【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい～本来の私に戻って初恋の君を射止めます！

養子縁組と婚約を発表

　夜会が始まりました。まずはお父様が来賓の皆様にご挨拶をして、その後でリシャール様と私の事を発表する段取りです。婚約の事は外に漏れないよう気を付けていたので、会場内には私と縁付けようと令息がいる家は軒並み出席されたようです。

「…次に、皆様にご報告があります」

　お父様の挨拶に続いて告げられた言葉に、会場はシン…と静まり返りました。夜会で報告されるのは重大なものが多いので、皆さん、固唾を飲んで待っているという感じです。リシャール様の養子の件は、本来ならファリエール伯爵家で発表するのが筋ですが、今回は私との婚約がセットといいますか、私と婚約するからファリエール伯爵家の養子に入る、という意味合いが強いのですよね。だから我が家の夜会での発表なのです。それに…本家の当主であるお父様が発表した方が箔が付く、という意味合いもあります。これもリシャール様をお父様が認めていると示すためで、叔父様がするよりも何倍も重みが違ってくるのです。
　ドアの向こうの気配を感じて緊張が高まりました。チラ、とリシャール様を見上げるとリシャール様も私の視線に気付いたようです。リシャール様も表情が固めですが…それでも私の視線に気付いて小さく笑みを向けて下さったので、それだけで頬が熱を持ったような気がしました。そうしている間に扉が開いたので、私はリシャール様のエスコートで入場しました。

　私達の姿に、会場内は言いようのない緊張感とどよめきに包まれました。ラフォン家の娘、それも半年ほど前に第二王子殿下に婚約破棄された娘が、男性と一緒に入場したのです。しかも、二人揃いの衣装でとなれば、その意図など言わずもがなです。

「まずは我が一門のファリエール伯爵家に、マルロー子爵家のリシャールを養子として迎え入れる事にしました」

　お父様の宣言に、周囲は一気に騒めきました。ファリエール伯爵家は我がラフォン一族の中では本家に次ぐ家で、当主の次男か三男が継ぐのが定番です。そこに我が一門でもないリシャール様が入るのは、確かに異例といえましょう。

「そして、我が娘レティシアとファリエール伯爵令息リシャールの婚約をここに表明します。いずれレティシアはファリエール伯爵家に嫁ぎ、二人でラフォン本家を支える事になるでしょう」

　お父様の宣言は、会場内を更に混乱の渦に放り込みました。先ほどの衝撃も冷めぬ間に、さらなる波がやってきたのですから仕方ないでしょう。

「な…そんな…」
「馬鹿な。無関係の者が養子に入るなど…」
「マルロー商会の三男がどうして？」
「そんな…レティシア様はそれでいいと仰っているのか？」

　皆様、すっかりド肝を抜かれたようです。これから私とお近づきに…と考えていた方々にはとんでもない横槍でしょう。

「ご紹介に預かりましたリシャールです。誠心誠意ラフォン侯爵家とファリエール伯爵家のため、そして何よりもレティシア様のために力を尽くす所存でございます。どうぞよろしくお願い致します」

　恭しく一礼してそう宣言したリシャール様は、とても子爵家の出とは思えないほどに優美に堂々と挨拶をされました。最後に笑みを浮かべたのでしょうか、頬を赤くする令嬢の姿があちこちに見えました。やはりリシャール様の笑顔は危険ですわね。これは余計な虫が付かないか気を付けないといけない気がしますわ。

「ファリエール伯爵令息リシャール様と婚約いたしましたレティシアでございます。この度、念願叶ってリシャール様と婚約出来ました事、皆様にご報告申し上げます。どうぞ温かく見守り下さい」

　にっこりと笑みを浮かべてそう告げると、会場内は益々ざわめきが深くなりました。今の言い方でこの婚約を望んだのが私自身だと皆さんに伝わったでしょう。私達の間に入り込もうとする輩は許さないとの警告でもありますが、そこまで読み取って下さるといいのですが…