260 / 331
第四部
二人の王子
リカード様とハンス様が我が家に滞在されてから十日が経った。事の発端はお二人が王宮に戻られる途中で誘拐されそうになった事件。お二人を案じていらっしゃった陛下は何か起きたら我が家で匿ってほしいとヴォルフ様に頼み込んでいらっしゃって、ヴォルフ様がそれに応えられたもの。また狙われる可能性を鑑みて、お二人はランベルツ家の分家の令息と身分を偽り、騎士になりたいと希望しているから我が家の騎士団で預かってその適性をみるという理由も用意したわ。お二人も納得の上での滞在だったはずなのだけど……
「奥様、あの四人はいつまで滞在される予定でしょうか?」
やってきたのは王都のゾルガー邸の騎士をまとめるリット家のルッツ。心なしか顔色が悪く表情も冴えない。その原因はあの二人の王子であることは明白だった。
「今日は何を言ってきたの?」
もう何度同じやり取りをしたかしら? ルッツを悩ませているのはあの二王子の我儘ともいえる振る舞いの数々だった。品行方正で聡明な王子と評判だった彼らだけど、実情は全く違っていた。我が家への滞在は彼らを狙う者たちから身を守るためで、万全を期して身分を偽り、陛下ご希望の「鍛錬に参加して心身を鍛える」話だったのだけど……残念ながら陛下の方針はあの二人には全く伝わっていなかった。
「食事が不味い、ベッドはまだ交換しないのか、朝の訓練の声がうるさい、菓子をよこせ。今日は主にこの四点でございます」
彼らの不満は部屋に案内したその時から始まっていた。事前に危険を回避するため、分家の息子と身分を偽ること、そのためここでは王族として扱わないこと、他の見習い騎士と同じ扱いをすること、これらは国王陛下の強いご要望でもあることを先に説明してあった。
なのに、部屋が狭い、質素過ぎる、ベッドが硬い、シーツの肌触りが悪い、食事が不味い、コース料理じゃない、おやつが出てこないと騒ぎ、鍛練が始まればこんなに厳しいなんて聞いていないと喚き、終いには自分は王族だから鍛える必要なんてないと言い出しす始末。
ここにいる理由やどうして質素な生活なのかを何度説明しても理解されないのよね。傍若無人に振舞われるせいで騎士棟の空気は重く暗くなり、騎士たちの不満が増して士気にも影響が出ている。
「……そろそろ潮時かしら」
「王子殿下ということで厳しくお育ちかと思いましたが……」
さすがにそれ以上は不敬だと理解しているのかルッツは口に出さないけれど、私も同感だわ。全く、陛下もコルネリア様も甘やかしすぎだわ。アンゼルやエリーゼの方がずっと弁えているもの。
「それで、今は何をしているの?」
「騎士棟にある応接室でお寛ぎです。侍従を通じて厨房の料理長にお菓子を作ってよこせと命じられています」
「まぁ、お菓子を? それは訓練を受けた時だけとヴォルフ様が説明していたのに」
呆れしかないわ、人様の家で何を勝手なことをしているのかしら? 侍従も侍従だわ。陛下のご意向を忘れて殿下の好きにさせているなんて。
「これ以上騎士たちの不満を抑えるのは難しいかと」
ルッツが恭しく頭を下げた。さすがにこれ以上は放っておけないわね。ヴォルフ様も四日前から王宮に泊まり込んで対策を練っていらっしゃる。だったら私が諫めるしかないわ。
「わかったわ。これからお客様がいらっしゃるからその後で行くわ。彼らはそのまま放っておいていいから」
「ありがとうございます」
少しだけ顔の筋肉を緩めてルッツが出ていった。申し訳なかったわ。分家筆頭とはいえまだ若いから、年上の騎士たちをまとめるだけでも大変なのに、躾も出来ていない権力だけはある子どもの相手までさせてしまったわ。
もっとも、これまで私も何度か諫めているけれど、彼らにはちっとも伝わっていないのよね。幼いころから知っているし、女だからと甘く見ているのでしょうけれど。どう言えば伝わるのかしら? まったく、ヴォルフ様がいらっしゃったら諫めていただくのだけど、次はいつお帰りになるかわからないのよね。だから余計に増長しているのでしょうけれど。
