【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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ラフォン家の血

 侯爵との話し合いは、ある意味想定内であり想定外でもあった。想定内だったのは婚約を公表する前に私が侯爵家の分家に養子に入る事で、想定外だったのはその先がファリエール伯爵だった事だ。あの家は侯爵の実弟が継いでいたからだ。話を聞けばあの家には娘が一人しかいないが、伯爵家に嫁入りが決まっているという。ファリエール伯爵家はラフォン家一族を主に経済面で支えるための存在で、彼の家が持つ商会を取りまとめているのだと言われた。

「君にうってつけだろう?」

 そう言って人の悪い笑みを向けた侯爵だったが、つまりはそこを取り仕切れという事なのだろう。彼の話では一人娘に商才があれば任せたが、残念ながらその力がなく後継者は空席だという。

「まぁ、まだ先の事はわからないけどね」

 何とも含みのある言い方をする侯爵だったが、それ以上は話してはくれなかった。きっとまだ時期ではないか、私には関係がないのだろう。

 その後侯爵は王宮に呼ばれているからと、出かけてしまった。その後私の相手をしてくれたのは侯爵夫人だった。美しい銀の髪と娘と同じ水色の瞳を持つ夫人は、とても二児の母親とは思えないほどに若々しく、儚げな印象だった。ぱっと見はレティシア嬢に似ているように感じたが、彼女はどちらかというと父親似だろうか。

「ふふ、驚いたでしょう?」

 そう言ってからかうような笑みを見せた夫人だったが、その眼には温かみがあった。彼女も娘のやる事に賛成らしい。

「正直に申し上げますと、まだ自分でいいのかと思う気持ちの方が強いです」

 侯爵と話をした後も、まだ本気なのかと疑う自分がいた。我が国の筆頭侯爵家の意外な一面を消化するのは時間がかかりそうだった。

「でしょうね。私も最初はそうだったわ」

 そう言って夫人は、ここではないどこかを見つめた。それは遠い過去の事だろうか。それから夫人はぽつりぽつりと、侯爵と結婚した経緯を話してくれた。

「ふふ、中々強引だったでしょう?」

 そう言った夫人だったが、確かに結婚に至る経緯は強引の一言では済まないもので、目の前でにこやかに微笑む婦人との温度差が甚だしかった。

「でも、それがラフォン家の本質なのよ。彼は、彼らは一途といえば聞こえがいいけれど、しつこくて諦めが悪いのよね」
「そう、ですか」
「そして、その血はレティにも受け継がれているわ。あの子はラフォンそのものなの。それでも…兄の事があったから随分我慢しているようだけどね」
「兄君、ですか?」
「ええ、あの子の兄は留学先でとある女性に好意を持たれたんだけど…薬を盛られて襲われそうになって大変だったのよ」
「薬を…」

 確かにラフォン家の長男は留学中だと聞く。そのせいもあって動向が表に出ていなかったが、そう言う事情があったとは知らなかった。

「今はその国を出て身を隠しているけど、中々しつこくて。それがあるからあの子も強引な事は出来なかったみたいね」

 なるほど、彼女がその権力を使わなかったのはそう言う事情があったのかと合点した。

「しかし、私にはご令嬢を守る力はありません。それでは…」
「ああ、それはいいのよ。あの子を守る必要はないわ。まだ発展途上だけど、あの子は守られるような子じゃない、守る側なのよ」
「ですが…」
「守るなら、あの子の心を守ってあげて。あの子の側にいるだけでいいのよ。愛する者が側にいる、それがあの子には一番の力になるから」

 これでは立場が逆ではないかと思ったが…夫人はもう一度、レティシア嬢は守る側なのだと言い切った。


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