2 / 25
無慈悲な展開
2
しおりを挟む
王国と帝国の間には緩衝地帯がある。王子の狩猟用の屋敷と接しているそこは、何百年もの間不可侵条約が結ばれている。両国その土地に野心がなかったわけではもちろんない。理由はその土地にぽっかり穴を開けたダンジョンとその主人のせいだ。
「全てを統べる者」と呼ばれるその魔術師は全ての元素の魔法を操る強大な魔力を有しており「魔王」とも呼ばれていた。
このゲーム「ジャルダン・デ・ローズ」通称「薔薇庭」ではダウンロードコンテンツとして用意されており、囚われたマリーテレーズを親密度を最も深めたパートナーと共に奪還するシナリオで、制作途中まで俺は関わっていた。
(確か魔王の名前までは俺の方で候補決めたんだよな……)
まー、要するに、結ばれた二人がイチャラブするためのダンジョンだ。
その後多忙を極めたこともあり、何に決まったか今はどうしても思い出せなかったが、
お互いの心のうちを確かめ合う、精神的なものばかりで物理的に傷つくものはなかったはずだ。
国王が退室すると、アーベルは項垂れたまま「はぁ」と深いため息をつく。
「大丈夫か?」
心配になって俺が声をかけると、彼は俺の顔を見たまま頷いた。
「うん……ただ……」
そこまで言うと言いにくそうに口をつぐみ目を伏せる。何か懸念がある様子だったので続きを促すと彼は口を開いた。
「こんな危険なことに……君を連れて行きたくないんだ。今回は辞退してほしい」
その言葉を聞いたとき、俺は思わず吹き出してしまった。
きょとんとした顔でこちらを見る彼に、慌てて手を振る。
「あ、ごめん。馬鹿にしたわけじゃない」
でも確かに彼は不安だろうと思う。国王直々の勅命とはいえ、困難な任務だ。
「心配すんな。俺はアーベルの味方だよ。一緒に頑張ろうな」
そう言って彼の肩を叩くと、彼は少し驚いたような顔をした後、小さく微笑んだ。その笑顔にはもう陰りは見えなかった。
「明日叔父上に相談してみようか」
「アルノルト伯に?」
「叔父上は一度あのダンジョンに入ったことがあるはずなんだ」
ダンジョンに入ったものが過去いたとは初耳だった。だが、アーベルの父である国王の弟、つまり叔父のアルノルト伯は冒険者として諸国を旅していた時期がある。あり得ない話ではなかった。
「まあでも、とりあえず相談してみる価値はあるんじゃないか」
俺がそう言うと、アーベルは素直に頷いた。
「全てを統べる者」と呼ばれるその魔術師は全ての元素の魔法を操る強大な魔力を有しており「魔王」とも呼ばれていた。
このゲーム「ジャルダン・デ・ローズ」通称「薔薇庭」ではダウンロードコンテンツとして用意されており、囚われたマリーテレーズを親密度を最も深めたパートナーと共に奪還するシナリオで、制作途中まで俺は関わっていた。
(確か魔王の名前までは俺の方で候補決めたんだよな……)
まー、要するに、結ばれた二人がイチャラブするためのダンジョンだ。
その後多忙を極めたこともあり、何に決まったか今はどうしても思い出せなかったが、
お互いの心のうちを確かめ合う、精神的なものばかりで物理的に傷つくものはなかったはずだ。
国王が退室すると、アーベルは項垂れたまま「はぁ」と深いため息をつく。
「大丈夫か?」
心配になって俺が声をかけると、彼は俺の顔を見たまま頷いた。
「うん……ただ……」
そこまで言うと言いにくそうに口をつぐみ目を伏せる。何か懸念がある様子だったので続きを促すと彼は口を開いた。
「こんな危険なことに……君を連れて行きたくないんだ。今回は辞退してほしい」
その言葉を聞いたとき、俺は思わず吹き出してしまった。
きょとんとした顔でこちらを見る彼に、慌てて手を振る。
「あ、ごめん。馬鹿にしたわけじゃない」
でも確かに彼は不安だろうと思う。国王直々の勅命とはいえ、困難な任務だ。
「心配すんな。俺はアーベルの味方だよ。一緒に頑張ろうな」
