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王宮の庭園
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昇天しかかっていた私でしたが、気が付けば三曲も続けて踊ってしまいました。エルネスト様とは二回以上踊った事はなかったのですが、リシャール様とだとずっと踊っていたいと思うほどに楽しかったのです。踊り終えると、拍手に包まれました。えっと…?
「素晴らしい。なんて息が合ったお二人なのでしょう!」
「うそでしょ、ラフォン嬢はダンスが下手だって…」
「そんな筈ないだろう?今のダンスを見たらどう考えても…」
「じゃ、あの噂はやっぱり…エルネスト様が下手だっただけか…」
周りの方々がそう噂していますが、そう言えばエルネスト様、私と踊りたくないからと私はダンスが下手で踊りたがらないのだと吹聴していたのですよね。私も踊りたくなかったので反論しませんでしたが。先ほどのエルネスト様とアネット様のダンスと比べて、あの噂がデマだったとわかって下さったようです。
「リシャール様、凄く踊りやすかったです」
「レティが上手だからですよ」
「いいえ、リシャール様のリードがお上手だからですわ」
ええ、やはりダンスは相手に寄りますわね。そうは言っても今回は、リシャール様の甘々なお言葉に私はすっかり骨抜きになって、別の危機を感じましたが…魂が持っていかれなくて本当によかったですわ。
喉が渇いたので、飲み物を頂こうとホールの端の方に移動しました。そう言えば今日の舞踏会は昼過ぎの開始だったので、外はまだ明るいのですよね。
「リシャール様、庭に出てみませんか?」
「庭にですか?」
「ええ、まだ明るいですし、ここの庭園も素敵なのです。座る場所もありますし飲み物も頂けますわ」
こうして私達が庭に出ると、あちこちで散策する人の姿が見えました。まだ日は高く日差しが暑いくらいですが、風は涼しくて気持ちいいですわね。ちょうど木陰のベンチが空いていたので腰を下ろし、近くにいた給仕に飲み物を頼むと、直ぐに冷たいシャンパンを渡されました。喉が渇いたので一気に飲みたいのを我慢して、ゆっくり淑女のように喉を潤しました。さすがに酒乱を疑われるような事は避けたいですし。
「さすがは王宮の庭園、素晴らしいですね…」
リシャール様はシャンパンを飲みながら庭園を見渡すと、感嘆の声を上げました。
「ええ、ここは他国の王族の方を意識して、他よりも特に力を入れて手入れされているそうです」
「なるほど、確かに相当な手間が必要でしょうね」
やはり何度見てもこの庭園は素晴らしいの一言に尽きます。ここは生け垣や木々が整然と刈り込まれた人工的な庭園の代表格で、その規模もかなりのものです。どの季節に来ても楽しめるよう、常に大勢の庭師が手入れをしているのです。
「あの、お疲れではありませんか?」
「あれくらいなら何の問題もありませんよ」
「そうですか?でも、気疲れしませんか?初めての参加ですし」
「そう言う意味では気は張りますが、それよりも好奇心の方が勝りますね。今何が流行っているのか、どのような物が好まれているのかも見えますし」
さすがですわ、リシャール様。こんな時でも商売の事をお考えなのですね。でも、リシャール様のお店は上位貴族向けの高級アクセサリーのお店です。そう言う意味では格好のリサーチの場ですわね。
「たくさんご令嬢もいらっしゃいましたし、新しい商品のヒントになりそうですわね」
「そうですね。でも、一番は貴女ですよ、レティ。貴女に似合うかと考えていると、いいアイデアが次々浮かびますから」
「……」
い、今、何を言われたのでしょうか。そ、それは会っていない時も私の事を考えて下さっている、という事でしょうか…思いがけない言葉に、私は心の中で叫んだのでした。
(我が人生に一片の悔いなし、ですわ…!)
「素晴らしい。なんて息が合ったお二人なのでしょう!」
「うそでしょ、ラフォン嬢はダンスが下手だって…」
「そんな筈ないだろう?今のダンスを見たらどう考えても…」
「じゃ、あの噂はやっぱり…エルネスト様が下手だっただけか…」
周りの方々がそう噂していますが、そう言えばエルネスト様、私と踊りたくないからと私はダンスが下手で踊りたがらないのだと吹聴していたのですよね。私も踊りたくなかったので反論しませんでしたが。先ほどのエルネスト様とアネット様のダンスと比べて、あの噂がデマだったとわかって下さったようです。
「リシャール様、凄く踊りやすかったです」
「レティが上手だからですよ」
「いいえ、リシャール様のリードがお上手だからですわ」
ええ、やはりダンスは相手に寄りますわね。そうは言っても今回は、リシャール様の甘々なお言葉に私はすっかり骨抜きになって、別の危機を感じましたが…魂が持っていかれなくて本当によかったですわ。
喉が渇いたので、飲み物を頂こうとホールの端の方に移動しました。そう言えば今日の舞踏会は昼過ぎの開始だったので、外はまだ明るいのですよね。
「リシャール様、庭に出てみませんか?」
「庭にですか?」
「ええ、まだ明るいですし、ここの庭園も素敵なのです。座る場所もありますし飲み物も頂けますわ」
こうして私達が庭に出ると、あちこちで散策する人の姿が見えました。まだ日は高く日差しが暑いくらいですが、風は涼しくて気持ちいいですわね。ちょうど木陰のベンチが空いていたので腰を下ろし、近くにいた給仕に飲み物を頼むと、直ぐに冷たいシャンパンを渡されました。喉が渇いたので一気に飲みたいのを我慢して、ゆっくり淑女のように喉を潤しました。さすがに酒乱を疑われるような事は避けたいですし。
「さすがは王宮の庭園、素晴らしいですね…」
リシャール様はシャンパンを飲みながら庭園を見渡すと、感嘆の声を上げました。
「ええ、ここは他国の王族の方を意識して、他よりも特に力を入れて手入れされているそうです」
「なるほど、確かに相当な手間が必要でしょうね」
やはり何度見てもこの庭園は素晴らしいの一言に尽きます。ここは生け垣や木々が整然と刈り込まれた人工的な庭園の代表格で、その規模もかなりのものです。どの季節に来ても楽しめるよう、常に大勢の庭師が手入れをしているのです。
「あの、お疲れではありませんか?」
「あれくらいなら何の問題もありませんよ」
「そうですか?でも、気疲れしませんか?初めての参加ですし」
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さすがですわ、リシャール様。こんな時でも商売の事をお考えなのですね。でも、リシャール様のお店は上位貴族向けの高級アクセサリーのお店です。そう言う意味では格好のリサーチの場ですわね。
「たくさんご令嬢もいらっしゃいましたし、新しい商品のヒントになりそうですわね」
「そうですね。でも、一番は貴女ですよ、レティ。貴女に似合うかと考えていると、いいアイデアが次々浮かびますから」
「……」
い、今、何を言われたのでしょうか。そ、それは会っていない時も私の事を考えて下さっている、という事でしょうか…思いがけない言葉に、私は心の中で叫んだのでした。
(我が人生に一片の悔いなし、ですわ…!)
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