逆に事務所のトップ2として悠々自適に仕事をこなす恋人の小林豊28歳。 生活のリズムも合わず……年下ワンコ攻め小林に毎晩のように求められてーー。 どうしたらいいのかと迷走する真弥をよそに、熱すぎる想いをぶつけてくる小林を拒めなくて……。 忙しい大人の甘いオフィスラブ。 フジョッシーさんの、オフィスラブのコンテスト参加作品です。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

年上の恋人は優しい上司

木野葉ゆる
BL
小さな賃貸専門の不動産屋さんに勤める俺の恋人は、年上で優しい上司。 仕事のこととか、日常のこととか、デートのこととか、日記代わりに綴るSS連作。 基本は受け視点(一人称)です。 一日一花BL企画 参加作品も含まれています。 表紙は松下リサ様(@risa_m1012)に描いて頂きました!!ありがとうございます!!!! 完結済みにいたしました。 6月13日、同人誌を発売しました。

溺愛前提のちょっといじわるなタイプの短編集

あかさたな!
BL
全話独立したお話です。 溺愛前提のラブラブ感と ちょっぴりいじわるをしちゃうスパイスを加えた短編集になっております。 いきなりオトナな内容に入るので、ご注意を! 【片思いしていた相手の数年越しに知った裏の顔】【モテ男に徐々に心を開いていく恋愛初心者】【久しぶりの夜は燃える】【伝説の狼男と恋に落ちる】【ヤンキーを喰う生徒会長】【犬の躾に抜かりがないご主人様】【取引先の年下に屈服するリーマン】【優秀な弟子に可愛がられる師匠】【ケンカの後の夜は甘い】【好きな子を守りたい故に】【マンネリを打ち明けると進み出す】【キスだけじゃあ我慢できない】【マッサージという名目だけど】【尿道攻めというやつ】【ミニスカといえば】【ステージで新人に喰われる】 ------------------ 【2021/10/29を持って、こちらの短編集を完結致します。 同シリーズの[完結済み・年上が溺愛される短編集] 等もあるので、詳しくはプロフィールをご覧いただけると幸いです。 ありがとうございました。 引き続き応援いただけると幸いです。】

十年越しの恋心、叶えたのは毒でした。

碓氷雅
BL
支配や管理で愛情を伝えんとするDomとそれに応えることで愛情を伝えんとするSub。 そんなDom/Subユニバースの世界。 十年、忘れることはなかった初恋の相手を、とある会場で見かける。 「ワインのすべてに青酸カリを入れた!」その一言でパニックに陥った中のことだった。その相手はワイングラスを傾けていて――?! ▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀▷◀ 第二章を書き終わりましたので小出しにしていこうと思います。

処理中です...