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ここで聞けという意味ではなかったのですが…
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どうにもドミニク様の様子が気になった私は、ベルティーユ様達と別れて彼女を追いました。普段の彼女ならベルティーユ様にあんな失礼な態度を取る事はないので、それも不安材料です。何となく目も虚ろでしたし、あのままでは何か問題を起こしそうな気がします。
今日はお兄様の事を中心に警戒していましたが、懸念はそれだけではありません。我が国も一枚岩とは言い難く、他国との関係が良好でも、それを崩そうとする輩も存在します。今日は舞踏会を無事に終わらせるのが最優先なのですが…
「エルネスト様っ!」
声が上がったのは、私達が移動し始めてすぐの事でした。そちらの方に視線を向けると人だかりが出来ています。ドミニク様はエルネスト様の事に心を奪われているようだったので、彼に近づく可能性が高いでしょう。彼を呼ぶ声がした方に向かうと…アドリエンヌ様をエスコートしたエルネスト様の前に、ドミニク様が立っているのが見えました。
(マズいですわ…まさか本当に直接尋ねに?)
聞けと言ったのは私ですが、この場でと言う意味ではありません。他国の王族もいる中で、自分を側妃に…などと言い出すなんてあり得ません。でも、今のドミニク様は普通じゃないように見えるので、何を言い出すのか想像もつかないのです。
「エルネスト様…」
エルネスト様に手を伸ばした彼女の前に、彼の側近の一人が入り込みました。このような場で王族に触れようとするのは厳禁です。しかも今は他国の王女をエスコートしているのですから。
「な、何…じゃ、邪魔しないで…」
「アロシュ伯爵令嬢。殿下に触れようとするなど不敬ですぞ」
「な…!ど、どうしてよ!殿下にお聞きしたい事があるの!そこをどいて!」
戸惑う声を出したドミニク様に側近が柔らかな声で諭しました。ドミニク様の立場も考慮し、また会場の雰囲気を壊さないためでしょう。でも、そんな気遣いも今はドミニク様に伝わらないようでした。不安的中、ドミニク様は本当に直談判に来たようです。
「ねぇ、エルネスト様!わ、私を側妃にして下さると、そう仰っていましたわよね?」
「…は?」
「な…!」
その声を聞き取った人々が、一斉に驚きの表情を浮かべました。それは結婚が内定している他国の王女への配慮もありますし、ドミニク様とエルネスト様とそのような関係だった事を誰も知らなかったのもあるでしょう。そして、エルネスト様が側妃を娶る可能性がないことも。実際、エルネスト様はアネット様との仲は有名でしたが、ドミニク様とは幼馴染程度の認識でしかありませんでした。そもそも婚約者候補に挙がった事もないのです。
「な、何を…」
「ねぇ、エルネスト様。お約束したではありませんか。私が大好きだと、側妃にして下さると」
「…は…?」
そう言われたエルネスト様が、ポカンとした表情を浮かべました。どうやら彼にはそのような覚えがないのでしょう。
(それって、もしかして…)
一つの可能性に思い至った私でしたが、それを言い出せる雰囲気ではありません。彼女を連れ出そうにも…この状態では逆上して暴れる可能性もありますわね。全く、彼女の事は想定外で、私はどうするべきかを直ぐに決めることが出来ませんでした。
今日はお兄様の事を中心に警戒していましたが、懸念はそれだけではありません。我が国も一枚岩とは言い難く、他国との関係が良好でも、それを崩そうとする輩も存在します。今日は舞踏会を無事に終わらせるのが最優先なのですが…
「エルネスト様っ!」
声が上がったのは、私達が移動し始めてすぐの事でした。そちらの方に視線を向けると人だかりが出来ています。ドミニク様はエルネスト様の事に心を奪われているようだったので、彼に近づく可能性が高いでしょう。彼を呼ぶ声がした方に向かうと…アドリエンヌ様をエスコートしたエルネスト様の前に、ドミニク様が立っているのが見えました。
(マズいですわ…まさか本当に直接尋ねに?)
聞けと言ったのは私ですが、この場でと言う意味ではありません。他国の王族もいる中で、自分を側妃に…などと言い出すなんてあり得ません。でも、今のドミニク様は普通じゃないように見えるので、何を言い出すのか想像もつかないのです。
「エルネスト様…」
エルネスト様に手を伸ばした彼女の前に、彼の側近の一人が入り込みました。このような場で王族に触れようとするのは厳禁です。しかも今は他国の王女をエスコートしているのですから。
「な、何…じゃ、邪魔しないで…」
「アロシュ伯爵令嬢。殿下に触れようとするなど不敬ですぞ」
「な…!ど、どうしてよ!殿下にお聞きしたい事があるの!そこをどいて!」
戸惑う声を出したドミニク様に側近が柔らかな声で諭しました。ドミニク様の立場も考慮し、また会場の雰囲気を壊さないためでしょう。でも、そんな気遣いも今はドミニク様に伝わらないようでした。不安的中、ドミニク様は本当に直談判に来たようです。
「ねぇ、エルネスト様!わ、私を側妃にして下さると、そう仰っていましたわよね?」
「…は?」
「な…!」
その声を聞き取った人々が、一斉に驚きの表情を浮かべました。それは結婚が内定している他国の王女への配慮もありますし、ドミニク様とエルネスト様とそのような関係だった事を誰も知らなかったのもあるでしょう。そして、エルネスト様が側妃を娶る可能性がないことも。実際、エルネスト様はアネット様との仲は有名でしたが、ドミニク様とは幼馴染程度の認識でしかありませんでした。そもそも婚約者候補に挙がった事もないのです。
「な、何を…」
「ねぇ、エルネスト様。お約束したではありませんか。私が大好きだと、側妃にして下さると」
「…は…?」
そう言われたエルネスト様が、ポカンとした表情を浮かべました。どうやら彼にはそのような覚えがないのでしょう。
(それって、もしかして…)
一つの可能性に思い至った私でしたが、それを言い出せる雰囲気ではありません。彼女を連れ出そうにも…この状態では逆上して暴れる可能性もありますわね。全く、彼女の事は想定外で、私はどうするべきかを直ぐに決めることが出来ませんでした。
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