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第四部
閑話:寝室にて
近くで何かが動く気配を感じて意識が浮上する。頭が動き始めたばかりでぼんやりしている。空気にさらされた肩が体温よりも低い空気に触れて身震いすると、そっと掛け布が被せられた。
「……ヴォ、ルフさ……?」
「どうした?」
守る様に抱きしめてくる腕の主の名を呼んだ。ろうそくの灯りが浮かび上がらせる愛しい夫の姿に頬が緩む。かけられる声が以前よりも甘く感じるのは気のせいかしら? 短い一言なのにこんなにも心が満たされるのだから。
「今は……いつ頃ですの?」
窓のない寝室では時間の感覚がさっぱりわからない。最後の記憶はこの部屋に籠って三日目の夕刻だった。湯浴みをしてから夕食を取り、他愛もない会話をした後睦み合ってそのまま眠ってしまったのね。だったら朝は過ぎたのかしら?
「昼を過ぎた頃だ。昼食が届いている」
そう言えば、室内に美味しそうな匂いが満ちていた。動く気配があったのはヴォルフ様―いえ、ヴォルフがワゴンを室内に運んだからね。あれからはティオやロッテも部屋に入れなくなって、シーツの交換もヴォルフがやっている。私が……と思ったのだけど、体が辛いだろうから俺がする、お前は休んでいろとソファに運ばれてしまうのよね。実際、ちょっと怠いからお言葉に甘えてしまっている。
「お腹、空きました」
「ああ、食事にしよう」
首の下にあった腕が離れて起き上がり、大きな手の助けを借りて身体を起こす。あれからのヴォルフは凄く過保護になったわ。まるで別人かと思うほどに。これが世間で噂の溺愛ってものなのかしら?
昨年、人気だった歌劇は主人公が妻を溺愛するもので、妻の日常生活のありとあらゆることに夫が手を出して辟易させていたわね。最後はそんな夫に愛想を尽かした妻が出こうとして一悶着起きる喜劇だったけれど……ヴォルフはそこまではしないから助かっているわ。いえ、劇を見た後、私があの夫の行為について話したから、それを参考にされているのかしら? そう言えば、あの時嫌だと言ったことはされていないわ。
ガウンを羽織るとソファまでエスコートされた。その後でワゴンに乗っていた食事をテーブルに移し、お茶を淹れてくださる。一度、私がお茶をと声を上げたのだけど、それはやんわりと、でも確かに断られてしまったわ。火傷をするかもしれない、俺の方が皮膚が厚いから適任だと。困ったことに淹れてくれるお茶は美味しくて私の出番がまるでない。こんな状態でいいのかしらと思うのだけど、ヴォルフは自分がやりたいからやっているだけだと言って譲ってくれない。
「今日は何をしたい?」
果実水が満ちたグラスを手渡しながらそう尋ねられた。
「天気がいいのなら庭に出たいですが……ザーラはいかがですの?」
そろそろ予定日だからいつ産気付いてもおかしくないのだけど、声がかからないからまだってことよね。
「変わりないな。アンゼルがまだかと尋ねているがまだらしい」
「そうですか」
アリーゼが産まれる直前にアンゼルが「あかちゃん くるよ~」と言い出して、実際その後すぐに陣痛が始まったのよね。あれには驚いたけれど、産婆が「幼子には時々あるんですよ」と言っていたからそういうものらしいけれど……あの変わった能力はまだ健在ってこと? 一体あの子には何が聞こえているのかしら……今だけならいいのだけど、親として不安になってしまうわ。
「心配するな。大きくなれば収まるだろう」
「そう、ですね」
悩んでも仕方がないわね。あの子が苦しんでいるなら考えものだけど、特に困っている風はないし、いずれ消えるのなら。冷たい果実水が美味しいわ。ずっと寝室に籠ってはいるけれど、手加減してくださっているから疲労困憊まではいかないし、喉が痛むこともない。これまでのあれは何だったのかと思うほどに。
だけど……あれはご自身の感情に自覚がなくて暴走したから、ともいえるのかしら? 今は自覚されたから調整が利くようになった? だったら嬉しいわ。さすがに抱き潰されて寝込むのは恥ずかしすぎて遠慮したいもの。いえ、こうして連日籠っているのも恥ずかしいのだけど。
「どうした?」
考え事をしていたら声を掛けられた。見上げると黒く見える瞳が真っ直ぐに見下ろしている。まるで私の感情を見通そうとされている?
