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不審者を追及
「な、何で、あんた達が…」
声をかけられて盛大に動揺したらしいアネット様。いつもの庇護欲をそそる可愛らしい容姿が引き攣り、言葉使いも素に戻っていたようですが…
「リシャール!やっぱり私を助けに来てくれたのね!」
リシャール様の姿を視界に入れた途端、突然感激し始めた彼女に、私もリシャール様も一瞬ポカンとしてしまいました。でも、仕方ないですよね?何の接点もない相手の部屋に変装して入り込んだ不審者に声を掛けたら、返ってきたのがそれなのです。こんな会話を予測出来る方、この世に何人いるでしょうか…
「…助けに来たわけじゃない。ここで何をしている?」
(ええっ?!い、今の声って…リシャール様?!)
地を這うような低い声に、目の前のアネット様がヒッと小さな悲鳴を上げてすくみ上りましたが…私も思わず彼女と同じリアクションを取りそうになりましたわ。こ、こんなリシャール様を見るのは初めてです…
「な…そ、そんな…リ、リシャール、どうしたの?そんな怖い声して…」
上目遣いにリシャール様を見上げるアネット様ですが、リシャール様は塩対応どころか霜対応で、アネット様が益々竦み、一歩下がりました。もしかして今まで、こんな対応をされた事がなかったのでしょうか。
「もう一度聞く。何をしていた?ここはラフォン侯爵家の嫡男の控室だぞ?」
「わ、私はただ…こ、これをこの部屋に運ぶように頼まれて…」
「誰に?」
「そ、それは…」
リシャール様の冷たく容赦のない追及に、アネット様は怯えながらも応えていましたが…相手の話になると口を噤みました。何度尋ねても今度は口を堅く引き結んでだんまりです。誰かに頼まれたのは予測出来ましたが…問題は誰か、ですわね。
「頼んだ相手が言えませんの?」
「……」
「それでは、アネット様がご自身の意思でおやりになった、という事ですわね」
「…なっ!」
「その水差しも調べさせて頂きますわ」
「…そ…」
「もし何か出てきたら…それはアネット様の仕業という事になるわね。他国の王太子殿下の配偶者と望まれた、我が国筆頭侯爵家の嫡男に何か盛ろうとしたとなれば…男爵家は取り潰しの上一家全員処刑、かしら?」
「な…!」
まさかと言わんばかりに言葉を失ったアネット様ですが…既に王配にと内定しているお兄様は王族に次ぐ立場です。しかも国の貴族を取りまとめる我が家の嫡男を害しようとすれば、それくらいは当然でしょうに…仮にそこまでの罪に問われなくても、我が家に敵対したと知れれば男爵家などあっという間に消えてなくなるでしょう。我が家が手を下さずとも、他の貴族が許しませんから。
「そ、そんなぁ!わ、私は頼まれただけで…!」
「でも、頼んだ相手を仰らないのでは、ね」
「…ぃ、言う!言うから!何でもするから!だから家族には手を出さないでっ!」
これまで私を馬鹿にしたような態度ばかり取っていたアネット様でしたが…家族の事に言及すると急に態度を変えました。さっきまでの態度はどこへやら、今は私達の前に膝をついて両手を合わせて懇願しています。
(あれ?アネット様って…そう言うキャラでしたっけ?)
正直に言いますと、家族なんかどうでもいい、踏み台にしてやると言うタイプと思っていましたが…リシャール様に続いて意外な面を見せたアネット様に、私は人には色んな顔があるのだと改めて驚かざるを得ませんでした。
声をかけられて盛大に動揺したらしいアネット様。いつもの庇護欲をそそる可愛らしい容姿が引き攣り、言葉使いも素に戻っていたようですが…
「リシャール!やっぱり私を助けに来てくれたのね!」
リシャール様の姿を視界に入れた途端、突然感激し始めた彼女に、私もリシャール様も一瞬ポカンとしてしまいました。でも、仕方ないですよね?何の接点もない相手の部屋に変装して入り込んだ不審者に声を掛けたら、返ってきたのがそれなのです。こんな会話を予測出来る方、この世に何人いるでしょうか…
「…助けに来たわけじゃない。ここで何をしている?」
(ええっ?!い、今の声って…リシャール様?!)
地を這うような低い声に、目の前のアネット様がヒッと小さな悲鳴を上げてすくみ上りましたが…私も思わず彼女と同じリアクションを取りそうになりましたわ。こ、こんなリシャール様を見るのは初めてです…
「な…そ、そんな…リ、リシャール、どうしたの?そんな怖い声して…」
上目遣いにリシャール様を見上げるアネット様ですが、リシャール様は塩対応どころか霜対応で、アネット様が益々竦み、一歩下がりました。もしかして今まで、こんな対応をされた事がなかったのでしょうか。
「もう一度聞く。何をしていた?ここはラフォン侯爵家の嫡男の控室だぞ?」
「わ、私はただ…こ、これをこの部屋に運ぶように頼まれて…」
「誰に?」
「そ、それは…」
リシャール様の冷たく容赦のない追及に、アネット様は怯えながらも応えていましたが…相手の話になると口を噤みました。何度尋ねても今度は口を堅く引き結んでだんまりです。誰かに頼まれたのは予測出来ましたが…問題は誰か、ですわね。
「頼んだ相手が言えませんの?」
「……」
「それでは、アネット様がご自身の意思でおやりになった、という事ですわね」
「…なっ!」
「その水差しも調べさせて頂きますわ」
「…そ…」
「もし何か出てきたら…それはアネット様の仕業という事になるわね。他国の王太子殿下の配偶者と望まれた、我が国筆頭侯爵家の嫡男に何か盛ろうとしたとなれば…男爵家は取り潰しの上一家全員処刑、かしら?」
「な…!」
まさかと言わんばかりに言葉を失ったアネット様ですが…既に王配にと内定しているお兄様は王族に次ぐ立場です。しかも国の貴族を取りまとめる我が家の嫡男を害しようとすれば、それくらいは当然でしょうに…仮にそこまでの罪に問われなくても、我が家に敵対したと知れれば男爵家などあっという間に消えてなくなるでしょう。我が家が手を下さずとも、他の貴族が許しませんから。
「そ、そんなぁ!わ、私は頼まれただけで…!」
「でも、頼んだ相手を仰らないのでは、ね」
「…ぃ、言う!言うから!何でもするから!だから家族には手を出さないでっ!」
これまで私を馬鹿にしたような態度ばかり取っていたアネット様でしたが…家族の事に言及すると急に態度を変えました。さっきまでの態度はどこへやら、今は私達の前に膝をついて両手を合わせて懇願しています。
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