【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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 どうやら詐欺の標的になったらしい。二月ほど前から来るようになったグラネ伯爵家の若夫人。ラフォン侯爵令嬢の紹介だと言って羽振りのよい買い物を繰り返していたが、グラネ伯爵家などという家名は我が国にはなく、最初から疑わしかった。それを確定的にしたのは、当のラフォン侯爵令嬢だった。自分が紹介した覚えはないと断言したのだ。詐欺集団の手口に似たその買い物の仕方に、あの若夫人への疑念は一層強くなった。

「リシャール、これ、頼まれていたやつね」

 以前来たお気に入りの大衆酒場の個室で、封筒を手渡しながらそう言ったのはヒューゴだった。人材派遣ギルドに勤めるヒューゴにはもう一つの顔がある。情報屋だ。人材派遣ギルドには貴族から平民まで、多種多様な身分や職種に人を送り込んでいるので、そこから得られる情報は下手な情報屋よりもずっと幅広く信憑性が高い。商売をするうえで情報は重要な役割を果たすだけに、彼の存在は心強い。

「これって、やっぱりあれ?」
「まだ証拠がないから何とも。でも、確率は高いと思う。最初はまさかとは思ったが…」
「そうかな~リシャールの事だから、自分が捕まえてやろうと考えてると思ってたけど?」

 面白そうに話すヒューゴだが、その問いには曖昧に笑っておくだけにした。

「それで、どうするの?」
「まだ黒というには証拠がない。とりあえずその若夫人とやらを探らせている」
「探るって…ああ、部下たちね」
「部下じゃない」
「ええ~でも、あいつらはそう思ってるよ。未だにリシャールの事、自分達のリーダーだって慕ってるんだから」

 ヒューゴが言うのは昔絡んできた不良連中の事だが、彼らは部下でもなんでもない。そりゃあ、望む者には簡単な読み書きや計算を教えたし、職がないと嘆いていた奴には仕事の斡旋もした。その伝もあってちょっとした頼み事は引き受けてくれるが、それだってただではない。それなりの対価は払っているのだ。

「それで?尻尾を掴んだら騎士団に突き出すの?」
「件数も多いし、放ってもおけないだろう?これ以上被害が増えるのは避けたいし」

 あの若夫人はあちこちの店に出入りしているという。何軒かの店で並行して同じ事を行い、一気に商品をツケ払いで手にして、そのまま逃げる気なのでは、と推測している。これまでに被害に遭った店も、商品をだまし取られた時期と手口がほぼ同じなので、この見立ては間違っていないように思う。だが…

「でも、まずは確たる証拠を手に入れるのが先だ」
「了解。それじゃそれとなくあの屋敷のメイドに探りを入れておくよ」
「ああ、頼む」

 そう、あの若夫人が住んでいるらしい屋敷には、ヒューゴのギルドからメイドを何人か派遣している。彼女たちも守秘義務はあるから内情は話せないが、ヒューゴがするのは単なる世間話、相手の動きを見るだけならそれで十分だろう。
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