【完結】悪役令嬢だって真実の愛を手に入れたい~本来の私に戻って初恋の君を射止めます!

灰銀猫

文字の大きさ
179 / 238

子供の頃の甘酸っぱい思い出…?

しおりを挟む
「アロシュ伯爵令嬢。このような場で非常識ですぞ」

 先ほどとは一転して、側近の声が固く冷たいものに変わりました。さすがに内容が内容なだけに、このまま発言を許す事など出来ないでしょう。

「ご令嬢はお疲れのようだ。誰か、彼女を休憩室に」

 側近がそう言うと、近くにいた女官と騎士がドミニク様に近づきました。女官がさぁ、どうぞこちらへ、と優しく声をかけて手を取ろうとしましたが…

「さ、触らないで!」

 ドミニク様は咄嗟に女官の手を振り払って一歩下がりました。どうやら今は引く気がないようです。

「エルネスト様!お約束したではありませんか!私を妃にと…大好きだと…」
「な、何を言って…」

 再び詰め寄ったドミニク様に、エルネスト様は戸惑うばかりですが、この場でこの状況を丸く抑えられるのはエルネスト様でしょうに…・狼狽えてないで上手く彼女を退場させてあげて欲しいのですが、残念ながらそんな事にも気が回らないようです。

「王宮の庭で!薔薇の四阿で…そうお約束しましたわ」
「庭の、四阿…?」

 ドミニク様の決死の呼びかけに、エルネスト様が怪訝そうに眉を顰めました。その様子は記憶を必死に呼び起こそうとしているようにも見えます。周りも殿下の返事が気になるのか、その様子を見守っています。だ、誰か、その話はこちらで、とでも言って退場させて下さい!そう思うのですが…誰もそっちの方向に動きそうもありません。でも、ここで私が出れば火に油を注ぐ事になり兼ねませんし…

「そ、それって…」
「殿下、お心当たりが?」

 エルネスト様の呟きに、側近が驚きを浮かべました。彼が勝手に結婚の約束をしていたのであれば、それは大問題です。既にアネット様の時にやらかしているのに、その上また無責任な約束をしていたのかと、周りの目が冷たく鋭いものになりました。アドリエンヌ様も何も言いませんが、表情が抜けてご不快なのが丸わかりです。黙っているのが意外なほどですわね。それだけエルネスト様に興味がないのかもしれませんが。

「あ、あれは…でも…」
「殿下、そんな事を仰ったのですか?」
「あ、ああ…で、でも」
「でもじゃありません!何でそんな無責任な事を仰ったのです?!」

 側近が険しい声でそう問い詰めると、エルネスト様が怯みました。周りの視線にも気が付いたのでしょうか、怯えた目で回りを見渡しています。

「あ、あれは…だって、子供の頃の話で…」
「子供?」
「あ、ああ…まだ王子教育も始まる前で…一緒に遊んでいたころ、だったと思う…」
「は?」
「ええ…?」

 しどろもどろに答えるエルネスト様ですが…周りもさすがに昔の事過ぎて驚いています。それにしても、そんな子供の頃の事をドミニク様はまだ信じているのでしょうか?周りもさすがに子供の頃の約束だとは思わず、呆気に取られています。そんな子供の頃の事を咎める事も出来ませんし、一方でそれを今でも信じていると言うのも信じがたい話です。私が婚約者で側妃云々の話では、そんな子供の頃とは思えませんが…

「そうよ!エルネスト様は私をお妃様にしてくれるって仰ったわ。必ず迎えに行くから待っていてって。もし好きじゃない人と無理やり結婚させられても、私だけは特別だって!」

 ドミニク様、そんな昔の約束をずっと信じて待っておられたのですか…余りにも思いがけない告白に、誰もが信じられないと思っているのは間違いなさそうでした。



しおりを挟む
感想 209

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。

黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」 豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。 しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。

処理中です...