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お兄様の今後
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エスネスト様とアドリエンヌ様の一件はあっという間に広がってしまいました。目撃者が多かっただけでなく、貴族出身の侍女や護衛騎士となればその情報網、決して甘くはないのです。
こうなってはあの二人も結婚しないわけにはいきません。エルネスト様も一国の王子なので、お互いに体裁は保たれるでしょう。逆にこれを逃せばまともな縁談は望めないのですよね、特にアドリエンヌ様は。
「これで…アドリエンヌ様もお兄様を諦めてくれるでしょうか」
あの夜会から三日経ちました。そろそろ王宮では今後の方針が決まったのではないかと思った私は、両親とリシャール様の四人でお茶を頂いている時にお父様に尋ねてみました。
「そうするしかないだろう。あの王女はエルネスト殿下と結婚する事になった」
「では、嫁入りを?」
「いや、今は婿入りの方向で話が進んでいる」
父王に溺愛されて育ったアドリエンヌ様ですし、お兄様にも婿入りの打診があったので、そうなる可能性は考えていましたが…でも、エルネスト様はあれでも一国の王子です。継承権が低い王女に婿入りとは…ほとんど前例がないだけに、周囲の反応が気になりますわね。
「でも、王妃様は?王妃様がそう簡単に頷くでしょうか?」
「ああ、今一番反対しているのは王妃様だ。だが…エルネスト殿下の立場を考えれば、この国にいるよりは居心地はいいだろう。なんせここでは王女に人違いで襲われた残念王子と言われているからな」
「ふふっ、確かにその通りね」
お母様が楽しそうに声を弾ませました。確かに今のエルネスト様の立場はそうなのですよね。お兄様の身代わりに襲われたと、貴族であれば皆が知っているでしょう。
「それにリスナールの王太子殿下の王配候補を襲おうとしたのだ。陛下としても今回の件は許し難く思われている。ただ、それを言い出すと王太子殿下の醜聞にもなり兼ねない。現時点では、このまま何もなかった事にして幕を引く方向で話が進んでいる」
「それでは、あの王女殿下を処罰できないんですの?」
お兄様と仲が良いお母様が不快さを露わにされました。お母様としてはこの機会にあの王女を断罪したいと思っていらっしゃったのでしょう。私もそのつもりでしたし。
「あの王女を何とかしたいのは私も同じだが、そうなると事実を明らかにする必要がある。だがそれはレアンドルの醜聞となるし、更には王太子殿下の御名に傷がつきかねん。これから両国間で友好な関係を築こうという今、どんな小さな傷も避けたいのだ」
「そう、ですか…」
お兄様の醜聞と言われては、お母様もそれ以上は何も言えないようでした。これから王配として単身大国に向かうお兄様をお母様はとても心配していらっしゃるのですよね。勿論、あの王女から逃げるには最善ですが、身寄りのない他国で愛のない結婚をするお兄様を、お母様はとても案じているのです。
「ねぇ、あなた。アドリエンヌ様がエルネスト様と結婚されるのであれば…レアンドルは王太子殿下と愛のない結婚する必要はないのではないの?」
「それもそうだが…既に国同士の話し合いは進んでいる。今更撤回は難しいだろう」
「そう、ですか…」
その可能性を私も考えていましたが…時すでに遅し、ですのね。もっと早くにこうなってくれたら…と思ってしまうお母様の気持ちは私も痛いほどわかります。
「それに…レアンドルにも恋人がいるらしい」
「は?」
「え…?」
お父様の言葉に、私とお母様は同時に固まってしまいました。
こうなってはあの二人も結婚しないわけにはいきません。エルネスト様も一国の王子なので、お互いに体裁は保たれるでしょう。逆にこれを逃せばまともな縁談は望めないのですよね、特にアドリエンヌ様は。
「これで…アドリエンヌ様もお兄様を諦めてくれるでしょうか」
あの夜会から三日経ちました。そろそろ王宮では今後の方針が決まったのではないかと思った私は、両親とリシャール様の四人でお茶を頂いている時にお父様に尋ねてみました。
「そうするしかないだろう。あの王女はエルネスト殿下と結婚する事になった」
「では、嫁入りを?」
「いや、今は婿入りの方向で話が進んでいる」
父王に溺愛されて育ったアドリエンヌ様ですし、お兄様にも婿入りの打診があったので、そうなる可能性は考えていましたが…でも、エルネスト様はあれでも一国の王子です。継承権が低い王女に婿入りとは…ほとんど前例がないだけに、周囲の反応が気になりますわね。
「でも、王妃様は?王妃様がそう簡単に頷くでしょうか?」
「ああ、今一番反対しているのは王妃様だ。だが…エルネスト殿下の立場を考えれば、この国にいるよりは居心地はいいだろう。なんせここでは王女に人違いで襲われた残念王子と言われているからな」
「ふふっ、確かにその通りね」
お母様が楽しそうに声を弾ませました。確かに今のエルネスト様の立場はそうなのですよね。お兄様の身代わりに襲われたと、貴族であれば皆が知っているでしょう。
「それにリスナールの王太子殿下の王配候補を襲おうとしたのだ。陛下としても今回の件は許し難く思われている。ただ、それを言い出すと王太子殿下の醜聞にもなり兼ねない。現時点では、このまま何もなかった事にして幕を引く方向で話が進んでいる」
「それでは、あの王女殿下を処罰できないんですの?」
お兄様と仲が良いお母様が不快さを露わにされました。お母様としてはこの機会にあの王女を断罪したいと思っていらっしゃったのでしょう。私もそのつもりでしたし。
「あの王女を何とかしたいのは私も同じだが、そうなると事実を明らかにする必要がある。だがそれはレアンドルの醜聞となるし、更には王太子殿下の御名に傷がつきかねん。これから両国間で友好な関係を築こうという今、どんな小さな傷も避けたいのだ」
「そう、ですか…」
お兄様の醜聞と言われては、お母様もそれ以上は何も言えないようでした。これから王配として単身大国に向かうお兄様をお母様はとても心配していらっしゃるのですよね。勿論、あの王女から逃げるには最善ですが、身寄りのない他国で愛のない結婚をするお兄様を、お母様はとても案じているのです。
「ねぇ、あなた。アドリエンヌ様がエルネスト様と結婚されるのであれば…レアンドルは王太子殿下と愛のない結婚する必要はないのではないの?」
「それもそうだが…既に国同士の話し合いは進んでいる。今更撤回は難しいだろう」
「そう、ですか…」
その可能性を私も考えていましたが…時すでに遅し、ですのね。もっと早くにこうなってくれたら…と思ってしまうお母様の気持ちは私も痛いほどわかります。
「それに…レアンドルにも恋人がいるらしい」
「は?」
「え…?」
お父様の言葉に、私とお母様は同時に固まってしまいました。
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