「いえ、アンゼルの不思議な力のことを。いつまで続くのかと」
「いずれ消えるだろう」
ヴォルフは気にしていないのね。いずれ消えると言われたからかしら。悩んでも仕方がないことは気にも留めないものね。あら、このハム美味しいわ。初めての味ね。って、殆ど私の皿に……
「ヴォルフも食べてください」
「だがお前が好む味だろう?」
「ヴォルフは苦手ですの?」
返事がないってことはヴォルフも気に入ってるのよね。なのに私のために? だめだわ、嬉しすぎる……
「半分ずつにしましょう。独り占めなんかしたら美味しさが半減してしまうわ」
私の皿のハムを半分よりも少し多めにヴォルフのそれに移す。お行儀が悪かったかしら? でも、美味しい物こそ二人で分かち合いたいのよ。
「曇っている。午後には雨が降るかもしれん」
「そう、ですか。雨が降りそうなら散歩は諦めますわ。代わりに自室でお茶がしたいです」
「わかった」
ヴォルフの部屋には窓がない。ずっと籠っているのは息苦しいから外の空気を感じたい。私の部屋の窓は大きく、窓を開ければ外の空気をより近くに感じられる。雨の音を聞きながら霞んだ景色を眺めるのは結構好き。ヴォルフは寡黙だし、身を寄せ合って互いの体温を感じながら過ごす時間も素敵なのよね。
ふふ、なんて穏やかな時間なのかしら。こんな風に過ごしたことなんて今までなかったわね。いつだって何かに追われるように、機嫌を損ねないように、足手まといにならないようにと気を張っていたから。いえ、足手まといの件はまだ解決出来ていないのだけど。それにしても、ヴォルフの所作は綺麗ね。食べるのが早いのに少しも見苦しくない。
「どうした?」
「幸せだな、って、思ったんです」
ハムも卵の焼き加減も素晴らしいし、子どもたちは元気だし、ヴォルフとは思いが通じ合って……これ以上の幸せってあるのかしら? もしかしたら今の私の幸せの絶頂はここなのかしらと思ってしまう。嫌だわ、幸せ過ぎて怖いって、こういうことなのかしら?
「ずっとお側に」
「ああ、まだ死なんし、死なせん」
途端に物騒な言葉が出てきたわ。だけどこれが現実なのよね。私たちは筆頭侯爵夫妻で国の要。いつだって、今この瞬間だってどこかで誰かが私たちの失脚を願い、悪意を向けられているのでしょうね。だけど負けないわ。ヴォルフのためにも、子どもたちのためにも。
「ええ、まだ死ねませんわ。何が来てもヴォルフにしがみ付いて離れませんから」
「ああ、離さん」
ふふっ、甘いんだか甘くないんだかわからないわね。だけど劇で交わされるような甘い言葉は私たちには似合わないわ。そんな風に言い出したヴォルフはヴォルフじゃない気がするし。規格外の夫婦だと言われているけれど、私たちはそれがお似合いなのかもしれない。
「フィリーネに子が出来たそうだ」
「フィリーネ様に?」
姉として共に暮らし、後に母の姉の子だと知り、両親の離婚で姉妹の縁も終わった元姉。二年ほど前に婚姻して昨年男児を産んでいるけれど、もう二人目が? 実家は多産系だし、彼女はクラウス様と付き合いだして程なく彼の子を身籠っている。お子が出来やすい体質だったのね。
「それは喜ばしいことですわ。婚家は子が出来なくて困っていたと聞きますから」
だからこそ未婚なのに出産経験のあるフィリーネ様が選ばれた。一時は商家との話もあったと聞くけれど、子が出来たのなら彼女の地位も安泰かしら。
「大人しくしているらしい」
「八年前にそうなってほしかったですわ」
せめて私が学園を卒業する頃には真っ当になっていたら、今は違った未来があったはず。いえ、そのせいで救われた人も少なくないわ。お義姉様やフレディ、そして母も。返事がなく、視線を感じて見上げると、ようやく食べ終わったヴォルフがこちらを見ていた。どうかしたかしら?
