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思いがけない訪問者
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「やだもう、無理ぃいいいいっ!!!」
リシャール様がいなくなって三日目の朝、私は朝日を目にした瞬間、そう叫んでいました。私の精神は心配し過ぎて既に崩壊寸前です。いなくなったと知ってからは一睡も出来ていませんし、食事も喉を通りません。それでもいざという時のために動けないのでは困ると、最低限の食事はしていますが…
「お嬢様、落ち着いて下さい」
「嫌よ!待つだけなんてもう無理!リシャール様を探しに行くわっ!」
じっと待つだけがこんなにも苦しく、身を切るように辛いとは思いませんでした。何が辛いって、最悪の想像がダース単位で襲ってくるのです。それは時間が経つにつれてどんどん酷いものへと変わっていき、私の精神をすり減らしていきます。
「お嬢様!お苦しいのはリシャール様もですわ!お気を確かに!ここで取り乱しては相手の思うつぼですわ!」
「でも…!こうしている間にもリシャール様に何かあったら…!」
「ですから!リシャール様のために!落ち着いて下さい!」
再度コレットに怒鳴る様に言われて、私はその音量にびっくりしましたが…何とか正気に戻ることが出来ました。こんなんじゃだめだとわかっていますが…リシャール様だからこそ心配でじっとしていられないのです。その時です。
「お嬢様、お客様です」
「お客様、って…私に?」
「ええ。何でもリシャール様のご友人だと仰る方が…」
「ご友人って…」
このタイミングでリシャール様のご友人が訪ねてくるなんて…私は急く気持ちを必死に抑えながら、その方を応接室に通すようにお願いしました。
「初めまして、レティシア=ラフォンです」
「初めてお目にかかります。ヒューゴ=バルベと申します。申し訳ございません、先触れもなくお伺いして…」
「いえ。それよりも、どのようなご用件で…」
ヒューゴ様と名乗った方はくすんだ茶色の髪を持つリシャール様と同じくらいの年齢の男性でした。鬱陶しく感じるもさっとした髪に、大きすぎるように見える眼鏡をかけて、図書館の奥にでも籠っていそうな雰囲気の方です。リシャール様とどのような関係なのでしょうか…気持ちとしては藁にも縋る思いですが、ここは何事もないように振舞わなければなりません。
「実は…リシャールの事でお耳に入れたい事が…」
ヒューゴ様と仰る肩の言葉に、私は思わず息を飲み込みました。
「では、リシャール様は人買いに…」
ヒューゴ様のお話は思いがけないものでした。彼の話ではリシャール様は今、人身売買の組織に捕まり、とある場所に軟禁されていると言うのですから。
「ど、どうしてそのような事が…」
「その人身売買の連中に雇われていた破落戸が、リシャールの知り合いでして」
「リシャール様と?」
「ええ。とある屋敷の警護を頼まれているそうですが、そこで見かけたと。リシャールに恩を感じている奴で、何とかならないかと人伝に自分に言ってきたのです」
「……」
それは俄かには信じがたい話でした。一体どのような経緯でそのような事になったのでしょうか…一方でリシャール様の手がかりへの期待が急速に高まっていくのを感じながら、次の言葉を待ちました。
リシャール様がいなくなって三日目の朝、私は朝日を目にした瞬間、そう叫んでいました。私の精神は心配し過ぎて既に崩壊寸前です。いなくなったと知ってからは一睡も出来ていませんし、食事も喉を通りません。それでもいざという時のために動けないのでは困ると、最低限の食事はしていますが…
「お嬢様、落ち着いて下さい」
「嫌よ!待つだけなんてもう無理!リシャール様を探しに行くわっ!」
じっと待つだけがこんなにも苦しく、身を切るように辛いとは思いませんでした。何が辛いって、最悪の想像がダース単位で襲ってくるのです。それは時間が経つにつれてどんどん酷いものへと変わっていき、私の精神をすり減らしていきます。
「お嬢様!お苦しいのはリシャール様もですわ!お気を確かに!ここで取り乱しては相手の思うつぼですわ!」
「でも…!こうしている間にもリシャール様に何かあったら…!」
「ですから!リシャール様のために!落ち着いて下さい!」
再度コレットに怒鳴る様に言われて、私はその音量にびっくりしましたが…何とか正気に戻ることが出来ました。こんなんじゃだめだとわかっていますが…リシャール様だからこそ心配でじっとしていられないのです。その時です。
「お嬢様、お客様です」
「お客様、って…私に?」
「ええ。何でもリシャール様のご友人だと仰る方が…」
「ご友人って…」
このタイミングでリシャール様のご友人が訪ねてくるなんて…私は急く気持ちを必死に抑えながら、その方を応接室に通すようにお願いしました。
「初めまして、レティシア=ラフォンです」
「初めてお目にかかります。ヒューゴ=バルベと申します。申し訳ございません、先触れもなくお伺いして…」
「いえ。それよりも、どのようなご用件で…」
ヒューゴ様と名乗った方はくすんだ茶色の髪を持つリシャール様と同じくらいの年齢の男性でした。鬱陶しく感じるもさっとした髪に、大きすぎるように見える眼鏡をかけて、図書館の奥にでも籠っていそうな雰囲気の方です。リシャール様とどのような関係なのでしょうか…気持ちとしては藁にも縋る思いですが、ここは何事もないように振舞わなければなりません。
「実は…リシャールの事でお耳に入れたい事が…」
ヒューゴ様と仰る肩の言葉に、私は思わず息を飲み込みました。
「では、リシャール様は人買いに…」
ヒューゴ様のお話は思いがけないものでした。彼の話ではリシャール様は今、人身売買の組織に捕まり、とある場所に軟禁されていると言うのですから。
「ど、どうしてそのような事が…」
「その人身売買の連中に雇われていた破落戸が、リシャールの知り合いでして」
「リシャール様と?」
「ええ。とある屋敷の警護を頼まれているそうですが、そこで見かけたと。リシャールに恩を感じている奴で、何とかならないかと人伝に自分に言ってきたのです」
「……」
それは俄かには信じがたい話でした。一体どのような経緯でそのような事になったのでしょうか…一方でリシャール様の手がかりへの期待が急速に高まっていくのを感じながら、次の言葉を待ちました。
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