「ロッテ、お客様は?」
「そろそろお着きになるころかと」
「そう。だったらお出迎えの準備をしないとね」
暫くすると今日の客人がやってきた。王太子殿下が襲われる事件から王都は厳戒態勢が敷かれ、三日前に実行犯とその仲間が捕まるまで王都も門を閉ざして夜間の外出も制限していたわ。今は色々な縛りが解かれ、往来に支障もなくなった。それでも危険を感じて夜会やお茶会は中止や延期になっているところが多い。
今日も三日前に行われる予定のお茶会の参加者の何人かが相談に乗ってほしいと頼んでこられたのでお迎えしたもの。屋敷の警戒の度合いは高いままだし、相手は警戒する必要がない気の知れた方たち。あの甘ったれた二人が同じ敷地にいるのが不安要素だけど……さすがにここまではこないはず。
「まぁ、エルフリーナ様、マルレーネ様、ザビーネ様、ようこそ」
「イルーゼお姉様、お招きありがとうございます」
やってきたのはお若い三人のご令嬢。グレシウス王女のエルフリーナ様と、その友人として交流を託されたランベルツ家の姉妹で、意気投合した三人は今ではすっかり仲良し。いずれはミュンター侯爵夫人とベルトラム女侯爵、っそして高位貴族に嫁ぐ予定だった三人は私にとっても仲良くしておきたい存在でもあるわ。庭は危険が増すから今日は南棟の応接室へご案内した。
「いつ見てもこちらの庭は素晴らしいですわ」
「ふふ、ありがとうございます」
庭がよく見渡せる大きな窓があるこの応接間は私のお気に入りの一つ。初春の若芽と花の季節はとうに過ぎ、今は鮮やかな緑葉と初夏の花々が庭を彩っているわ。開け放された窓からは心地よい風が通る。
「こうして皆様にお会い出来て安心しましたわ。ずっと学園も休校でしたから」
留学中のエルフリーナ様が安堵に表情を緩めた。家族や親しい友人から離れての生活、その上で婚約者が襲撃されたとなれば不安も増すでしょうね。
「そうでしたか。学園はまだ?」
「犯人が捕まったとのことで、明日から再開されるそうですわ」
「ええ。やっと外に出られます」
ランベルツ姉妹も頬を緩ませてそう告げた。今回は誘拐を目論んだものだったから、どの家も警戒して子女を外に出さなかったのよね。犯人と共犯者が捕まって明日から学園が再開されるけれど、まだしばらくは警戒が続きそうね。
「でも、ハンス様からはお手紙も来なくて……お姉様、何かご存じですか?」
どういうこと? 手紙のやり取りは禁止されていないし、内々に王宮からも手紙が届いているはずだけど……ハンス様ったら何をしているのよ?
「まぁ、そうでしたの。きっと警戒されていらっしゃるのでしょう」
ここにいるって言えないわよね。申し訳ないけれどここは誤魔化すしかないわ。エルフリーナ様には御気の毒なことになってしまったわ。ハンス様には後でしっかり釘を刺しておかないと。
「そうですよね。お元気ならいいのですが……」
「お元気でいらっしゃるようですよ。そのうちお手紙も届くでしょう」
「そうですわよね。ふふ、マルレーネ様も王太子殿下にお会い出来ますわね」
「え? そ、そうですわね……」
マルレーネ様の表情が硬くなったわ。リカード様のことはあまり乗り気ではないのかしら? まぁ、あんな甘ったれではご苦労されそうな気がするけれど。
「あれから殿下が父に話をしに来ましたのよ。父は渋い表情でしたけれど」
ザビーネ様が嬉々として教えてくれたけれど、それって殿下の本性をご存知だから、じゃないわよね? そうだったらリカード様の恋は多難ね。私も賛成出来ないけれど。
「それで、マルレーネ様はどうお考えですの?」
エルフリーナ様が目を輝かせて尋ねてきた。もしマルレーネ様がリカード様ととなれば、お二人は義理の姉妹になられる。仲がいいからエルフリーナ様は乗り気だけど、ご本人はどうなのかしら?