そう言って彼の肩を叩くと、彼は少し驚いたような顔をした後、小さく微笑んだ。その笑顔にはもう陰りは見えなかった。
「明日叔父上に相談してみようか」
「アルノルト伯に?」
「叔父上は一度あのダンジョンに入ったことがあるはずなんだ」
ダンジョンに入ったものが過去いたとは初耳だった。だが、アーベルの父である国王の弟、つまり叔父のアルノルト伯は冒険者として諸国を旅していた時期がある。あり得ない話ではなかった。
「まあでも、とりあえず相談してみる価値はあるんじゃないか」
俺がそう言うと、アーベルは素直に頷いた。
91
あなたにおすすめの小説
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
処刑された記憶とともに、BLゲームに登場する悪役会計に転生したことに気付く。処刑されないために、チャラ男としての仮面を被り、生徒会長に媚び売ったり、どうにか能力を駆使したりして生きてたら、色々な人に構われる話。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したので闇の『魅了』スキルで攻略対象の男たちをカップリングしていきます
カタリベかたる
BL
乙女ゲーム『没落貴族の令嬢ですが、婚約破棄した第7王子と氷の貴公子と呼ばれる次期公爵がなぜか溺愛してきますっっっTHE GAME』に登場する悪役令嬢に転生して、闇の魔法の一つである『魅了』スキルを手に入れた私。ある日、ゲームのシナリオに沿って、攻略対象の王子を闇の魔法で魅了しようとしたんだけど、どういうわけか王子は私の兄に魅了されてしまって・・・でもこれはアリだわ!
転生した世界で、さらに新たな世界に目覚めてしまった悪役令嬢と、彼女をめぐる(めぐらない)攻略対象たちが勝手に繰り広げる、主人公不在ラブストーリー。
最可愛天使は儚げ美少年を演じる@勘違いってマジ??
雨霧れいん
BL
《 男子校の華 》と呼ばれるほどにかわいく、美しい少年"依織のぞ"は社会に出てから厳しさを知る。
いままでかわいいと言われていた特徴も社会に出れば女々しいだとか、非力だとか、色々な言葉で貶された。いつまでもかわいいだけの僕でいたい!いつしか依織はネットにのめり込んだ。男の主人公がイケメンに言い寄られるゲーム、通称BLゲーム。こんな世界に生まれたかった、と悲しみに暮れ眠りについたが朝起きたらそこは大好きなBLゲームのなかに!?
可愛い可愛い僕でいるために儚げ男子(笑)を演じていたら色々勘違いされて...!?!?
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ
椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!
動物アレルギーのSS級治療師は、竜神と恋をする
葉空
BL
SS級治療師、ルカ。それが今世の俺だ。
前世では、野犬に噛まれたことで狂犬病に感染し、死んでしまった。次に目が覚めると、異世界に転生していた。しかも、森に住んでるのは獣人で人間は俺1人?!しかも、俺は動物アレルギー持ち…
でも、彼らの怪我を治療出来る力を持つのは治癒魔法が使える自分だけ…
優しい彼が、唯一触れられる竜神に溺愛されて生活するお話。
転生?憑依? 中身おっさんの俺は異世界で無双しない。ただし予想の斜め上は行く!
くすのき
BL
最初に謝っておきます!
漬物業界の方、マジすまぬ。
&本編完結、番外編も!
この話は――三十路の男が、ある日突然、ラシェル・フォン・セウグとして異世界におりたち、ひょんな事から助けた8歳の双子と婚約して、ゴ◯チュウもどきから授かった力で回復薬(漬物味)を作って、なんか頑張るコメディーBLです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる