【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

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お兄様の想い人

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「レアンドルの、想う方…」

 お兄様の恋と聞いて、お母様は少しショックだったのでしょうか。小さな呟きには戸惑いが含まれているように感じられました。これは、女親が息子の恋人に嫉妬するというものでしょうか。お母様はお祖父様に後継者として認められていないお兄様を人一倍案じていらっしゃいましたし、アドリエンヌ様の事もあってそれが一層拍車をかけているのは想像に難くありませんが。

「それについては、私からお話します」

 そう言ったのは、これまでずっとセレスティーヌ様の隣で控えめに佇んでいたお兄様でした。王配と言う立場故か、それとも元の性格からか、お兄様は実家だと言うのに態度を崩す事なくいらっしゃって、それが気になっていたのですよね。もしかしたら今日は、恋人の話をするために緊張されていた、のでしょうか。

「父上、母上も、落ち着いて聞いて下さい」
「ああ」
「え、ええ…」

 何だか畏まってそう言われたせいか、お母様の表情に緊張が浮かびました。改まってそう言われると、何だか居住まいを正したくなりますわね。

「私の恋人は…その…」

 言いかけたお兄様もどうも言い辛いらしく、視線をさ迷わせました。やがてその視線はとある方で止まり、相手の方も僅かに表情を強張らせました。こ、これって…

「私の恋人は、このテオドール殿、です」
「…そう、か」
「…あ」

 氷の宰相と呼ばれたお父様も、渋い表情で一言、そう答えるだけでした。お母様は口元に手を当てて、一言言葉を発しましたが、それからは何も言えずにお二人を見比べていました。私は…何となく視線の先を感じてそんな予感を持っていましたが、本当に当たるなんて…
 でも、女装している時のお兄様を見ていたせいでしょうか、違和感はありませんでした。いえ、ここで女性を連れてこられた方が驚いたかもしれません。お二人が話している様はとても親密に見えたからです。あれは苦楽を共にしていたからだと思っていましたが…それだけではなかったのですね。

「…同性同士だが…いいのか?」
「はい」
「テオドール殿もか?」
「はい」

 お父様の問いに、二人は躊躇う事無く答えましたが、真剣な表情のお二人からも本気度が伝わってくるような気がしました。

「私もですがテオドール殿もその…女性が苦手なのです」
「…そう、か」

 お父様が辛うじてそう答え、私は隣にいるリシャール様を見上げると、リシャール様も困ったように眉を下げて小さく頷かれました。これは…どうやらテオドール様も女性が苦手と言うのは間違いないようですわね。

「ラフォン侯爵、どうかこの二人を認めて頂きたいのです。私は恩人として、また友人として、この二人を応援したいと思っております」

 重くなった空気の中、両親の受け入れがたい心情を察してでしょうか、セレスティーヌ様が両親に再び頭を下げられて、私達がぎょっとしてしまいました。そう何度も王太子殿下に頭を下げさせるなど、国は違えど臣下としては有るまじき事です。そりゃあ、中々受け入れ難い事ではありますが…

「…わかりました。王太子殿下のお心遣いに感謝いたします」
「ありがとうございます、侯爵。奥方様もどうか…」
「わかりましたわ!ええ、母親としても二人を応援致しますわ!」

 先ほどまで戸惑い、ショックを受けているのかと思っていたお母様でしたが…何だか楽しそうな声色できっぱりとそう告げました。お母様、もしかして、喜んでいらっしゃる?



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