「私は……」
「お姉様ったら、家のことはご心配なく。私がしっかり支えますから」
「ザビーネ……」
「家にとっても悪い話ではありませんわ。リカード様は聡明でお優しく立派な方。お姉様を任せる相手として不足はありませんわ」
「それは、そうなのだけど……」
ザビーネ様は積極的ね。だけど……本性を知っている身としては複雑な気持ちだわ。マルレーネ様が乗り気じゃないことにほっとしているし。その時だった。靴音が近づいてきて、皆の表情に困惑が混じった。この棟にそんな無作法な者はいないわ。だったら何か起きたのかしら? そう思ったのだけど……
「夫人! どうして私たちに菓子を出さないんだ! 王族に対して無礼であるぞ!」
「奥様、あの四人はいつまで滞在される予定でしょうか?」
やってきたのは王都のゾルガー邸の騎士をまとめるリット家のルッツ。心なしか顔色が悪く表情も冴えない。その原因はあの二人の王子であることは明白だった。
「今日は何を言ってきたの?」
もう何度同じやり取りをしたかしら? ルッツを悩ませているのはあの二王子の我儘ともいえる振る舞いの数々だった。品行方正で聡明な王子と評判だった彼らだけど、実情は全く違っていた。我が家への滞在は彼らを狙う者たちから身を守るためで、万全を期して身分を偽り、陛下ご希望の「鍛錬に参加して心身を鍛える」話だったのだけど……残念ながら陛下の方針はあの二人には全く伝わっていなかった。
「食事が不味い、ベッドはまだ交換しないのか、朝の訓練の声がうるさい、菓子をよこせ。今日は主にこの四点でございます」
彼らの不満は部屋に案内したその時から始まっていた。事前に危険を回避するため、分家の息子と身分を偽ること、そのためここでは王族として扱わないこと、他の見習い騎士と同じ扱いをすること、これらは国王陛下の強いご要望でもあることを先に説明してあった。
なのに、部屋が狭い、質素過ぎる、ベッドが硬い、シーツの肌触りが悪い、食事が不味い、コース料理じゃない、おやつが出てこないと騒ぎ、鍛練が始まればこんなに厳しいなんて聞いていないと喚き、終いには自分は王族だから鍛える必要なんてないと言い出しす始末。
ここにいる理由やどうして質素な生活なのかを何度説明しても理解されないのよね。傍若無人に振舞われるせいで騎士棟の空気は重く暗くなり、騎士たちの不満が増して士気にも影響が出ている。
「……そろそろ潮時かしら」
「王子殿下ということで厳しくお育ちかと思いましたが……」
さすがにそれ以上は不敬だと理解しているのかルッツは口に出さないけれど、私も同感だわ。全く、陛下もコルネリア様も甘やかしすぎだわ。アンゼルやエリーゼの方がずっと弁えているもの。
「それで、今は何をしているの?」
「騎士棟にある応接室でお寛ぎです。侍従を通じて厨房の料理長にお菓子を作ってよこせと命じられています」
「まぁ、お菓子を? それは訓練を受けた時だけとヴォルフ様が説明していたのに」
呆れしかないわ、人様の家で何を勝手なことをしているのかしら? 侍従も侍従だわ。陛下のご意向を忘れて殿下の好きにさせているなんて。
「これ以上騎士たちの不満を抑えるのは難しいかと」
ルッツが恭しく頭を下げた。さすがにこれ以上は放っておけないわね。ヴォルフ様も四日前から王宮に泊まり込んで対策を練っていらっしゃる。だったら私が諫めるしかないわ。
「わかったわ。これからお客様がいらっしゃるからその後で行くわ。彼らはそのまま放っておいていいから」
「ありがとうございます」
少しだけ顔の筋肉を緩めてルッツが出ていった。申し訳なかったわ。分家筆頭とはいえまだ若いから、年上の騎士たちをまとめるだけでも大変なのに、躾も出来ていない権力だけはある子どもの相手までさせてしまったわ。
もっとも、これまで私も何度か諫めているけれど、彼らにはちっとも伝わっていないのよね。幼いころから知っているし、女だからと甘く見ているのでしょうけれど。どう言えば伝わるのかしら? まったく、ヴォルフ様がいらっしゃったら諫めていただくのだけど、次はいつお帰りになるかわからないのよね。だから余計に増長しているのでしょうけれど。