「いや、そうならなくてよかった。俺はそう思う」
「え?」
そ、そうなの? そりゃあ、フレディがフィリーネ様と婚姻していたらザーラとの幸せはなかったとは思うけれど……
「でなければ、お前は俺のところに来なかっただろう?」
そうだったわ! そうね、あの時は苦しかったけれど、あの苦しみがなかったら今の幸せもなかったのよね……
「そうですわね、あの時がなかったら今頃は……」
あり得ない未来を想像しても意味がないけれど。あの時動かなかったらどうなっていたのかしら? そんな仮定は想像するのが難しい程に現状とは乖離していた。この逞しくも温かい腕とその持ち主も可愛い子どもたちも居なかったわ。
「さぁ、湯浴みをするぞ。茶をするのだろう?」
「え、ええ」
そうね、なかった未来を考えても仕方がないわ。それよりも今ある幸せを大切にしたい。差し伸べられた手を取って立ち上がる。いつだってこの手は私を力強く導いてくれるから迷いはないわ。
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
お待たせしました、お久しぶりのイルーゼ視点です。
4巻の記念SSを除くと約一月ぶりでした。
仕事も子どもたちもフレディと使用人に任せて引きこもり中です。
まだまだ敬語が抜けず言葉使いが怪しいイルーゼ、ヴォルフは自分の感情に整理がついたのか、前よりもちょっと待てが出来るように。
甘さ割り増し…には至りませんが(会話が物騒)、いちゃこらしている二人でした。
そして、新連載「亡国色の王女は打算で敵国に嫁ぐ」を始めました。
こちらもイルーゼ同様、居場所のない王女が自分の場所を求めて奮闘するお話です。
よろしければこちらも読んでくださると嬉しいです。
「……ヴォ、ルフさ……?」
「どうした?」
守る様に抱きしめてくる腕の主の名を呼んだ。ろうそくの灯りが浮かび上がらせる愛しい夫の姿に頬が緩む。かけられる声が以前よりも甘く感じるのは気のせいかしら? 短い一言なのにこんなにも心が満たされるのだから。
「今は……いつ頃ですの?」
窓のない寝室では時間の感覚がさっぱりわからない。最後の記憶はこの部屋に籠って三日目の夕刻だった。湯浴みをしてから夕食を取り、他愛もない会話をした後睦み合ってそのまま眠ってしまったのね。だったら朝は過ぎたのかしら?
「昼を過ぎた頃だ。昼食が届いている」
そう言えば、室内に美味しそうな匂いが満ちていた。動く気配があったのはヴォルフ様―いえ、ヴォルフがワゴンを室内に運んだからね。あれからはティオやロッテも部屋に入れなくなって、シーツの交換もヴォルフがやっている。私が……と思ったのだけど、体が辛いだろうから俺がする、お前は休んでいろとソファに運ばれてしまうのよね。実際、ちょっと怠いからお言葉に甘えてしまっている。
「お腹、空きました」
「ああ、食事にしよう」
首の下にあった腕が離れて起き上がり、大きな手の助けを借りて身体を起こす。あれからのヴォルフは凄く過保護になったわ。まるで別人かと思うほどに。これが世間で噂の溺愛ってものなのかしら?
