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いざ、初出勤!
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叔父様の元での事前勉強の日々はあっという間に過ぎ、今日はいよいよリシャール様の元で働き始める日です。私が出勤する日はリシャール様のお店の定休日ですが、休みの日でも従業員が交代で出勤しているそうで、私はその従業員の皆様のお手伝いと言う形になるそうです。
多分ですが…その方が接する従業員の数が少なく、私だとばれる可能性が低いからでしょう。それに、休みの日の方がリシャール様の目が届きやすいのもあるかもしれません。もし私に何かあっては…と子爵達が考えた結果が、休日の出勤のように思います。そこは変に気を使わせてしまって申し訳ないのですが…私の本気度を知って頂くには他に方法がないのですよね。せめて皆様の邪魔にならない様にしたいですわ。
「まぁ…お嬢様だとわかりませんわね」
「本当に?」
「ええ、こうも変わるとは思いませんでしたわ…」
そう答えるのはコレットです。私は今、商会で働くための変装中なのです。身分がばれたら即解雇と、お父様と子爵がそんな約束を交わしたので、ここは何としても阻止しなければなりません。腰まで届いた水色の髪は、仕事の邪魔になるかもしれないので背中に届くかどうかの位置でばっさりと切りました。実は縦ロールを長年続けていたせいで、かなり痛んでいたのですよね。きっちりまとめて茶色の髪のかつらを被り、それも一つに結んでいます。前髪は長めにして、その上で丸縁の伊達眼鏡をかけ、化粧は控えて服も平民の働く女性が着る様なシンプルな濃紺のワンピースです。この衣装は叔父様の商会で働く女性たちがよく着ている物で、今日はそれと同じものを用意しました。
「今から私はレア=ブランよ」
そうです、さすがに本名で働くわけにもいきませんので、私はお母様の実家の分家のブラン男爵家の娘と言う設定です。男爵家の娘が商会に働きに出るのは珍しくありませんし、ブラン家は領地の中でも特に田舎の方なので、簡単にばれる事はないでしょう。それにブランという苗字はありふれているのも好都合です。
「さ、お嬢様、馬車の用意が出来ましたわ」
「ありがとう、直ぐに行くわ」
今日は身分を隠しているので、馬車も家紋が入ったものではなく借りあげた辻馬車です。それでも御者は我が家の者ですし、安全対策はばっちりです。
「お待たせしました。…って、ええっ?!!」
馬車まで着た私は、御者を見て思わず声が出てしまいました。だ、だって…
(お、お父様―――!!!どうして御者の格好に…)
そうなのです、御者の衣装を身に付けてそこにいたのは、我が国の宰相でもあるお父様です。御者服は正に辻馬車のそれですが…お父様、それを身に付けますか…しかも…
(全く似合っていないのですけど…!服とお父様の反発が凄すぎるわ…!)
そう、お父様の威厳に御者服が完全に負けて違和感がありまくりなのです。これでは逆に怪しまれてしまわないでしょうか…それにお父様、御者の代わりが出来るのでしょうか…
「さ、行こうか、レティ」
優雅なしぐさで私を迎え、にっこりと微笑んだお父様でしたが…それを見たコレット達が固まってしまいました。
「お、お父様、これは…」
「ああ、今の私はただの御者です。どうかそのように、レア嬢」
お父様、すっかり成り切っていますわね。でも、こうなったお父様には何を言っても無駄でしょう。私は湧き上がる不安を抱えながら馬車に乗り込んだのでした。
多分ですが…その方が接する従業員の数が少なく、私だとばれる可能性が低いからでしょう。それに、休みの日の方がリシャール様の目が届きやすいのもあるかもしれません。もし私に何かあっては…と子爵達が考えた結果が、休日の出勤のように思います。そこは変に気を使わせてしまって申し訳ないのですが…私の本気度を知って頂くには他に方法がないのですよね。せめて皆様の邪魔にならない様にしたいですわ。
「まぁ…お嬢様だとわかりませんわね」
「本当に?」
「ええ、こうも変わるとは思いませんでしたわ…」
そう答えるのはコレットです。私は今、商会で働くための変装中なのです。身分がばれたら即解雇と、お父様と子爵がそんな約束を交わしたので、ここは何としても阻止しなければなりません。腰まで届いた水色の髪は、仕事の邪魔になるかもしれないので背中に届くかどうかの位置でばっさりと切りました。実は縦ロールを長年続けていたせいで、かなり痛んでいたのですよね。きっちりまとめて茶色の髪のかつらを被り、それも一つに結んでいます。前髪は長めにして、その上で丸縁の伊達眼鏡をかけ、化粧は控えて服も平民の働く女性が着る様なシンプルな濃紺のワンピースです。この衣装は叔父様の商会で働く女性たちがよく着ている物で、今日はそれと同じものを用意しました。
「今から私はレア=ブランよ」
そうです、さすがに本名で働くわけにもいきませんので、私はお母様の実家の分家のブラン男爵家の娘と言う設定です。男爵家の娘が商会に働きに出るのは珍しくありませんし、ブラン家は領地の中でも特に田舎の方なので、簡単にばれる事はないでしょう。それにブランという苗字はありふれているのも好都合です。
「さ、お嬢様、馬車の用意が出来ましたわ」
「ありがとう、直ぐに行くわ」
今日は身分を隠しているので、馬車も家紋が入ったものではなく借りあげた辻馬車です。それでも御者は我が家の者ですし、安全対策はばっちりです。
「お待たせしました。…って、ええっ?!!」
馬車まで着た私は、御者を見て思わず声が出てしまいました。だ、だって…
(お、お父様―――!!!どうして御者の格好に…)
そうなのです、御者の衣装を身に付けてそこにいたのは、我が国の宰相でもあるお父様です。御者服は正に辻馬車のそれですが…お父様、それを身に付けますか…しかも…
(全く似合っていないのですけど…!服とお父様の反発が凄すぎるわ…!)
そう、お父様の威厳に御者服が完全に負けて違和感がありまくりなのです。これでは逆に怪しまれてしまわないでしょうか…それにお父様、御者の代わりが出来るのでしょうか…
「さ、行こうか、レティ」
優雅なしぐさで私を迎え、にっこりと微笑んだお父様でしたが…それを見たコレット達が固まってしまいました。
「お、お父様、これは…」
「ああ、今の私はただの御者です。どうかそのように、レア嬢」
お父様、すっかり成り切っていますわね。でも、こうなったお父様には何を言っても無駄でしょう。私は湧き上がる不安を抱えながら馬車に乗り込んだのでした。
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