「ロッテ、お客様は?」
「そろそろお着きになるころかと」
「そう。だったらお出迎えの準備をしないとね」
暫くすると今日の客人がやってきた。王太子殿下が襲われる事件から王都は厳戒態勢が敷かれ、三日前に実行犯とその仲間が捕まるまで王都も門を閉ざして夜間の外出も制限していたわ。今は色々な縛りが解かれ、往来に支障もなくなった。それでも危険を感じて夜会やお茶会は中止や延期になっているところが多い。
今日も三日前に行われる予定のお茶会の参加者の何人かが相談に乗ってほしいと頼んでこられたのでお迎えしたもの。屋敷の警戒の度合いは高いままだし、相手は警戒する必要がない気の知れた方たち。あの甘ったれた二人が同じ敷地にいるのが不安要素だけど……さすがにここまではこないはず。
「まぁ、エルフリーナ様、マルレーネ様、ザビーネ様、ようこそ」
「イルーゼお姉様、お招きありがとうございます」
やってきたのはお若い三人のご令嬢。グレシウス王女のエルフリーナ様と、その友人として交流を託されたランベルツ家の姉妹で、意気投合した三人は今ではすっかり仲良し。いずれはミュンター侯爵夫人とベルトラム女侯爵、っそして高位貴族に嫁ぐ予定だった三人は私にとっても仲良くしておきたい存在でもあるわ。庭は危険が増すから今日は南棟の応接室へご案内した。
「いつ見てもこちらの庭は素晴らしいですわ」
「ふふ、ありがとうございます」
庭がよく見渡せる大きな窓があるこの応接間は私のお気に入りの一つ。初春の若芽と花の季節はとうに過ぎ、今は鮮やかな緑葉と初夏の花々が庭を彩っているわ。開け放された窓からは心地よい風が通る。
「こうして皆様にお会い出来て安心しましたわ。ずっと学園も休校でしたから」
留学中のエルフリーナ様が安堵に表情を緩めた。家族や親しい友人から離れての生活、その上で婚約者が襲撃されたとなれば不安も増すでしょうね。
「そうでしたか。学園はまだ?」
「犯人が捕まったとのことで、明日から再開されるそうですわ」
「ええ。やっと外に出られます」
ランベルツ姉妹も頬を緩ませてそう告げた。今回は誘拐を目論んだものだったから、どの家も警戒して子女を外に出さなかったのよね。犯人と共犯者が捕まって明日から学園が再開されるけれど、まだしばらくは警戒が続きそうね。
「でも、ハンス様からはお手紙も来なくて……お姉様、何かご存じですか?」
どういうこと? 手紙のやり取りは禁止されていないし、内々に王宮からも手紙が届いているはずだけど……ハンス様ったら何をしているのよ?
「まぁ、そうでしたの。きっと警戒されていらっしゃるのでしょう」
ここにいるって言えないわよね。申し訳ないけれどここは誤魔化すしかないわ。エルフリーナ様には御気の毒なことになってしまったわ。ハンス様には後でしっかり釘を刺しておかないと。
「そうですよね。お元気ならいいのですが……」
「お元気でいらっしゃるようですよ。そのうちお手紙も届くでしょう」
「そうですわよね。ふふ、マルレーネ様も王太子殿下にお会い出来ますわね」
「え? そ、そうですわね……」
マルレーネ様の表情が硬くなったわ。リカード様のことはあまり乗り気ではないのかしら? まぁ、あんな甘ったれではご苦労されそうな気がするけれど。
「あれから殿下が父に話をしに来ましたのよ。父は渋い表情でしたけれど」
ザビーネ様が嬉々として教えてくれたけれど、それって殿下の本性をご存知だから、じゃないわよね? そうだったらリカード様の恋は多難ね。私も賛成出来ないけれど。
「それで、マルレーネ様はどうお考えですの?」
エルフリーナ様が目を輝かせて尋ねてきた。もしマルレーネ様がリカード様ととなれば、お二人は義理の姉妹になられる。仲がいいからエルフリーナ様は乗り気だけど、ご本人はどうなのかしら?