昨年、人気だった歌劇は主人公が妻を溺愛するもので、妻の日常生活のありとあらゆることに夫が手を出して辟易させていたわね。最後はそんな夫に愛想を尽かした妻が出こうとして一悶着起きる喜劇だったけれど……ヴォルフはそこまではしないから助かっているわ。いえ、劇を見た後、私があの夫の行為について話したから、それを参考にされているのかしら? そう言えば、あの時嫌だと言ったことはされていないわ。
ガウンを羽織るとソファまでエスコートされた。その後でワゴンに乗っていた食事をテーブルに移し、お茶を淹れてくださる。一度、私がお茶をと声を上げたのだけど、それはやんわりと、でも確かに断られてしまったわ。火傷をするかもしれない、俺の方が皮膚が厚いから適任だと。困ったことに淹れてくれるお茶は美味しくて私の出番がまるでない。こんな状態でいいのかしらと思うのだけど、ヴォルフは自分がやりたいからやっているだけだと言って譲ってくれない。
「今日は何をしたい?」
果実水が満ちたグラスを手渡しながらそう尋ねられた。
「天気がいいのなら庭に出たいですが……ザーラはいかがですの?」
そろそろ予定日だからいつ産気付いてもおかしくないのだけど、声がかからないからまだってことよね。
「変わりないな。アンゼルがまだかと尋ねているがまだらしい」
「そうですか」
アリーゼが産まれる直前にアンゼルが「あかちゃん くるよ~」と言い出して、実際その後すぐに陣痛が始まったのよね。あれには驚いたけれど、産婆が「幼子には時々あるんですよ」と言っていたからそういうものらしいけれど……あの変わった能力はまだ健在ってこと? 一体あの子には何が聞こえているのかしら……今だけならいいのだけど、親として不安になってしまうわ。
「心配するな。大きくなれば収まるだろう」
「そう、ですね」
悩んでも仕方がないわね。あの子が苦しんでいるなら考えものだけど、特に困っている風はないし、いずれ消えるのなら。冷たい果実水が美味しいわ。ずっと寝室に籠ってはいるけれど、手加減してくださっているから疲労困憊まではいかないし、喉が痛むこともない。これまでのあれは何だったのかと思うほどに。
だけど……あれはご自身の感情に自覚がなくて暴走したから、ともいえるのかしら? 今は自覚されたから調整が利くようになった? だったら嬉しいわ。さすがに抱き潰されて寝込むのは恥ずかしすぎて遠慮したいもの。いえ、こうして連日籠っているのも恥ずかしいのだけど。
「どうした?」
考え事をしていたら声を掛けられた。見上げると黒く見える瞳が真っ直ぐに見下ろしている。まるで私の感情を見通そうとされている?
「いえ、アンゼルの不思議な力のことを。いつまで続くのかと」
「いずれ消えるだろう」
ヴォルフは気にしていないのね。いずれ消えると言われたからかしら。悩んでも仕方がないことは気にも留めないものね。あら、このハム美味しいわ。初めての味ね。って、殆ど私の皿に……
「ヴォルフも食べてください」
「だがお前が好む味だろう?」
「ヴォルフは苦手ですの?」
返事がないってことはヴォルフも気に入ってるのよね。なのに私のために? だめだわ、嬉しすぎる……
「半分ずつにしましょう。独り占めなんかしたら美味しさが半減してしまうわ」
私の皿のハムを半分よりも少し多めにヴォルフのそれに移す。お行儀が悪かったかしら? でも、美味しい物こそ二人で分かち合いたいのよ。
「曇っている。午後には雨が降るかもしれん」
「そう、ですか。雨が降りそうなら散歩は諦めますわ。代わりに自室でお茶がしたいです」
「わかった」
ヴォルフの部屋には窓がない。ずっと籠っているのは息苦しいから外の空気を感じたい。私の部屋の窓は大きく、窓を開ければ外の空気をより近くに感じられる。雨の音を聞きながら霞んだ景色を眺めるのは結構好き。ヴォルフは寡黙だし、身を寄せ合って互いの体温を感じながら過ごす時間も素敵なのよね。
ふふ、なんて穏やかな時間なのかしら。こんな風に過ごしたことなんて今までなかったわね。いつだって何かに追われるように、機嫌を損ねないように、足手まといにならないようにと気を張っていたから。いえ、足手まといの件はまだ解決出来ていないのだけど。それにしても、ヴォルフの所作は綺麗ね。食べるのが早いのに少しも見苦しくない。
「どうした?」
「幸せだな、って、思ったんです」
ハムも卵の焼き加減も素晴らしいし、子どもたちは元気だし、ヴォルフとは思いが通じ合って……これ以上の幸せってあるのかしら? もしかしたら今の私の幸せの絶頂はここなのかしらと思ってしまう。嫌だわ、幸せ過ぎて怖いって、こういうことなのかしら?
