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筆頭侯爵家の存在感
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「甘くみないで下さいね?護身術は淑女の嗜みですの」
倒れた男を前に、彼女はその場に過ぎる程の艶やかな笑みを浮かべてそう告げた。ぞわりと、全身をこれまでに感じた事のない冷たい熱が走った気がした。思わず跪いてしまいそうになるほどの畏怖の念を抱かせたその姿は、これまでの印象が全てひっくり返るほどのもので。場を圧倒する存在感と威圧感は、彼女が我が国一の侯爵家の総領姫なのだと物語っていた。
(ああ、これが…筆頭侯爵家なのか…)
挑発的に輝く水色の瞳には冷たい炎が揺らめき、上気した頬と笑みを浮かべた口元は愛らしいのに侵しがたい品があって、目を奪われるとはこういう事なのかと納得した。いつもは盗み見るように控えめに視線を向けてきていたが、今の彼女にそんな影は微塵もなかった。
これまでも上位貴族と接する機会はあったが、これほどの強いオーラを放つ者は見た事がなかった。普段の彼女はどこにでもいる普通の令嬢と変わらないように見えたから、余計にそう感じたのかもしれない。こんな強いものを内に秘めているなどとても想像出来なかった。
「凄かったよな~ラフォン侯爵令嬢!」
「ええ、噂とは大違いだったわ。圧倒的な存在感にあの気高さ!」
「俺、鳥肌立ったよ。あんなに可愛いのに強いなんて反則だろ!」
「一瞬だぜ、一瞬!賊を倒したの。あの挑戦的な目、二度と忘れられねぇよ」
「一緒に居たカロン侯爵令嬢も綺麗だったよな~水色と赤、対照的で絵になるよな」
「ああ、二人ともクールでかっこよくて、思わず拝みそうになったよ!」
「ええ~私も見たかった」
詐欺集団が捕まった影響で暫く店を閉める事になったが、従業員の話題は彼女たちの事が主だった。詐欺を未然に防いだ事もそうだが、賊を一瞬で沈めた強さと存在感に誰もが目を奪われたのだ。恩人という事もあり普段は貴族に点が辛いセリアやジャゾンまでべた誉めだったが、高位貴族など滅多にお目にかかる事のない存在なのも大きかったのかもしれない。彼女のような身分の者は店に来るのは稀なのだ。
さらに驚く事に、彼女は侯爵家の力を使って詐欺集団の根城や、他の店で別の名を語っていたことなども調べ上げていた。自分もヒューゴ達に頼んで情報を集めていたが…速さといい精度といい、さすがは侯爵家といったところだろうか。お陰で思った以上に詐欺の全容がはっきりして、そのためか今まで口を噤んでいた商会も被害を訴えられるようになった。
ラフォン家が直接調査し、敵認定したのも大きいだろう。どこかで取引先の貴族が絡んでいるかもしれないと躊躇していた店もあったが、ラフォン家が後ろにいるとなれば話は別だ。むしろ隠す事でラフォン家の意に反すると見られる可能性がある。捜査に協力する商会が増え、事件は呆気ないほどに全容が明らかになった。
倒れた男を前に、彼女はその場に過ぎる程の艶やかな笑みを浮かべてそう告げた。ぞわりと、全身をこれまでに感じた事のない冷たい熱が走った気がした。思わず跪いてしまいそうになるほどの畏怖の念を抱かせたその姿は、これまでの印象が全てひっくり返るほどのもので。場を圧倒する存在感と威圧感は、彼女が我が国一の侯爵家の総領姫なのだと物語っていた。
(ああ、これが…筆頭侯爵家なのか…)
挑発的に輝く水色の瞳には冷たい炎が揺らめき、上気した頬と笑みを浮かべた口元は愛らしいのに侵しがたい品があって、目を奪われるとはこういう事なのかと納得した。いつもは盗み見るように控えめに視線を向けてきていたが、今の彼女にそんな影は微塵もなかった。
これまでも上位貴族と接する機会はあったが、これほどの強いオーラを放つ者は見た事がなかった。普段の彼女はどこにでもいる普通の令嬢と変わらないように見えたから、余計にそう感じたのかもしれない。こんな強いものを内に秘めているなどとても想像出来なかった。
「凄かったよな~ラフォン侯爵令嬢!」
「ええ、噂とは大違いだったわ。圧倒的な存在感にあの気高さ!」
「俺、鳥肌立ったよ。あんなに可愛いのに強いなんて反則だろ!」
「一瞬だぜ、一瞬!賊を倒したの。あの挑戦的な目、二度と忘れられねぇよ」
「一緒に居たカロン侯爵令嬢も綺麗だったよな~水色と赤、対照的で絵になるよな」
「ああ、二人ともクールでかっこよくて、思わず拝みそうになったよ!」
「ええ~私も見たかった」
詐欺集団が捕まった影響で暫く店を閉める事になったが、従業員の話題は彼女たちの事が主だった。詐欺を未然に防いだ事もそうだが、賊を一瞬で沈めた強さと存在感に誰もが目を奪われたのだ。恩人という事もあり普段は貴族に点が辛いセリアやジャゾンまでべた誉めだったが、高位貴族など滅多にお目にかかる事のない存在なのも大きかったのかもしれない。彼女のような身分の者は店に来るのは稀なのだ。
さらに驚く事に、彼女は侯爵家の力を使って詐欺集団の根城や、他の店で別の名を語っていたことなども調べ上げていた。自分もヒューゴ達に頼んで情報を集めていたが…速さといい精度といい、さすがは侯爵家といったところだろうか。お陰で思った以上に詐欺の全容がはっきりして、そのためか今まで口を噤んでいた商会も被害を訴えられるようになった。
ラフォン家が直接調査し、敵認定したのも大きいだろう。どこかで取引先の貴族が絡んでいるかもしれないと躊躇していた店もあったが、ラフォン家が後ろにいるとなれば話は別だ。むしろ隠す事でラフォン家の意に反すると見られる可能性がある。捜査に協力する商会が増え、事件は呆気ないほどに全容が明らかになった。
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