「私は……」
「お姉様ったら、家のことはご心配なく。私がしっかり支えますから」
「ザビーネ……」
「家にとっても悪い話ではありませんわ。リカード様は聡明でお優しく立派な方。お姉様を任せる相手として不足はありませんわ」
「それは、そうなのだけど……」
ザビーネ様は積極的ね。だけど……本性を知っている身としては複雑な気持ちだわ。マルレーネ様が乗り気じゃないことにほっとしているし。その時だった。靴音が近づいてきて、皆の表情に困惑が混じった。この棟にそんな無作法な者はいないわ。だったら何か起きたのかしら? そう思ったのだけど……
「夫人! どうして私たちに菓子を出さないんだ! 王族に対して無礼であるぞ!」
あなたにおすすめの小説
〖完結〗愛人が離婚しろと乗り込んで来たのですが、私達はもう離婚していますよ?
藍川みいな
恋愛
「ライナス様と離婚して、とっととこの邸から出て行ってよっ!」
愛人が乗り込んで来たのは、これで何人目でしょう?
私はもう離婚していますし、この邸はお父様のものですから、決してライナス様のものにはなりません。
離婚の理由は、ライナス様が私を一度も抱くことがなかったからなのですが、不能だと思っていたライナス様は愛人を何人も作っていました。
そして親友だと思っていたマリーまで、ライナス様の愛人でした。
愛人を何人も作っていたくせに、やり直したいとか……頭がおかしいのですか?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】
夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。
長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。
待っていたのは、凍てつく絶望。
けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。
「夫は愛人と生きればいい。
今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」
それでも私は誓う――
「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」
歪で、完全な幸福――それとも、破滅。
“石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。
兄妹じゃないとわかったのでお兄様と結婚したら、全部仕込みでした
こじまき
恋愛
【20260401読みやすいように話を分割しました】
伯爵令嬢ヘイゼルは、兄アリステアに恋をしている。叶わないと知りながら、それでも諦めきれなかった。
しかし子ども時代の「取り違え」が発覚し、子爵令嬢ロレッタとして“正しい場所”で生き直すことに。
そして妹ではなくなった彼女に、アリステアは求婚する。
運命のねじれは正されて、望んだとおりに最愛の人と結ばれた――
けれど――その「正しい運命」は、兄アリステアによって用意されたものだった――
※「小説家になろう」にも投稿しています。
三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します
冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」
結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。
私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。
そうして毎回同じように言われてきた。
逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。
だから今回は。
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
私を棄てて選んだその妹ですが、継母の私生児なので持参金ないんです。今更ぐだぐだ言われても、私、他人なので。
百谷シカ
恋愛
「やったわ! 私がお姉様に勝てるなんて奇跡よ!!」
妹のパンジーに悪気はない。この子は継母の連れ子。父親が誰かはわからない。
でも、父はそれでいいと思っていた。
母は早くに病死してしまったし、今ここに愛があれば、パンジーの出自は問わないと。
同等の教育、平等の愛。私たちは、血は繋がらずとも、まあ悪くない姉妹だった。
この日までは。
「すまないね、ラモーナ。僕はパンジーを愛してしまったんだ」
婚約者ジェフリーに棄てられた。
父はパンジーの結婚を許した。但し、心を凍らせて。
「どういう事だい!? なぜ持参金が出ないんだよ!!」
「その子はお父様の実子ではないと、あなたも承知の上でしょう?」
「なんて無礼なんだ! 君たち親子は破滅だ!!」
2ヶ月後、私は王立図書館でひとりの男性と出会った。
王様より科学の研究を任された侯爵令息シオドリック・ダッシュウッド博士。
「ラモーナ・スコールズ。私の妻になってほしい」
運命の恋だった。
=================================
(他エブリスタ様に投稿・エブリスタ様にて佳作受賞作品)
探さないでください。旦那様は私がお嫌いでしょう?
雪塚 ゆず
恋愛
結婚してから早一年。
最強の魔術師と呼ばれる旦那様と結婚しましたが、まったく私を愛してくれません。
ある日、女性とのやりとりであろう手紙まで見つけてしまいました。
もう限界です。
探さないでください、と書いて、私は家を飛び出しました。