「ずっとお側に」
「ああ、まだ死なんし、死なせん」
途端に物騒な言葉が出てきたわ。だけどこれが現実なのよね。私たちは筆頭侯爵夫妻で国の要。いつだって、今この瞬間だってどこかで誰かが私たちの失脚を願い、悪意を向けられているのでしょうね。だけど負けないわ。ヴォルフのためにも、子どもたちのためにも。
「ええ、まだ死ねませんわ。何が来てもヴォルフにしがみ付いて離れませんから」
「ああ、離さん」
ふふっ、甘いんだか甘くないんだかわからないわね。だけど劇で交わされるような甘い言葉は私たちには似合わないわ。そんな風に言い出したヴォルフはヴォルフじゃない気がするし。規格外の夫婦だと言われているけれど、私たちはそれがお似合いなのかもしれない。
「フィリーネに子が出来たそうだ」
「フィリーネ様に?」
姉として共に暮らし、後に母の姉の子だと知り、両親の離婚で姉妹の縁も終わった元姉。二年ほど前に婚姻して昨年男児を産んでいるけれど、もう二人目が? 実家は多産系だし、彼女はクラウス様と付き合いだして程なく彼の子を身籠っている。お子が出来やすい体質だったのね。
「それは喜ばしいことですわ。婚家は子が出来なくて困っていたと聞きますから」
だからこそ未婚なのに出産経験のあるフィリーネ様が選ばれた。一時は商家との話もあったと聞くけれど、子が出来たのなら彼女の地位も安泰かしら。
「大人しくしているらしい」
「八年前にそうなってほしかったですわ」
せめて私が学園を卒業する頃には真っ当になっていたら、今は違った未来があったはず。いえ、そのせいで救われた人も少なくないわ。お義姉様やフレディ、そして母も。返事がなく、視線を感じて見上げると、ようやく食べ終わったヴォルフがこちらを見ていた。どうかしたかしら?
「いや、そうならなくてよかった。俺はそう思う」
「え?」
そ、そうなの? そりゃあ、フレディがフィリーネ様と婚姻していたらザーラとの幸せはなかったとは思うけれど……
「でなければ、お前は俺のところに来なかっただろう?」
そうだったわ! そうね、あの時は苦しかったけれど、あの苦しみがなかったら今の幸せもなかったのよね……
「そうですわね、あの時がなかったら今頃は……」
あり得ない未来を想像しても意味がないけれど。あの時動かなかったらどうなっていたのかしら? そんな仮定は想像するのが難しい程に現状とは乖離していた。この逞しくも温かい腕とその持ち主も可愛い子どもたちも居なかったわ。
「さぁ、湯浴みをするぞ。茶をするのだろう?」
「え、ええ」
そうね、なかった未来を考えても仕方がないわ。それよりも今ある幸せを大切にしたい。差し伸べられた手を取って立ち上がる。いつだってこの手は私を力強く導いてくれるから迷いはないわ。
♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢ ♦︎ ♢
お待たせしました、お久しぶりのイルーゼ視点です。
4巻の記念SSを除くと約一月ぶりでした。
仕事も子どもたちもフレディと使用人に任せて引きこもり中です。
まだまだ敬語が抜けず言葉使いが怪しいイルーゼ、ヴォルフは自分の感情に整理がついたのか、前よりもちょっと待てが出来るように。
甘さ割り増し…には至りませんが(会話が物騒)、いちゃこらしている二人でした。
そして、新連載「亡国色の王女は打算で敵国に嫁ぐ」を始めました。
こちらもイルーゼ同様、居場所のない王女が自分の場所を求めて奮闘するお話です。
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コメントありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
二人とも家族と縁が薄いので、仕事含めたその他<家族ですからね。
ヴォルフはイルーゼほど重要視していないかもしれませんが…
イルーゼはまだしも、ヴォルフは愛情がよくわかっていないので、
これから悩みながらも模索し続けるかと。
ああ見えて素直なのでティオなどに助言を求め、その度に「奥様に
直接お尋ねください」とか言われて益々頭を抱えそうです。
コメントありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
二人の会話、甘かったですか?
書いていると何故か物騒な話になってしまうので心配でしたが
甘さを感じてもらえてホッとしています。
あと誤字報告もありがとうございます!焼く1か月って…
コメントありがとうございます(⁎˃ᴗ˂⁎)
そうですね、イルーゼもしっかり多産体質かと。
ヴォルフが出産に不安を感じているので避妊のお茶を常飲していますが、
呑まなかったらそれくらい生まれていたかもしれませんね。
イルーゼもまだ25だし、あと1、2人くらい出来そうです。