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風雲急を告げる
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大聖堂を出て、一旦時計台の下の俺の部屋に行くことになった。王宮の南側の橋を渡り、市場の方へ出ていく。白い大理石でできた宮殿から、木組みに漆喰を合わせた素朴な建物へと移り変わり、行き交う人も猥雑になっていく。
久しぶりに帰ってきた時計塔の下の我が家は住んでいた時以上に埃っぽくなっていた。
「うは・・・っ。やっぱ7日に一回くらいは掃除に帰らないとな」
「けほ・・まあ、でも資料を取りにきただけだから」
アーベルがドアを開け、適当な棒をドアの下に突き刺してドアストッパーにする。
そのドア数トッパーにした棒、おそらく魔法のワンドっぽいが……まあ、いいか。
俺も急いで反対側の窓を開けた。涼しい昼下がりの風が室内に吹き抜ける。
「全てを統べるもの」はかなり高位の精霊使いだと聞いている。この部屋の以前の持ち主は精霊使いのようで精霊魔法に関する本がいくつかあった。帝国側の精霊使いの名前を連ねた書物もあったので、それを調べにきたのだ。
舞う埃を手で払いながら分厚い本を開く書物には精霊使いの名が並び、支配している精霊の数ごとに記されていた。
そして七種類すべてを操れる者は、ただ一人。
――ゼムク・ヴァインベルガー。
二つ名を「全て統べるもの」
瞬間、頭の奥で古い映像が蘇った。
大学の会議室、企画書をまとめていた夜。右上には大きなゼムクリップ。
「いきなり魔王の名前だけ考えてって……無茶言うな」
苦笑しながら、ペンで書き込んだ。
『魔王ゼムク』
……安直にもほどがある。
(……マジかよ)
ぞっとする感覚に包まれたその時――
ガシャーン!
時計塔側の窓が粉々に砕け、冷たい風が吹き込む。
窓枠を破って姿を現したのは――
ゼムクだった。
「……ゼムク!」
アーベルが名を呼ぶ。
黒衣を翻し、銀の瞳が俺たちを射抜いた。
部屋の空気が一気に張り詰める。
「全てを統べるもの」――ゼムク・ヴァインベルガーと俺たちは対峙した。
久しぶりに帰ってきた時計塔の下の我が家は住んでいた時以上に埃っぽくなっていた。
「うは・・・っ。やっぱ7日に一回くらいは掃除に帰らないとな」
「けほ・・まあ、でも資料を取りにきただけだから」
アーベルがドアを開け、適当な棒をドアの下に突き刺してドアストッパーにする。
そのドア数トッパーにした棒、おそらく魔法のワンドっぽいが……まあ、いいか。
俺も急いで反対側の窓を開けた。涼しい昼下がりの風が室内に吹き抜ける。
「全てを統べるもの」はかなり高位の精霊使いだと聞いている。この部屋の以前の持ち主は精霊使いのようで精霊魔法に関する本がいくつかあった。帝国側の精霊使いの名前を連ねた書物もあったので、それを調べにきたのだ。
舞う埃を手で払いながら分厚い本を開く書物には精霊使いの名が並び、支配している精霊の数ごとに記されていた。
そして七種類すべてを操れる者は、ただ一人。
――ゼムク・ヴァインベルガー。
二つ名を「全て統べるもの」
瞬間、頭の奥で古い映像が蘇った。
大学の会議室、企画書をまとめていた夜。右上には大きなゼムクリップ。
「いきなり魔王の名前だけ考えてって……無茶言うな」
苦笑しながら、ペンで書き込んだ。
『魔王ゼムク』
……安直にもほどがある。
(……マジかよ)
ぞっとする感覚に包まれたその時――
ガシャーン!
時計塔側の窓が粉々に砕け、冷たい風が吹き込む。
窓枠を破って姿を現したのは――
ゼムクだった。
「……ゼムク!」
アーベルが名を呼ぶ。
黒衣を翻し、銀の瞳が俺たちを射抜いた。
部屋の空気が一気に張り詰める。
「全てを統べるもの」――ゼムク・ヴァインベルガーと俺たちは対峙した。
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